神鎧猟機ブリガンド4 (ダッシュエックス文庫)

【神鎧猟機ブリガンド 4】 榊一郎/柴乃櫂人 ダッシュエックス文庫

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高校へ襲撃してきた“悪魔憑き”を狩ることには成功したが、事件を機に亜麻音たち“フォスファー”は連志郎たちの正体を掴んでいた。連志郎と大悟はそれぞれ“ブリガンド”と“ブレイバー”を駆り悪魔狩りを続けるが、ある日“ブレイバー”が奇襲を受け、大悟や優羽が重傷を負ってしまう。翌日、それを知った紫織が心配している矢先に、再び“悪魔憑き”が現れる。出撃する連志郎に、自分も一緒に行くと言い出す紫織。仕方なく“ブリガンド”に同乗させ戦うが、人質を取り、二体で連携する“悪魔憑き”に連志郎は苦戦する。そこへ怪我を押して“ブレイバー”を駆り大悟が出撃してくるが―。鋼鉄の巨人が導く、ダークヒーローアクション、クライマックス!
人としての真っ当な在り方を見失ってしまったところから、血の通った人間に戻っていき人を守るヒーローになる、という点においては作者の書いた作品の中では【ストレイト・ジャケット】を彷彿とさせるものがあったんだけれど、あちらの主人公がいい年をした大人の男性だったのに対して、此方の主人公がまだ未成熟の若き高校生という違いは何気に顕著に出ていたのかもしれないなあ。
あちらが絶望と諦観という停滞状態にあったのに対して、連志郎は復讐とヒーローという存在への反感という暗い情動ではあっても、動的な意思を備えていたからかもしれないが、ともあれまだ連志郎は若いが故に何者にも定まっておらず、故にこそ激しい衝撃に対してその心ばえの変化も大きかった。
それ以上に、取りこぼしてしまうものが多くあったのだけれど。
力及ばず、或いはまるで手の届かないところで喪われていく大切なもの、という衝撃。それは連志郎が見ないふりをして遠ざけようとしていたものを、無理矢理にでも直視させる力を持っていたのだけれど、容赦がないなあと胸をつまらせてしまう。彼らの犠牲がそのまま連志郎の復讐をさらに憎悪の輪の中に追い込まなかったのは、喪われた彼らが最期まで示した高潔な意思だったのでしょう。かつて、連志郎が憧れたヒーローの姿がそこにあった。その鮮烈な姿には、ヒーローの存在を否定する連志郎の心を否応なく揺さぶる強烈な力があった。でも、それだけでは彼の道は拓けなかったでしょう。
この物語には、受け継がれる意志。誰しもが、誰かを守れるヒーロになれる、という主題みたいなものがあったと思うんだけれど、やっぱりそれを独りでやってのけるのは、繊細な若者には厳しいモノがあるんですよね。
彼の弱い部分を全力で支え続けたのが、紫織だったわけだ。彼女の出しゃばらないくせに肝心なところでは譲らず、守ってくれる強さはまさに内助の功というべきで、ここぞという時にいつも彼女が完璧な方向修正を施してくれた上に、最後にはあれですよ、ただ連志郎が戦いに行く姿を見上げ、見送るだけではなく、戦場ですら彼を孤独にしない選択を掴んだわけだ。
叔父さん、という理解ある頼もしい大人の庇護があり続けた、というのも大きいんだけれど、やはりヒーローにはパートナーの存在は、それも人生まるごと共有できるパートナーは不可欠なんだなあ。
彼が本物のヒーローとして立つまでに必要だった贄は、あまりにも大きすぎるものでしたが、それでも希望を背に戦う孤独ではないヒーローの誕生は、彼と彼女が幸せになる未来の可能性を掴んだのも含めて、祝福されるべき結末だったのではないかと。
これが、ヒーローという偶像に対する、榊さんの一つの結論か。

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