超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! 2 (GA文庫)

【超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! 2】 海空りく/さくらねこ GA文庫

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「では諸君。歴史を急き立てるとしよう」
地方領主をいともあっさりと打倒した超人高校生たちは、冬の終わりとともに始まるだろう帝国との全面対決に向けて、準備を開始する。そんな彼らが最初にとった方策は『宗教』!?
天才マジシャンのプリンス暁が現人神・ゴッド暁として奇跡の御業を示し、さらに桂音の医療技術や葵の武力など、それぞれが能力を生かして人々に実利を与えることで信仰を集め、超人高校生たちは急速に勢力を拡大していく!
帝国の理不尽な圧政に苦しめられてきた人々を、地球最高の叡智と技術で導く異世界革命物語第2弾!
宗教って劇薬に、敢えて手を出すあたりが超人的政治家、というべきか。中世レベルの文明からいきなり市民革命、と言ってもその基礎となる理念や教育が育ってないんですよね。被支配層である農民、市民に自ら責任を以って政治を担い、国を負うという意識も価値観も思想も根本的に存在しないし、それを植え付ける下地が備わっていない。だからこそ、乱暴ではあるけれど宗教という価値観を分かりやすく急速かつ強力に添付できるツールは、市民革命の芯となり得るのだ。もっとも、取り扱いが極めて難しく、実利が観念に取って代わられるのが早いうえに、新たな支配構造の枠組みとして市民の意識の自立の妨げになりかねないものだけに、やっぱり劇薬すぎるんだけれど。かなり穏当で融和的な教義と、組織として立ち上げないことで後々の禍根とならないように気を使っているのは見て取れるんだけれど、それでもやっぱり思い切ったなあと感心せざるを得ない。日本人は、宗教宗教したものには忌避感あるからねえ。それを、あくまでツールとして利用しようとする発想は、日本人離れしてるんじゃなかろうか。或いは、それだけ政界のおける妖怪的な存在に伍しているというべきか。
このような並外れた政治家には、それに相応しい無私と献身を期待してしまう、というかそうあるべきという観念を押し付けてしまうのだけれど、おかしいもので本当にプライベートもなく、自らの欲得を顧みない社会人民への奉仕者、という様相を見てしまうと逆に不安になってきてしまうのは、浅ましいだろうか。
指導者に神代の賢王と同等の徳を期待しながら、同時に自分たちと同列の人間味が感じられないと忌避感を感じてしまうのが、一般大衆というものである。果たして、司は現世地球ではその実力を誰しもが認めていたのは明らかだけれど、政治家としての人気はどうだったんだろう。支持率はもちろん、高かったんだろうけれど。
いずれにしても、この異世界でも司はひたすら無私を貫き、公共の益を優先し、個人的な感情を排して邁進し続ける。だが、決して個人的な感情がないわけではない。自分を押し殺すことに、傷つかないわけではない。その比類なき姿は、だが同時に痛ましさも感じてしまう。リリルは、そんな司のすべてを理解し、おそらく変われないだろう彼をそのまま受け止めることの出来る存在として寄り添えるパートナーとなってくれるんだろうけれど、こうやって全部許してくれる人って、場合によってはトドメにもなり得るんじゃないかと心配になってしまいます。

しかし、超人高校生たちが好き放題やらかしまくる、という枠組みの緩さとは裏腹に、この世界の支配体制というのは暗黒時代もいいところで、人権思想なんて萌芽すら感じられない凄まじい鬼畜っぷりが、もはや待った無しで世界を改革しないといけないという気にさせてくれる。急き立てられる、と言っていいかもしれない。それだけ、えげつない描写が多いんですよねえ。忍たちが遭遇した村の状況なんて、現世の地獄もいいところですし。
それを許容するには、この世界に舞い降りた彼ら超人高校生たちには力がありすぎた。

いやそれでも、あの超人剣豪の超人っぷりはもう人間辞めてるレベルんですけどね! ってか、剣豪とかいう段階じゃねえでしょ、それ! もう剣の腕がどうとかいう話じゃなく、身体機能が地上の生命としては間違ってるからそれ。
葵さん、それもうミサイルじゃなくても良かったんじゃないですかね? 犬の散歩じゃないんだから。もう、葵が爆弾持って吶喊した方が確実だったんじゃ、と思うくらいで。
ただ、相手も超人高校生たちに翻弄されるばかりじゃない、潔癖公のように別の意味でぶっ千切れたキャラが出てくると、カオスさも増していいんじゃないかなあ。

今回、微妙に人間関係に亀裂が生じかけてますけれど、あの語りだと深刻なことにはならない……か?

1巻感想