かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。】 友麻碧/ Laruha 富士見L文庫

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あやかしの棲まう“隠世”の老舗宿・天神屋の離れに、ついに食事処「夕がお」を開店させた葵。トラブルはあったものの、食事が縁で打ち解けたあやかしたちの力を借り、ようやくお店も軌道に乗り始めた。そんなある日、仕事で大旦那様不在の天神屋に“招かざる客”がやってきた!天神屋のライバル宿・折尾屋の番頭だという天狗の葉鳥は、なんと元は天神屋の番頭で、しかも暁の師匠にあたるそうで…。さらには、かつてその折尾屋に在籍していたという銀次の様子もおかしくなってしまい!?
葵に雑用頼まれてめっちゃ喜ぶ大旦那様が可愛すぎるんですけれどw
むしろ、何もしなくてもいいから大人しく待ってなさい、と言われるとしょんぼりしてしまう始末。ちょっと、大旦那さまってこんな愛くるしいキャラでしたっけ? 手乗り河童に負けないくらいあざとい、超あざとい!
餌付けも段々浸透し、前回の冷戦状態にあった料理長とのトラブルも丸く収めたことで天神屋の従業員たちからも好意的に見られるようになった葵。内側のいざこざが収められたら、外からトラブルが降ってくるのが順当というわけで、ライバル店にして因縁深い折尾屋の幹部たちが客として乗り込んでくる……って、あらすじ読んでると厄介事を持ち込んできたトラブルメーカー、みたいな扱いされてるけれど、実際はクレイマーとかそんなんじゃなく、普通にお客として来てるだけだったんですよね。しかも、元天神屋の従業員だったという視点から色々と助言くれたりして……いい人じゃん!!
もう一人の折尾屋の湯守の時彦さんも、天神屋の湯守の静奈さんの育ての親で師匠、ということで二人の関係はややこしい事になってるものの、基本的にいい人だったしなあ。
これ見てると、折尾屋とのトラブルって概ね折尾屋の旦那の乱丸の私怨なんじゃないか、と思えてくる。いや、それだけならもっと簡単な話だったんだろうけれど、まさか折尾屋と天神屋の関係が単なるライバル競合店じゃなく……という展開には唸らされた。うん、これは拗れるわ。ただ、だからこそお互いの店での人員の行き来も多かったんでしょうけれど。静奈ちゃんも元は折尾屋で働いていたみたいですし。

しかし、食事処「夕がお」ってお客さん相手のひっそりとした隠れ家みたいな売りとは別に、営業時間外は天神屋の従業員の憩いの場になってるんですねえ。みんな、仕事終わったあとにご飯食べに来て寛いでるしw
中には就業時間中にフラフラとつまみ食いしに来やる妖怪も居たりしますけど。客商売である以上、どうしたって気を張り詰めて緊張感を保ちながら働かなければいけないわけで、「夕がお」はそんな彼らの癒やしの場になって、葵の料理を食べてホッと強張っていた体や心がほどけて、息をつく様子を見ているのは、何ともほっこりしてしまう。
葵の料理も、単に美味しいんじゃなくて、すごく家庭的なあったかさがあるんですよねえ。食べる人のことを考えて作られてる。かと言って、家で出すような気を抜いたものではなく、すごく和風に凝ったアレンジがされていて、品が良くて同時に気安い。うーん、いやマジで美味そうなんだよなあ。これ一品一品に加えられたアレンジって生半可なものじゃなくて、本当に凝ってるんですよ。カレーにしても、かき氷にしても一手間も二手間も加えられていて、これがめちゃくちゃ美味そうなのだ。
飯テロである。
これ、現世の料理の知識が乏しいアヤカシたち、とか関係ないですよねえ。普通に、目の前に出されたらなんじゃこれ、美味しそう! ってなりますがな。
パン一つとっても、あんたパン屋さんか、と思うくらいにあれこれ仕込んでますし。
一方で、ついに葵がご相伴に預かることが叶った天神屋の目玉である料理長の懐石料理。これはこれで、素晴らしく美味しそうで美味しそうで。舌鼓を打って堪能しまくって悦に浸ってる葵の羨ましいこと羨ましいこと。
懐石って敷居も値段も高いんだけれど、こうしてみるとやっぱり美味しそうなんだよなあ。今まで食べたことのあるものも、何だかんだと美味しかったし。
でも、サンドイッチとか手軽に食べられる料理も美味しそうでねえ。豚の生姜焼きを挟んだBLTサンドとか! うう、美味しそう美味しそう。う、うどんナポリタンだと!? しかも、肉団子入り。色物にも思えるけれど、トマトから作った自作ケチャップを使ったそれは、やばい。すごくやばい。
この料理自体、こじれてしまっていた静奈と時彦の関係を繋ぎ直すために葵が下ごしらえしたオプションなんだけれど、それはそれとして美味しそうで美味しそうで。

お腹減った。

まあいい、大旦那さまを十分愛でられたので、大満足です。大旦那さまって、ちょっとだけ距離をあけたところから見守ってくれる存在みたいな感じが微妙にあったんですけれど、それはそれとしてあの構ってちゃんなところは可愛いなあ、と思うのですよ。
今のところ、男女の機微としては殆ど葵との間に生じてない気もするのですけれど。
むしろ、距離感としては若旦那である銀次との方がよっぽど近いなあ、と思っていたし、あの幼いころ葵を救ってくれたアヤカシの正体についても、それを匂わす伏線はどれも大旦那さまの影を感じないなあ、と勘ぐってはいたのですが……。
ラストの急展開を見ると、あれ? メインヒロインって銀次さんの方なの!?
今のところ、自分としてはどっちでもアリな感触なので、ここは流れに身を任せたい。場合によっては折尾屋と全面戦争になりかねない自体だけれど、今回の一件で折尾屋の中にも味方となってくれる人が出来たので、ある程度動きを取れる余地は作ってくれそうですから、あとは此処も葵の度胸次第になるのか。

シリーズ感想