ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 外伝〈4〉白銀の晶姫編〈上〉 (アルファライト文庫)

【ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 外伝4.白銀の晶姫編(上)】 柳内たくみ/黒獅子 アルファライト文庫

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オタク自衛官・伊丹耀司が特地産ガラスを発見したことにより、自衛隊アルヌス駐屯地ではついに『門』の再建計画が動き出した。その大工事を主導するのは美少女魔導師のレレイ。しかし『門』の復活、すなわち日本の影響力増大を快く思わない者達が、帝都や交易中継地イタリカなど各地で暗躍を始める。帝国の権力争いも絡み、『門』を巡る激しい謀略戦が始まった――!


ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 外伝〈4〉白銀の晶姫編〈下〉 (アルファライト文庫)

【ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 外伝4.白銀の晶姫編(下)】 柳内たくみ/黒獅子 アルファライト文庫

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イタリカ政変による『門』再建資材の欠乏を、伊丹の機転を用いて何とか克服した自衛隊と異世界の美少女達。しかし工事を妨害せんとする皇姪レディの策略は、次々とアルヌスに忍び寄っていた。限られた食糧や燃料、人質を取られ動けない工人達、そしてレレイを襲う逆境の数々……刻一刻と悪化する状況の中で、伊丹達は無事日本への道を開くことができるのか!?

こうしてみると、レディ程度ではあのテューレほどの謀略家としての格は見込めないかぁ。同じ「情念」を原動力とする策士としては、情熱的すぎた感がある。
狙いとしては、自衛隊の一番痛いところをチクチクと突き刺してくる実に嫌らしいものだったのに、我慢が足りないというか、じっとりと粘り強く続ける悪辣さが足りないというか。あくまで表に出ず、表に出さずにひっそりと事を進行し続けていたら、門の再建計画は果たしてどうなっていたか。
少なくとも、仕掛けられている事に気づくことが遅れれば遅れるほど、自衛隊としては身動きが取れなかったわけですしねえ。派手に動きすぎたし、使う駒が些かなりとも馬鹿者すぎたか。イタリカをちゃんと押さえられなかったのは致命的でしたし。
一方で、今回はレレイの掘り下げ回だったわけですけれど、この娘も何だかんだと闇の深い娘だったんだなあ。こうなってみると、あの鬱陶しいアルペジオ姉さんがどれだけ鬱陶しいながらも、あのやたらめったらなうるささと行動力がちゃんとレレイを救いになっていたのか理解できる。あの人、停滞してしまっている子を見ると我慢できないタチだったのか。ちょっと乱暴なくらいに急き立てて自分で歩けるようになるまで無理やり引っ張り回すくせに、それで自分で歩けるようになって自分より先に行っちゃうと、地団駄踏んで悔しがって鬱陶しいあたり困った人なんだけれど、それをうちに秘めて抉らせて歪ませる、みたなことはせずに、まっすぐに外に向かって発散して、陰湿にならないというのは大した人だよなあ、と思わないでもない。
何だかんだと、レレイといいミュイといい、本人たちにとってはどうしようもない壁に阻まれ人生そのものを硬直させてしまわせそうだった幼子二人を、壁蹴っ飛ばしてぶっ壊して閉塞から連れだして、その人生を救ったんだから、凄い人ではあるんですよねえ。賢者と名乗るに相応しい。嫁にもらってくれる人は居なさそうだけれど。
でも、そのアルペジオもレレイを預けられたカトー師も、レレイの人格に刻まれた歪みを矯正することは結局今まで叶わなかったのか。カトー師のあの滑稽なキャラクターって、ある程度は意図的であったのね。レレイの感情に働きかけるための。まったく、意味を成していなかった……とは思いたくはないなあ。
結局、門再建に対する数々の妨害工作のせいで、レレイの人格の歪みの部分が先鋭化して露呈していくのを、伊丹が最後まで傍で見守ることで一つの山を越えることが叶ったわけだけれど……。伊丹の側からすると、どうなんでしょうね。事例としては、先妻の梨沙が結婚して貰った時とあんまり変わってない気もするのである。レレイはかわいい、ちょっと内側から出てこれなくなった感情を表に出せるようになって、すごく可愛くなったけれど、伊丹からすると彼女の笑顔を「自分が」守ってやる、という欲がどこまであるものか。
そのへん、伊丹に変わる余地があるのか、まだわからんですけれど。

いずれにしても、特地に孤立した自衛隊の奮闘記たる外伝はこれにて何とか問題クリア。
ついに、再び門が通じて、地球と自由に交流できることに。短編集となる外伝はまた出てるけれど、新たに本編はじまることはあるんだろうか、これ。まだ伊丹と三人娘の物語、ちゃんと決着してませんしねえ。
それに、今回の本当の黒幕だった人物がこのまま大人しくしているとも思えませんしねえ。さすがに、レディ程度とは大物感が違いすぎた。

柳内たくみ作品感想