セブンサーガ ~七つの大罪 赤き竜は憤怒に燃えて~ (電撃文庫)

【セブンサーガ ~七つの大罪 赤き竜は憤怒に燃えて~ 】 和泉弐式/まじろ 電撃文庫

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神が死んだ時代。愛する者を守るために悪魔と契約した男の波瀾万丈の冒険を描く。
「裏切りによる破滅」「子連れの賞金稼ぎ」「繰り返される復讐」「強大で愚昧な王」「果てしなき国家間戦争」「美しき聖騎士」「伝説のドラゴン」「七つの大罪の謎」
神が死に、絶望が世界を支配する時代。愛する者のため、悪魔と契約した男がいた。世界を旅し、地獄をくぐりぬけ、波瀾万丈の人生を経験する彼は、やがて世界を救うことになる――。これぞ王道! 胸高鳴る、壮大なる冒険ファンタジー!!
おお、ファンタジーじゃぁ。これぞファンタジーじゃぁ!
雰囲気出てるなあ。この重厚感ある歴史をなぞるかのように主人公たちが冒険を繰り広げていく様子は、古典的洋物ファンタジーの空気感たっぷりなんですよね。この手のビタータイプはやはり味わい深い。
作者は、戦隊物の悪の組織の戦闘員を主人公とした傑作【VS!!】で名を馳せた和泉弐式さん。二年ぶりの新作である。しかも、今回もダークヒーロー。鮮烈な悲劇を背景に、大切なものも夢も未来もすべて奪われ、ならず者として地の底を這いずってきたかつて騎士に憧れていた少年の成れの果て。
と、それだけだと心もネジ曲がってしまってそうなのですけれど、彼の場合は故郷が滅びたあの時に唯一助け守ることの出来た赤ん坊。七年経った今ではこまっしゃくれた幼女となったイブを守り育てる、という最後に残された光があるために、生きるためにあらゆる悪行に手を染めながらも、その心の中まで穢れきってはいないんですよね。そして、その心の中に残された騎士への愛憎も相俟って、なんとも妙味のあるダークヒーロー感が出ているわけですよ。
面白いのは、冒頭ですでに故郷を滅ぼすきっかけとなった裏切り者に対して、復讐を果たしてるところなんですね。実際は、それで決着がついていたわけではなかったものの、ラファエルの中ではどうしてもここで長年募らせ滾らせ続けた復讐心については、一区切りついてしまっているわけである。復讐に身を焦がし、そのためだけに生きてきた人生に、ぽっかりと穴があいてしまったような空虚感も得てしまってるわけで、そこで自分に残されたものがイブだけしかない、という実感も持っている。
もちろん、その後の激動の展開から彼の復讐はまだ終わっていなかったことが判明するのですけれど、一応復讐心を晴らすための戦いは済んじゃってるんですよね。裏切り者は倒さなければならないのは間違いないんですけれど、その倒すための目的は一度復讐を終わらせていることによって変わってきている。ラファエルを復讐者として走らせる物語ではないことを、最初の段階で示しているわけである。
それに、復讐に対しての心の区切りが終わっていなかったら、もう一人のヒロインであるセルシアとの関係も冷静では居られず最初から随分と変わってきてしまっていたでしょうし。

ただでさえ何もかも喪って泥をすすって生きてきたラファエルに訪れた転機は、かつて彼が抱いていた騎士である父への憧れ、騎士になるという夢に手を差し伸べてくれる仲間たちとの出会いであり……そして再び彼から何もかもを奪い去ろうとする残酷な運命。もう徹底的に、彼には何も与えない、絶望の淵に蹴って蹴って蹴り落とすという容赦のない落としっぷりである。一度、本当に騎士になるのかと思うような展開だったもんなあ。
一方で、これだけ心折れそうなことが続きながらもラファエルが諦めず抗い続けるのはイブの存在あってこそ。幼女つおい、幼女たいせつ。ぶっちゃけ、一時期孤児院に入っていたとはいえ、まだ幼い子供に過ぎなかったラファエルが、乳飲み子だったイブを一人で育て上げた、というのはそれだけで大したもんなんですよね。食うことも儘ならない身の上だったにも関わらず、である。どれだけ苦労し、形振り構わなかったのか想像もつかない。
セルシアは、相棒としても十分な清廉でカッコいい女性であり、またその背負う背景も重たいもので、ラファエルの旅のパートナーとして足りうる人物なんだけれど、それでもラファエルにとってのイブの存在感は人生の大半掛けているようなものなので、果たしてこの幼女に対抗できるんだろうか、とついついイラぬ心配をしてしまうほどでした。

ともあれ、激動に次ぐ激動の展開によって、ある程度物語は整理され、ラファエルたちの進む道は定まり、七つの大罪を開放していく旅がはじまったわけで、実に歯応えのあるビターテイストのファンタジーにわくわくが高まるばかりであります。

和泉弐式作品感想