不戦無敵の影殺師 6 (ガガガ文庫)

【不戦無敵の影殺師(ヴァージンナイフ) 6】 森田季節/にぃと ガガガ文庫

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『最強』を追う生き方の終わり――

「異能力制限法」により異能力者はすべて社会から管理され、戦う機会が奪われた現代。俺――冬川朱雀は相棒の小手毬を救うため、『天上』の一員になった。
「『天上』だろうが、悪魔だろうが、なってやるよ!」
それは俺の偽らざる気持ちだった。俺が『天上』になるという取引をしなければ、小手毬の命が保証されないからだ。小手毬を救えるのならなんでもよかった。けれど、癇癪を人にぶつけてしまった時の後味の悪さのようなものが残った。
『天上』になるというのは、つまり、どういうことなのだろうか?
何かを得るということと、何かを失うということは、いつの時代もほぼ同時にやってくる。『天上』のように浮き世離れした神のような存在たちの一員になるとしたら、よほど多くのものを失わないとイーブンにはならないだろう。
その予想は当たっていた。
俺は今までの生き方を変えなければいけなくなったんだ――。

誰もが幸せになれるなんて幻想だ!
新たな展開をみせる異能力リアルアクション第6弾!
これもなー、要約してしまうと世知辛い話ですぜ。
随分と慕ってくれていた後輩、自分も可愛がっていたんだけれど、結婚を約束した同棲相手が難病に罹ってしまったことで身辺がごたごたしてしまい心身ともに疲弊して他者に構う余裕もなくなり、何とか同棲相手が回復してくれたあとも病気治療の為に多額の負債を背負ってしまったことでこれまでと同じ仕事ができなくなって、自然と後輩との付き合いも疎遠になってしまった。ようやく、身の回りが落ち着いてきたのを機会に改めて知人たちと連絡を取るようになったのだが、自分がバタバタしている間に後輩はどうも良からぬ怪しげな輩と付き合うようになっていて……というような具合で。
天上とか大仰な構えで表現されていますけれど、ようは小手毬を助けるために手をつくしたが為に色々と負債を背負ってしまって、今までみたいな表舞台で脚光を浴びるような身の上では居られなくなった、という意味ではまあ莫大な借金背負った、しかも質の悪いところから借りてしまった。返済のために後ろ暗い仕事もしなくちゃいけなくなった。みたいなもんですもんねえ。
それでも、小手毬が助かったのだからそれに勝る喜びはないのですけれど、今までの生き甲斐であった仕事ができなくなったわけで、何かを得るために取り戻すためには、何かを喪わなければならなかった、という構図ではあるんですよねえ。
ただ、朱雀はあれですよねえ、わりとワーカーホリックなのか、この男。楽に生活が出来るならそれに甘んじればいいだろうに、他に趣味をみつけるとか。やりがいのない仕事ばかりやらされてノイローゼ気味になって、お金はイラないから仕事をやらせろ、とか言い出した日にはそれもう仕事じゃないですからw
一方で、小手毬さんの方は「子供が欲しいなあ」とわりと堅実な願望を漏らしてたり。朱雀さんよ、相方さんはもう現実の中で生きてますよ。ちゃんと、未来のカタチへの希望を思い描いてますよ。仕事に不満を漏らしている暇があったら、まずこう、小手毬との関係をちゃんとしないと。

とまあ、自分の一番近い距離の範囲で汲々とするばかりだった朱雀にとって、可愛がっていたとは言え他者であるみぞれに対して、色々と察しろとか様子の変化に気づけ、というのは無理だったんだろう。ただでさえ、一杯一杯だったわけですし。
それでも、みぞれが手を出してはいけないものに手を出してしまったのは、彼女の朱雀への憧れに端を発するものだったわけですから、まあ責任は感じてしまうわなあ。
男一人が手を差し伸べてあげられる範囲というのは本当に狭くて、それは舞花とのことで十分わかっていたことなんですけれど、更にみぞれからもそれを思い知らされるというのは辛いなあ。少なくとも、舞花については自分が決断を下し、自分の手で彼女を傷つけることが出来たけれど、みぞれについては全部彼女の責任と判断においてなされたことだけに、どうしようもなかったのがなお辛い。世知辛い。
間に合った、とは口が裂けても言えないけれど、手遅れだったかもしれないけれど、でもみぞれに選択できる余地を与えてあげられただけ、朱雀は頑張ったのかな。そう思いたい。

とりあえず、誰か舞花さんを幸せにしてあげてください、ほんとに。滝ヶ峰の一件には仰天しただけに、なおさらに舞花さんのことが……世知辛いのう。

シリーズ感想