ダメ魔騎士の英雄煌路(ヘルトシュトラッセ) (2) (MF文庫J)

【ダメ魔騎士の英雄煌路(ヘルトシュトラッセ)】 藤木わしろ/山本ケイジ MF文庫J

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混成国家ディアンタスとの『神闘』から一ヶ月。アルフとリーネは竜翔国家ドラクレアを訪れていた。名目上とはいえアルフとの新婚旅行。思いを馳せるリーネだったが「新婚旅行って……なんだったんでしょうね……」憧憬したイメージとかけ離れた小旅行に落胆しながら湯の中へと沈んでいく。到着したドラクレアでセンタリアの姫であるリーネは英雄アーロンの仲間・フィオナに『翔竜演武』への参加を要請される。両国友好のためリーネは竜を駆り大空を舞う『駆り手』の役目を承諾するが、リーネにはアルフに伝えていない秘密があり――!? ネクストヒーローファンタジー第二弾!
これ、冒頭はリーネがちょっと可哀想ですよー。せっかく建前だろうとなんだろうと仮にも新婚旅行だというのに、馬車の中でのアルフの態度と来たら甘酸っぱさの欠片もなくそっけないにも程がありすぎる始末。あれこれ話しかけてくる新妻に、まともに相手もしてくれずゴロゴロと本ばかり読んでる旦那。旅行でこんな態度取られたら、そりゃ拗ねるどころじゃないですよ。楽しい気分に水を差されて、泣きたくもなりますわー。ましてや新婚旅行。ガチで落ち込むリーネが可哀想で可哀想で。
まあアルフはアルフで、決してリーネをぞんざいに扱っているわけではなく、その時も色々とちゃんと仕事や仕込みを行っていた、というのはあとでわかるんですけれど、それでも女の子の扱いとしては酷いの一言である。
なってない、なってないよ。
もっとも、この朴念仁にとってリーネとは大切で特別な自分のすべてを賭けて費やしてもいいと思い定めている幼馴染であるんだけれど、それと恋愛とか異性に対する接し方、というのがスポーンと抜け落ちてるんですよね。そこがどうしてもリーネと感情面で食い違ってしまってる。その抜け落ちてるピース分、リーネがもどかしい想いをしてるんだよなあ。
アルフの場合、気づいてないとかじゃなくて、好きだとかドキドキするという類の恋愛感情や概念に対する理解がない感じなんだよなあ。あれだけリーネのことを特別に扱っていながら、肝心な部分に関して理解がないというのは何ともはや。これは、アルフの側に努力を要求するよりも、リーネが頑張る他ないんじゃないだろうか。ずっと自堕落に過ごしてきて、妹に介護されてきたこれまでの生活で、感性が歪んじゃってる部分が多いみたいだし。

物語の方は、これって自分の都合をこちらの意思を無視して押し付けてくる連中に対しての正しい反発、とでも言うべきなのかしら。
アルフもリーネも、今回のもう一人の主人公とも言えるヴェインも、大人たちの勝手な言い分に振り回される側なんですよね。彼らにとって、ぶっちゃけかつての戦乱で勇名をはせた親たちは関係ないんですよね。アルフたちは今の世界で今を見て生きているわけです。彼らはちゃんと借り物じゃない自分たちの言葉で語り、自分たちの力を示し、自分たちの望む世界を勝ち取ろうとしている。それに対して、今は亡きアルフの親父である勇者と一緒に戦った世代、仲間たち、親や大人たちはその過去の目線や観念で物事を語り、勝手にアルフたちもそれに当てはめて非難し、見下し、自分たちの都合ばかり言い募り、自分たちの枠組みの中に押し込めようとする。
戦乱が終わったあとの平和になったあとだからこそ、始まりつつある国家間の対立、という様相を呈しているように見えて、これって旧世代と新世代の対立なんですよね。いや、アルフがぶち破りリーネが支えてはじめたことが、過去に拘ったまま現在の形を変えようとする勢力同士の不毛な争いに一石を投じる形になりつつある、と言うべきなのか。
問題は、リーネの兄ちゃんのクラウド国王が、どっち側かなんだよなあ。昔の仲間にまで信頼されてないあたり、どうなんだと思う所なんだがあのゲスっぷりはむしろ信頼に値すると思うんだけれど。いや、他国の人間からすると無理だろうって話なのか。でも、それに対してのやり口は、決して相手を罵れるものじゃないんですよね。

今回も、アルフは事前にあれこれ仕込んで、敵が仕組んでいた謀を真っ向からひっくり返しに来て、そのずる賢さというか、心理面も読んだ弁論術も冴えて場を引っ掻き回しまくるのだけれど、何気にこの子はちゃんと最初から最後まで図面を描いて計画的に行動するタイプなんですよねえ。行き当たりばったりとは程遠く、その割に情と信頼を重視して前提にした作戦を立てるのが、なんとも擽ってくるわけだ。当人いわく、それを裏切られてもちゃんと対応策は練っている、とは言っているのだけれど。
前回は、無関係のいい人まで不意打ちの犠牲者にするなど、さすがに卑怯すぎるだろうと思う部分もあったのだけれど、今回に関しては相手の言い分から無茶苦茶だったんで、徹底的にやってしまえというシチュだったので、相手のルールに乗っかって逆にぶっ潰す展開はなかなか痛快でありました。
こういうひねりのある主人公、面白くてやっぱり好きですわー。あとはもう少しリーネに対してかまってあげ……いや、幼馴染対応ではあるものの、十分妹放ったらかしてかまってた気がするんで、やっぱりリーネ側がなんとかアルフの意識改革を図るべきか。

1巻感想