竜は神代の導標となるか (4) (電撃文庫)

【竜は神代の導標となるか 4】 エドワード・スミス/クレタ 

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東部の覇者はどちらか?ついに雌雄を決する時がきた。名将バネッサの陰に隠れがちだが、スコットは紛うことなき俊英である。この会戦を機にさらに才能を開花させた青年が、カイの前に立ち塞がる。これは東部戦線を占う戦いだけではない。勝者は英雄への道を突き進む。歴史に名を刻む存在になることを誰もが予感していた。最終決戦は知略をつくし、大軍を縦横に動かす総力戦となった。そして、伝説の一騎打ちが始まる。最新鋭の鉄騎竜メシエを駆るスコット。今や同盟の象徴となった騎士竜レイバーンを駆るカイ。勝者は果たして?
いいなあ。前回は親父さん世代のおっさんたちが花形として活躍したけれど、それに負けじと今回は敵味方問わずカイたち若い世代がその才覚を開花させていく。
若い世代と大人の世代がそれぞれに刺激しあって、相乗的にその意思と能力を充実させていっているのである。その象徴とも言うべきなのがマルデラ領の伊達男マシアス・ハロン。この兄ちゃん、カイと同世代で派手好きで目立ちたがり屋。まず見てくれから入るような格好だけの浮ついた青年と思われていて、伊達男なんてのも決して良い言われ方じゃなかったんですよね。それが、カイと出会い、また父と本来の領の後継者だった兄を失って領主の座についてから、まさに空の器に水が注がれていくかのようにして、その派手な言動はそのままにして忍耐と深い思慮を持つようになり、領主としても男としても目の覚めるような充実期に至るのである。マルデラ領は、それまで世代間の対立が激しく感情的なまでにぶつかり合っていたのが、マシアスを支えるカタチで異なる世代がそれぞれを認め合い、敬意を払い、互いを頼もしく感じながら手を携える関係へと著しい変化を迎えるんですね。マシアスに苦言を呈する役割に徹する腹心のゴードンから見たマシアスの成長と、領の雰囲気の変化が、彼の中の期待感と相俟ってなんとも眩しくてねえ。
そんなマシアスの同盟参戦は、アーロンたちがカイの兄貴分だとするとちょうど同年代の友人的な存在って居なかっただけに、その活躍と相俟ってテンションあがりました。目立ちたがり屋だけあって、イイトコロ持ってったしなあ、マッシー。あれ? このアッパーな性格ってけっこうカナと相性いいのか?
カイと同年代というと、ここで最大の壁となって立ちふさがったスコット・クロンダイトもまさに同年代。カイと同じく、その才能を垣間見せながらもまだ花開く前だった彼が、カイたちとの戦いを通じてクロンダイトの象徴だったバネッサをも乗り越えていくカタチで覚醒していく姿は、カイと切磋琢磨して成長していく好敵手・ライバルと書いてトモと呼ぶような関係へと発展していくのである。お互い、面識がない中でもその戦略をぶつけあい、騎竜での戦果を伝え聞く上で意識し合っていたのが、機会を得て一対一で話をしたことで通じ合うものが生じてたんですよね。あれは、敵同士の対話というよりも対抗心をむき出しにしながらどこか好意を抑えきれない、どこか子供っぽくて微笑ましいくらいの語り合いだったんですよね。
多分、こんな出会いじゃなかったら親友と言っていい関係になれたに違いないと思えるほどの。
それでも、二人にはお互い信念があり譲れないものがあり、守りたいものがあったのである。お互いを認め合い、好意を感じたからこそ憂いなく、全力で戦いあえる関係。その結末が、どちらかの死であったとしても、後悔なくそれを受け止められるくらいの。
ほんと、魅力的なキャラだったなあ。

一方、此方側でもアーロン兄さんが色んな意味で無双しまくり。穏やかな性格で仲裁役が似合うカナの兄ちゃん。登場当初はその優しい性格が逆に作用して優柔不断に苦悩を重ねていたどこか頼りなげな雰囲気だった頃からしたら、なんかもう別人ですよ。いや、穏やかでいつもにこにこ微笑んでいるような性格はなにも変わってないのだけれど、芯が通っただけでこれだけ変わるものか。軍師としては善人過ぎて性格の悪さが足りない、と言われる彼だけれど、その軍略の目は確かで今回の敵の予測の上をいき、さらにはカイのレイバーンという意外と使いドコロの難しい駒を縦横に使いきったその手腕は、今後の同盟の戦略がアーロンの主導で描かれていくことを証明する切れ味たっぷりのもので、頼もしいこと頼もしいこと。もう頼りないなんて言わせないよ。
って、軍略家としての腕前だけでも十分と言えたのに、さらに個人的にもそんな強かったの、アーロン兄ちゃん!? あれ? もしかして同盟の中で生身で一番強いのってアーロンなの!?
これには、メリダさんもドキドキですよ、ギャップ萌えですよ。

と、アーロンやカイがクロンダイトとの攻防で奮戦する間に、彼らの勝利を信じて未だ様子見に徹する陣営を切り崩していくエレナ。彼女の女王としての指針は文字通りの王道というもので、反乱軍ウェイン・グローザが掲げる「革新」が覇道そのものであるのを見るに、大局はまさに王道対覇道の様相になろうとしてるんですよね。
盛り上がる盛り上がる。

そう、舞台の上に駆け上がったエレナとカイの同盟と、ウェイン・グローザの本軍がついにぶつかるであろうこれからこそが本番……の、はずなのに次回以降が未定ですとーーー!?
馬鹿なあぁぁぁ!!!!!
一応、まだ続けられる可能性は残ってるみたいなのですけれど、いやそれにしてもこれで終わりというのはもったいなさすぎですよ。これだけ多様なキャラとストーリの魅力にあふれた戦記物はライトノベル全体見渡しても、五指に満たないでしょう。面白いのに、べらぼうに面白いのにっ!!
願わくば、なんとか続きを。読みたい! 請い願うばかりです。


シリーズ感想