仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》2 (GA文庫)

【仮面魔女の解放戦記《レジスタンス》 2】 すえばしけん/マニャ子 GA文庫

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秋輔の元師匠が帝国の将に!?

俺たちには、できるだけ多くの味方が必要だ。協力者を集めよう」
エティル王族が率いる抵抗勢力の噂を聞いた秋輔とカティアは、真偽を確かめ、共闘するためにサナレ村を離れる。だがその時、解放軍殲滅のため帝国は大軍で再侵攻してくる。しかも敵将は秋輔の師、樹神亜梨朱だった。
「この状況なら秋輔と全力で殺し合うことができる。なんて素敵な再会」

秋輔は、抵抗勢力を巻き込んだ奇策をもって帝国軍に立ち向かう!!
「ここで私が負けると、師匠に失格の烙印が押されるのですね?」
そしてカティアは、己の誓約のため、秋輔と仲間を護るため、無謀にも亜梨朱との一騎撃ちに臨むが……。
弱小解放軍の進撃譚、第二弾!!
ああ、そうか。秋輔が特別にイカレているわけでもオカシイわけでもないのか。魔術師という存在そのものが、そもそもこういう異常な在り方をしてるモノなのか。
いや、魔術を使えるだけならそれは魔術師ではないんですね。常識や倫理や善悪などを一顧だにせず、どれだけ自分の誓約に殉じることが出来るか。そもそも、自分の誓約とそれ以外のものを比べてどちらを選ぶとか、そういう発想すら生まれないのか。優先順位とか比較対象とか同列じゃないんですよね、完全に断絶している。誓約こそが、存在理由と言ってすらいいのかもしれない。
これはぶっ飛んでるわ。常人には決して理解が及ばない領域だ。どれだけ邪悪でも、どれだけ俗物でも、どれだけの怪物でも、それは条理の中での立ち位置の問題であって、魔術師のそれはそれと完全に隔絶している。
だから、雪火にも魔物とも怪物とも言える人間からハズレた存在であるマリカですらも、それは踏み込むすべがない領域なのだ。雪火の魔術師への解釈はやや偏見に歪んでいたとはいえ、その異常性については彼女の言うとおりだったのだろう。
亜梨朱が言うところの、あちら側とこちら側という比べ方こそが一番ふさわしいのかもしれない。魔術師という側に来れてしまう人間は、本当の意味で壊れてしまっているのだ。頭が狂っているのだ。人間をやめているのだ。
そう、秋輔だけじゃないんですよね。それは、彼の師匠である亜梨朱もそうであるし……そう、秋輔の弟子となったカティアもまた、魔術師としての資質を持つ人間だったわけだ。
カティアが、カティアのまま、あの純粋でひたむきでやや内気で優しいあの少女のまま、何も変わらないまま……まさに魔術師としか言いようのない常軌を逸した価値観に基づく発言をしだした時のあの背筋がゾクゾクするような感覚。彼女本人は当たり前のことを言っているつもりなのに、マリカたちが唖然と絶句する他なかった、あの断絶。ああ、この娘、外れたんだと如実にわかるシーン。
そうなんだよなあ、魔術師って意図してなるわけじゃないんだ。マリカがあれだけ望んでそちら側になれなかったように。むしろ、その当人の中に誓約となる願いが、狂気が生じたからこそ魔術師になってしまった、というべきなのかもしれない。そう、なろうとして狂人になれるもんじゃあないんだ。
このゾワゾワっとなる感覚を味わえる作品って、滅多ないんですよねえ。
そして恐るべきは、この価値観の断絶が人間関係の断絶に何ら至らない、というところなのでしょうか。誓約にまつわる魔術師としての考え方以外は、基本的な価値観や喜怒哀楽の感情なんかは何も普通の人と変わらないんですよね。ただ、生き方の指針が根本的に違うだけで。だから、カティアとマリカたちの間に芽生えた友情は何も変わらず深まっているし、新たに登場したカティアの従姉妹にあたるエルシーリアとの王族としての義務にまつわるすれ違いと身内同士ゆえの親愛と信頼関係なんかも、極々まともに進行するんですよね。
亜梨朱と秋輔の姉と弟ともつかない師弟関係も、二人の間に起こった出来事が変にもつれた結果としてより面倒くさいカタチで亜梨朱が誓約の順守の仕方を拗らせている、という側面があって、原因なんか見ても基本的に当たり前の価値観に基づいているわけなのですが……、根本的なところで魔術師の狂気が作用していて、不気味で理解不能なベクトルに言動がズレたり、すっ飛んだりするんです。その正気と狂気の並存がまたゾクゾクさせる面白さに連結されてるんですよね。
エルシーリアの無力感に苛まれながらの苦悩や、マリカがもどかしさに歯噛みしながら、自身の内にある自分の本当の気持ちを手繰りよせていく葛藤など、いわゆるマトモな側のキャラクターたちの真っ当な内面の掘り下げも丁寧にやっているだけに、余計に魔術師たちの側のアレな部分が引き立つのかもしれない。
うん、面白かったー。

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