皿の上の聖騎士〈パラディン〉1 ‐ A Tale of Armour ‐ (NOVEL0)

【皿の上の聖騎士〈パラディン〉 1.A Tale of Armour】 三浦勇雄/屡那 NOVEL0

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フィッシュバーン家には伝説がある。大平原“大陸の皿”を統べる大国レーヴァテインがまだ皿の中の小さな辺境国にすぎなかった頃、ご先祖様が大陸中の霊獣を訪ね歩いて防具を授かり、集まったそれらは一着の聖なる甲胄と成った。―それが全ての始まりだった。伝説の甲胄が纏われた瞬間、新たな神話が開闢る。
【上等シリーズ】【聖剣の刀鍛冶】の三浦勇雄さん、久々の新作。当然のように期待して読んだわけですけれど……ッ、もうむちゃくちゃ面白れえ!!
うはははは、すっごい面白いよどうしよう。
あらすじにある通り、ヒロインのアシュリーが甲冑をまとった瞬間から、大どんでん返しの怒涛の展開がはじまるわけですけれど……いやー、これはもう本当に度肝を抜かれた。文字通りの仰天の展開である。微塵も予想していなかった流れに、呆気にとられるばかり。ここまであっと言わせられると、もう痛快ですなあ。

幼いころから聖騎士になることを定められ、何をやらせても超一流の完璧超人として持て囃されてきたアシュリーを姉に持つ、不肖の弟アイザック。姉の方はアイザックのことを結構猫かわいがりしていて、あれブラコンだよね、と思う所多々ありなのですけれど、弟の方は何をやっても姉に敵わず(弟に限らず敵う人間国内に殆どいないのですけれど)、この姉嫌いだ、という劣等感を抱えながら生きてきたわけである。
複雑ですよなあ。男兄弟なら劣等感の持って行き方にもやりようというものがあるけれど、相手は姉である。しかも、自分をかわいがってくれている。自分では嫌ってると思ってるようだけれど、男心の複雑さなのである。
そんな、完璧すぎて自分では到底手の届かないところに居た姉に振りかかる災厄。隠された聖騎士伝説の真実と歴史の裏側に秘められていた霊獣たちと聖母の秘密。彼ら姉弟はその秘された歴史の当事者として、この世の表に吹き出ようとしている災厄を前に立ち回らなくてはならなくなる。
伝説、神話、歴史そのものに抗い、嫌いだったはずの姉を助ける為に何もかもをかなぐり捨てて旅立つ事を選んだアイザック……当人は否定したがるだろうけれど、シスコンだよ。それはシスコンを拗らせてるよ!!
お姉ちゃん、えらいことになりながらもわりとご満悦な感じなのは、異常な状態に置かれてもマイペースさを崩さない変人っぷりもそうなんだけれど、弟に助けられて構われて心配されて、とそういう立場に回ってしまったことがさり気なく嬉しいんでしょうなあ、ブラコンだよなあ。しかし、肝心な部分ではいつもキッチリ危ないところを回避せしめ、弟を助けているあたり、さすがはお姉ちゃんである。何も出来ず守られてばかりの殊勝な姉ではない、というかこの姉ちゃん、アシュリーさん、ほんとどえらい有様になってしまうのですけれど、結構すぐに適応してしまっているところなんぞ、完璧超人とかとは別の次元で大人物だよなあ。いや、実際は内面けっこうダメージ受けてるっぽいし、不安や恐怖、無理して繕っている部分もあるみたいなんだけれど、平気な顔しているのは性格的な変人な部分ゆえ、というのも大きいと思うんだよなあ。
弟に守られている、という安心感が一番大きいのかもしれないけれど。

というわけで、何気に珍しい姉弟が主人公とヒロインという組み合わせ。途中から仲間入りする娘も居るのだけれど、基本的にこの姉弟が物語の中心であり中枢であり芯であり核となっていくわけで……周りから地味に心配されてるみたいな、姉と弟の禁断の……という展開はありかなしかww
しかし、改めて振り返ってみても、アシュリーの置かれたこの状況の発想はすごいなあ、と唸らずには居られない。面白い。
皿の上、という表現も大陸の上の国土の形状を表すものだけではなくて、最後にちらっと書かれたそれを見ると、物語の在り方に沿ったタイトルなんですよねえ。なるほど、そういう意味だったのか、と。

相変わらず、登場人物の誰もが生き残るため、誰かを助けるため、ガンガン自分自身を削っていくのを躊躇わない、当たり前のようにボロボロになりながらも、前の進むのを止めずに目つきギラギラさせてなりふり構わず突き進んでいく血まみれの熱さは、もうこうなると三浦さんの持ち味ですねえ。熱いよ熱いよ。
そして、自由奔放な姉に振り回され続けた弟の、逆に無茶をやり倒して姉に悲鳴を挙げさせる逆襲っぷりがたまらない。

「弟よぉおおお!?」

このお姉ちゃんの絶叫に、何度笑ったか。アシュリー、わりとコメディ担当なのよねえ、完璧超人なのに。
久々の三浦作品は期待に違わぬ初っ端からの爆裂スタートで、これは楽しみなシリーズの開幕ですよっと。
イラストもこれまでのシリーズから引き続き、屡那さんなのか。やっぱり、三浦作品のイラストはこの人でないと。

三浦勇雄作品感想