創神と喪神のマギウス (ファンタジア文庫)

【創神と喪神のマギウス】 三田誠/曽我誠 富士見ファンタジア文庫

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創神。それは、自分だけの『神』を使役する新世代の魔術。“管理軍”が秘匿し、16歳を過ぎれば失われる限定の契約。彼らが引き起こした『戦争』から生還し、18歳を迎えた破城蒼士郎は念願の学生生活を始めるはずだった。初めての友人・朱桐ひいろともいい雰囲気で、希望に胸を躍らせて…だが、青年を迎えたのは、思いも寄らない教師という立場と、終結したはずの『戦争』だった。“管理軍”に襲われた少女・七星悠香を救うため、蒼士郎は喪われた神の名を呼ぶ!覚醒と加速の召喚魔術アクション、開幕!
ああ、これって「戦後」を語る物語だなあ。終わったはずの戦争が、個々人の中では様々なカタチで終わらずに続いている。
本来なら18歳までの子供たちなんていうのは、未来に向けて助走している段階のはずですよ。それが、思春期にくぐり抜けたあまりにも鮮烈で過酷な時間が、彼らに与えられるはずだった未来を生き残ってなお、予後のように感じさせている。それぞれに、確固たる志を以って戦っていたならばなおさらに。自分たちが戦うことで、叶えたい未来の姿が、世界のカタチがあったならばなおさらに。戦争が終わったあとに実際にカタチとなった戦後の世界に、不満や違和感、こんなはずじゃなかった、という思いがわだかまる事もあるのだろう。
自分が命を賭して戦ったのは、こんな世界を作り出すためじゃなかった。あれほどの犠牲を払ったのは、何のためだったのか。これだけ、おのが手を血に染めて、同年代の子供たちを殺して殺して殺しまくって、叶えた世界がこんなものだったのか。
破れ負けて、「戦後」の世界に追い落とされた者も然ることながら、勝った側とて勝った側だからこそこんなはずじゃなかった、と納得行かない気持ちが渦巻くものなんだろう。
まだ二十年も生きていない幼い子供たちが、あまりにも大きくて重い負債を負いすぎている。その後の長い長い人生にずっと引きずり続けなければならないとするには、あまりにも重いものを。
彼ら彼女らの中で、戦争はまだ終わっていないのだ。だからこそ、どんなカタチであれ総括は必要になる。形式的なものではなく、それぞれの中でしっかりと決着をつけるための戦いが、過去を過去へと押しやるための納得が。
それを、大人ではなく当事者であった破城蒼士郎にやらすあたり、また酷な話なんだろうけどね。それが当事者にしか共有できないモノであったとしても、だ。
そして、実際問題としてかつて戦ったモノたちを愚弄するかのように、あの戦争を終わったものではなく、もう一度再開しようとする輩も暗躍するわけで、誰も彼もが様々なカタチで終わらない戦争を戦後に引きずっている。もっと、報われるべき子供たちなのになあ。当人たちが、あまりそれを望んでいないというのも辛い話。一度学校に通いたい、なんて願いを懐き、それを強請った蒼士郎はむしろ健全で前向きですらあるんじゃないだろうか。彼自身、かつての戦争を否応なく引き釣り続けざるを得ない身の上であったとしても、だ。
そんな彼だからこそ、報われようともせず負わなくても良い責任を追い続けて、自身の戦争を終えることの出来ないひいろを導けるのかもしれないし、未だに戦争を続けようとする意思に立ち塞がることが出来る資格があるのだろう。
なかなか生臭いし悲惨なバックグラウンドがゴロゴロと横たわっている話ですけれど、それ以上に足掻きながら殴り飛ばすように、追いすがってくる過去と戦って未来を掴もうと藻搔く話は大好きなので、ここから盛り上がっていって欲しいなあ。

三田誠作品感想