漂流王国 (2) 国民的アイドルVS.勇者アイドル (角川スニーカー文庫)

【漂流王国 2.国民的アイドルVS.勇者アイドル】 玩具堂/U35 角川スニーカー文庫

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Kindle B☆W

初ライヴで見事(?)ゾンビ観客を昇天させた異世界アイドルのリーンたち。新しい仕事も増えるなか、今度は日本の人気アイドル“シューテム・ハーツ”と対決することに。でも顔合わせの場に現れた月野優姫は、なんと翌の元カノだった!?おまけに翌は他メンバーにもフラグを立ててしまい、妹の朝霞から白い目で見られ…。そんな時、ヴァンパイアが街に襲来。急遽、Wアイドルによるヴァンパイア撃退ミッションが展開されて!?
攻めあぐねたなあ。コンセプトに対して、どう掘り下げていくかを最後まで決めかねてしまった感がある。この二巻で打ち切りということで全体的なプランニングが崩れてしまったのかもしれないけれど、色んなテーマやキャラクター描写に関して、あれこれやらないとという焦りから手を出しながら、迷った末に中途半端なまま掘り下げられず、触りだけになってしまっているようなところが見受けられるんですよね。
表層だけ浚うのならともかく、玩具堂さんの書き方って独特で直接心情を描写するのではなく、外縁を丹念に描くことで描写しがたい機微まで浮き彫りにしていくスタイルなんで、方向性が定まってないとこんな風に片足だけずっぽりとハマってしまったような、何を言いたかったかわかりにくい話になってしまうんだなあ、と今になってうんうん唸ってしまっている次第。
特に、肝心のリーンに関して完全に攻めあぐねてしまっていて、作者さんもこれリーンの物語像をはっきりさせられなかったんじゃなかろうか。或いは、彼女のようなキャラこそ外側から丹念になぞっていくことでその内実を浮かび上がらせていくことによってようやくその物語の輪郭をはっきりさせていくことが出来たのかもしれないけれど、時間も余裕もなく叶わなかったって感じかなあ。
非常に難易度の高いキャラクターではあったんだけれど、それだけに描き甲斐、読み解き甲斐のあるキャラだったんだけれどなあ。
迷走といえば、リーンたちの勇者アイドル活動も迷走を極めていて、本来勇者として名望を集めないといけないながら、実際は前回のゾンビライブといい、今回の一件と言い、何故か人知れずに世を救う陰のヒーローをやってしまってるんですよね。いやいや、そこで戦果を公開せずに秘密裏に処理しちゃったら肝心の知名度もあがんないじゃないですかw
治安とか外交とか機密上そうそう宣伝出来ないのは仕方ないのですけれど、勇者として、ヒーローとしての在り方に徹すると、こうして影働きになってしまうというのは、勇者とアイドルって結局両立しがたいものなんじゃないかと思ってしまうじゃないですかw 
実際、アイドルという概念がメヘンと日本とでは異文化間の差異としてすり合わせが出来てなかったからこそ、なかなかアイドル活動が実らない部分があったとは言え、ねえ。
その概念や認識の差異を強引にでも埋める手腕が、所詮地方公務員と素人マネージャーのプロデュースでは全然足りてなかった、というのが今回、プロのアイドルたちがやってきて、みるみるうちに人気を得て席捲していったのを見るに、やっぱり本職は違うなあ、と。
翌の大胆かつ奇抜な発想は、これはこれで有用なんだけれどやっぱり本職のそれではないんですよねえ。あと、一番重要なのは、彼ってアイドルのプロデュースをしているというよりも、本当は勇者のプロデュースをしている、という観点が本職のそれと一番異なってる。だからこそにっちもさっちもいかない部分があるんだけれど、ここはひっくり返したらいけないところでもあるので、仕方ないといえば仕方ないのだけれど。
まあそうでなくても、わりと芸能界的アイドル活動に関してはバッサリな内容が散見されるわけでw

とりあえず、翌と朝霞が気持ち悪いレベルでシスコンとブラコンを抉らせてしまってる、というのはよくわかりました。これだけはよくわかりました。ベタベタしていない分、余計にマジなんだよなあ。そりゃ、元カノもドン引きますわ。よっぽどの覚悟がないと、そりゃこんな妹のいる相手と付き合うのは難しいよ。だって、やるとなったら戦争だぜ、間違いなく。戦争する気で男の子と付き合う覚悟って、まだろくに恋愛もしたことのない初々しい女子高生が挑むには高すぎるハードルだわ。この時期の恋愛ってのは、楽しくて甘酸っぱい心地を堪能するものであって、ガチ修羅場が待ってるとわかっているのに、それでも吶喊する気概を持て、というのはキツイですよ。まだ一時撤退で再戦する心づもりがあっただけ、月白ちゃんには真面目に恋に対して挑もうと言う本気があったとは思うんですけれど、タイミングが悪かったというか運がなかったというか。
ある意味この再会は、再戦どころかバッサリ引導を渡すような側面があったので、残酷だなあと同情してしまいます。いや、これは決着がつけられた、と良い方に考えるべきなのか。

ともあれ、この二巻で終わりなんですよねえ。仕方ないとはいえ、ちょいと敗色濃い作品だったかな。

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