灰と幻想のグリムガル level.8 そして僕らは明日を待つ (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.8 そして僕らは明日を待つ】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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幾多の危機を越えグリムガルへの帰還を果たしたハルヒロたち。
しかし、戻ってきたとはいえ、出口の先は人間族の勢力圏から遠く離れた土地だった。
偵察に出たハルヒロとユメは、幸運にもクラン「暁連隊(DAYBREAKERS)」に所属する瑜ι(タイフーン)瓮蹈奪スたちと出会う。
だが彼らはある目的のため、オークや不死族の集団と戦っており、ハルヒロたちも、更には残っていたランタとメリイ、クザクとシホルの4人も別々に行動し、戦闘に巻き込まれてしまう。
ようやく戻ってきた世界でも、待っていたのは仲間と更なる出会いと戦いだった。
灰が舞い、幻想を越えた先に何が待つのか、いまはまだ誰も知らない。
そうか、こういう展開になるのか。油断してたなあ、今更ランタと決定的な対立が発生すると思っていなかっただけに。前回、いざというときランタでも、自分よりも優先すると言ったハルヒロや、文句は相変わらずなものの指揮や方向性に関する決断に関して反対するということもなくなったランタ。仲間として、一定のラインを超えて成熟する段階に入っていたと思っていただけに、外部要素が絡んだとはいえこういう形で……。
いや、むしろ関係が成熟したからこそ、一度別けて離すことでお互いのこと、自分のこと、仲間との関係について深く考える機会だったのかもしれない。ある種の安定期を迎えていたからこそ、一度引っ掻き回し、それぞれを見つめなおして、深く掘り下げていく必要があったのかもしれない。
それにしても、決して小器用じゃないランタとハルが、小細工を弄するなんて端から無理な話なんだよなあ。熱くなっちゃって、若いなあ、若いのう。
どうしたって、本気にならざるを得ない、本気になってしまう、中途半端でいられないお互いの存在感。若いなあ。

とまあ、やっとも異世界からグリムガルまで戻ってきたにも関わらず、一休みする間もなくこのシッチャカメッチャカな状況になってしまうあたり、忙しないにも程がある。ゆっくりする時間が欠片もなかったじゃあないですか。
遭遇した瑜ι(タイフーン)瓮蹈奪スのメンバーは、そりゃもう当然のように奇人怪人のオンパレードなのですが、口走ってる言葉こそ物騒ですけれど、その行動……少なくとも、ハルヒロたちへの対応はわりと親切なんですよね。クロウは、突き放した物言いのわりに要所要所で毎回援護して助けに来てくれるし、モユギは物騒な物言いのわりに、ハルヒロが質問してきたら意外と親切丁寧にぜんぶ説明してくれたり、アドバイスくれたりしてるんですよね。勿論、ハルヒロが積極的に動いて役に立つという意思を見せたからでしょうけれど、道具としてではなく、ちゃんと後輩として面倒見てくれてる素振りがちゃんと見えるので、まあ自分勝手で大迷惑な連中ですけれど、悪い連中じゃないんだろうなあ、と。

でも、悪い連中じゃないというと、オーガ「ジャンボ」が率いる種族混成の集団フォルガンも、トップのジャンボからして人間すら魅了するようなオーガであり、種族を超えてジャンボに魅せられて集まった連中だけあって、おおらかというか、危ない面はあってもそれを上回る惹かれるものを感じさせるチームなんですよね。
正直、ランタがそのまま染まってしまっても不思議じゃないくらいに。
ぶっちゃけ、あのランタがここまで素直に自分の心情を打ち明けてるシーンって初めて見たんですよね。ひねくれものの彼が、思わずであってもあれだけ率直に自分の気持ちを口にできるような、そんな相手、そんな雰囲気を醸し出すジャンボ。
そうなんだよなあ、ただの方便でランタがフォルガンサイドに居るならともかく、なんかシンパシーが通じちゃったっぽいんだよなあ。
これは、本当に難しいことになりそう。
大体からして、フォルガンサイドとロックスサイドが激突した理由からして、えらい面倒くさいような当事者同士の問題に横から首突っ込んだが故に、解決が難しいこじれ方してるからなあ。
そこにハルヒロたちが絡んだのだって、恐ろしいほど成り行きですし。

今回は、チームがバラけたせいもあってか、ハルヒロ視点じゃないそれぞれのメンバー視点の話も多くて、その中でハルヒロがどう思われているか、という観点の話もたくさんあって非常に興味深かった。
ハルに対して、みんなが寄せている信頼感が絶大であるというのは以前からわかっていたことだけれど、みんなハルがリーダーという役割が合わないながらに頑張ってる、というのをちゃんとわかってくれてたんだなあ、というのが認められて、なんだかホッとした。ハル任せじゃなく、自分たちなりになんとか彼を助けられるようになろう、と思い悩んでいる部分も。
だからこそ、シホルのサブリーダー的な振る舞いには、意外ながらも感銘を受けたんですよねえ。あのシホルが、ですよ。このチームのサブリーダーってメリィかなあ、と思ってたんだけれど、そうか、シホルなのか。かなり腹黒になったし、内気で臆病という部分は変わらなくても、それを深慮と決断に転換してる面が段々と目立ちはじめてるんですよね。ハルと同様に自分の弱さというものに対して自覚を持ってるタイプなだけに、後衛というポジションも合わせて、全体を見る位置で考えるようになっていたのか。
いつの間にか、薔薇マリのマリアみたいな感じになってきてるのか、これ?
ともあれ、これだけシホルが頼もしくなるかぁ。ハルがあとを任せた、と預けられるほどに。なんか、嬉しくなりますねえ。
そしてメリィ。かなり追い詰められて精神的に締め付けられる彼女ですけれど、それだけにそうかー、仲間みんなのことを思い巡らしていくなかで、ハルのことを思ったシーンでのあれは、なかなか来るものがありました。そうかー、そうかー。
それだけに、ラストのハルとの再会シーンは彼女なりにけっこう来るものがあったんじゃないだろうか。ランタとのあれこれがあってそれどころじゃなくなってましたけれど。

さあ、これだけヒモを混んがらせてしまって、どう解きほぐしていくのか。話もガンガン行ってるなあ、乗ってるなあ。

シリーズ感想