ナイツ&マジック6 (ヒーロー文庫)

【ナイツ&マジック 6】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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「お前たちは、この世に一匹たりとも生かしておかない! 」――不倶戴天の仇敵と巡り会ってしまったエル。新たな死闘が今、始まる。

西方諸国における戦いに勝利した銀鳳騎士団は、故郷へと凱旋を飾っていた。
勝利と共に彼らが持ち帰った最新の飛行機械・飛空船を前に、国民は大いに湧き立つ。
しかしそんな盛り上がりなど目もくれず、エルは独自に飛行型幻晶騎士の設計へと着手していた。
数多の苦労を突き抜けて、幻晶騎士を空に飛ばすことに成功する。
飛空船を手に入れ『飛翔騎士』が誕生したことにより、大空への道は開かれた。
やがて飛翔騎士のみで構成された騎士団、紫燕騎士団の設立と成功を契機として、王国の興味はある一点へと収束してゆくのだが―――。
飛んだーー!! 飛空船の登場からまだ間もないのに、瞬く間に空飛ぶ幻晶騎士を作り上げるエルが率いる銀鳳騎士団。いや、そっちの暴走っぷりが凄まじすぎて目立たないけれど、幾ら銀鳳騎士団が解析した資料が揃っているとはいえ、速攻で飛空船を実用化しある程度組織編成をやっちゃうフレメヴィーラ王国も相当だからね! さすがはエルくんを埋もれさせずに好き放題させた国というべきか、国としての機動力が尋常じゃないんだよなあ。そもそも、他所の国と争うよりも魔獣の侵食を防ぐ人類の壁として常に臨戦態勢であり続けたお国柄故の、縦割り構造じゃない風通しの良さが並じゃないんですよねえ、この国。いや、以前にエルくんが盛大に硬直化していた組織に風穴ぶちあけて、何より意識改革しちゃったのが大きな要因ではあるんだけれど、素養がなかったら無理だもんねえ。
ただ、エルくんの見境のない暴走グセが国ごと感染してしまったせいか、銀鳳騎士団みたいなデスパレード上等じゃないけれど、フレメヴィーラ王国にある種の落ち着きの無さというか狂騒が途絶えずずっとテンションあがったまんま、みたいな雰囲気が後半の慌ただしい遠征計画に繋がってしまったのを思うと、良し悪しもあるよなあ、と。国の成長期にはこのような狂騒こそが必要なので、遠征計画自体は無駄でもなかったし、拙速が悪かったとも思わないのだけれど。時として勢い任せは必要だもんねえ。
でも、それでその狂騒のメインエンジンを失ってしまっては元も子もないんですよねえ。少なくとも最悪の予想に対するリスクヘッジはもうちょっと考えておくべきだったのでしょう。なんだかんだと、エルくんにまるっきり頼り切りになっていた、と言われても仕方ない。
だからこそ、ラストの銀鳳騎士団の仲間たちが独自に動き出した展開には思わず拳を握りこんでしまうような意気を感じたのですけれど。エルくんの暴走に振り回され、必死に付き合い、いつしか一緒にはしゃぎ回る仲になっていた各中隊長達。もうみんな、一人ひとり一角の人物になってたんですよねえ。今回、銀鳳騎士団からの独立の話が持ち上がっていたけれど、ちょい特殊なヘルヴィーはともかくエドガーとディートリヒはどこいっても騎士団長やれるくらいの貫禄や威風は出来上がってましたもんねえ。ディートリヒさんは、始めの頃の線の細い印象はどこへやら、愚連隊のボス的なちょっと騎士団長って感じじゃなくなってますけれど、頼もしさではエドガーに負けず劣らずでしたし。
暴走する牽引役がいなくなってこそ真価が問われる暴走軍団・銀鳳騎士団。ちょいと今回は飛翔騎士の登場や異動話とかで真っ向の活躍がなかっただけに、次の魔獣領域へのカチコミは期待してますよー。

一方でエルくんはというと、人間相手には無双だった彼ですけれど、何気に今までで一番のピンチ、文字通りの絶体絶命だったのかー。そもそもフレメヴィーラ王国の国是が対魔獣戦にあったのを久々に思い出しました。ってか、もう普通に戦場の舞台が空になってて、戦闘機さながらの飛翔騎士に航空母艦……いや空中要塞かこれ、みたいな飛空船まで登場して、この世界観に率先して自分から喧嘩売っていくスタイルはまったく衰えませんなあ。
ラストえらいこっちゃ、なことになってもまったく変わらず楽しそうに暴走するエルに、何気に二人きりの状況にテンションあがりまくってるアディに、とこの二人、人類領域からかけ離れた魔境に取り残されてサバイバル、という悪夢のような状況をまるで一顧だにしてないなー。ほんとに楽しそうに生きてて何より!!

シリーズ感想