ヒマワリ:unUtopial World (1) (角川スニーカー文庫)

【ヒマワリ:unUtopial World 1】 林トモアキ/マニャ子 角川スニーカー文庫

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Kindle B☆W
「私はこの世界は間違っていると思います」
四年前のある事件をきっかけに、やる気と前向きさを失ったヒマワリこと日向葵。学校に行かず罪悪感を覚えつつも最悪な日常を送るヒマワリだったが、高校の生徒会長・桐原士郎と“ジャッジ"を名乗るハイテンションな女性に巻き込まれ、無差別(なんでもあり)のバトルゲーム“ルール・オブ・ルーラー"に参加することになり!? この世界を統べる権利をかけて――咲き方のわからないヒマワリが勝負(バトル)に挑む!
これはまたぶっ壊れてしまってるなあ、ヒマワリちゃん。
前作【レイセン】から四年後の世界。あの凄惨極まるT-dayの惨劇はまさに世界の行く末におけるターニングポイントだったのか。シリーズそのものにつけられた消えない傷だったのか。あの事件によって人生に影を落とされた人間は枚挙にいとまがなく、この物語の主人公のヒマワリもまたその一人であった、と。
世界は、順調にジャックポット突入ルートへと進んでいるのか。徐々に、ディストピア的な雰囲気を帯びつつあるかのようじゃあないですか。そして、本来なら日の当たる世界に真っ直ぐと伸びて花を咲かせるはずだった向日葵が、狂って壊れて、今となっては日に背を向けて夜に馴染もうとしている、死に魅入られて破滅にこそ生の喜びを感じようとしている。
この壊れ具合、もしかしたら沙穂ちゃん並にイッちゃってるんじゃなかろうか。或いは、木島連隊……レイセン時では傭兵派遣会社「クールズ」の社長だった木島京司の狂気が、一番似通っているのだろうか。キョウジの場合は制御された凶暴性を好んで弄んでいる感じなので、引っ張られて引きずり込まれようとしているヒマワリちゃんと比べるのはおこがましいのだけれど、方向性としては似てる気がするんだよなあ。
少なくとも、ドリル改造をドクターの側からもういいです、と言わしめただけでドン引きレベルである。しかも、人工精霊なんてものが出まわって、魔法じみた力を平気で使ってくる危険なゲームで何の力も持たない彼女がどうやって戦うのかといえば……おい待てw
いやいやいや、これはやられる男どもの方があかんやろう、と思うところなんだけれど、ある意味陥穽を突いているのか。魔法なんて突飛な力を好き勝手振り回せるからこそ、脇が甘いというのか虚を突かれるのか。でも、それ以上にひまわりの躊躇のなさが尋常じゃないんですよね。暴力に対する忌避感が一切ない。この無造作さが、沙穂に似てると思った部分でもあるんですけどね。
それにしても、そう。ひまわりには何の力もないんですよね。前作のヒデオにだって、電子精霊や闇の精霊の庇護があったというのに、彼女には正真正銘なにもない。ナニモノでもない。
今の彼女は、億千万分の一の確率たるジャックポットに入ったこの世界に、何の影響も及ぼさないナニモノでもない独りに過ぎないはずなのに……勝ったものは世界を握れるというバトルゲーム“ルール・オブ・ルーラー"に理不尽な理由で参加し、そのままのめり込んでいくことで、ナニカへと変貌しはじめている。
アウターも精霊も教会も神殺しも関係なく、超能力も人工精霊の力も持たず、生きることに無気力だった少女が、この世界を否定しようと狂乱する。精霊サーガの完結編。狂い咲くヒマワリの、物語の始まりである。

しかし、今回登場したキャラの特に男共は、情けないというか品がないというか、敵にしても味方にしても邪魔にしかならなさそうな連中ばっかりだなあ。ジャッジのスズカも含めて、あの生徒会長もだけれど身勝手さには魔王拳かダンプカーをぶち込みたいほど嫌気を催しましたし。
そもそもヒマワリちゃん、一人で突っ走って併走する相手なんか頭にもなさそうだし、どうなるんだこれ、という感もあるんだけれど、さてさて。

林トモアキ作品感想