俺を好きなのはお前だけかよ (電撃文庫)

【俺を好きなのはお前だけかよ】 駱駝/ブリキ 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

ここで質問。もし、気になる子からデートに誘われたらどうする? しかもお相手は一人じゃない。クール系美人・コスモス先輩と可愛い系幼馴染み・ひまわりという二大美少女!! 意気揚々と待ち合わせ場所に向かうよね。そして告げられた『想い』とは! ……親友との『恋愛相談』かぁハハハ。
……やめだ! やめやめ! 『鈍感系無害キャラ』という偽りの姿から、つい本来の俺に戻ったね。でもここで俺は腐ったりなんかしない。なぜなら、恋愛相談に真摯に向き合い二人の信頼を勝ち取れば、俺のことを好きになってくれるかもしれないからな! ん? 誰が小物感ハンパないって?
そんな俺の哀しい孤軍奮闘っぷりを、傍で見つめる少女がいた。パンジーこと三色院菫子。三つ編みメガネな陰気なヤツ。まぁなんというか、俺はコイツが嫌いです。だって俺にだけ超毒舌で、いつも俺を困らせて楽しんでいるからね。だから、コイツとは関わりたくないってわけ。
なのに……俺を好きなのはお前だけかよ。
ジョーロくん、良い奴なのは痛いほどわかるんだけれど、人を見る目はないんだなあ。
地の文をどんどん回転させてテンション高く転がしていくタイプのラブコメだけれど、その分ジョーロは内心でかなりべらべらと本心を垂れ流してしまっている。おかげで、けっこう酷いことも考えてるんだけれど、彼が折々で受けてる仕打ちからすると、あれくらい愚痴っちゃうよなあ、とむしろ同情したくらい。
あの気になっていた娘、好きだった娘。長く付き合った幼なじみや生徒会活動を通じて親しくなった先輩に対する気持ちが、彼女たちの心ない行動によってどんどん冷めていく様子は辛かったけれど、この主人公の気持ちが冷めていく、という過程はなかなか見ないシチュエーションなので興味深いものではあったんですよね。
加えて、ジョーロくんの対応ってほぼ適切で下手は打ってないんですよね。仲を取り持とうとする主人公って、往々にして誤解を招く行動を取ったり、やらかした、としか言えない言動を取ってしまって状況を破壊してしまうのだけれど、ジョーロくんときたらヒマワリとコスモスに対して常にフラットで均等な距離を保ちつつ、彼女たちの思いが成就するように実に効果的なアドバイスをし、彼女たちがやらかす度に必死にフォローし、と……こう言っちゃなんだけれど、ひまわりとコスモスは相談相手として実に最適な人材を選択したんじゃなかろうか。
問題は、彼女たちはそれだけ貴重な相手に対して、リスペクトするどころか足蹴にして踏みにじってしまった事なのだろう。さすがに、彼女たちのあの態度には幻滅や失望を通り越して、軽蔑の念を抱いてしまった。
よく、あそこで我慢せずに爆発したよ、ジョーロは。
でもなあ……理由があったとはいえ、自分はこのあとのパンジーのやり方はあんまり好きじゃなんですよね。このあとジョーロくんが受けた仕打ちを考えると、ね。あとで逆転できる目があったとはいえ、彼がここまでひどい目にあう必要があったのか、と思ってしまう。ジョーロがどれだけつらい思いをしたか、それを思うとね。わざわざ彼が一番どん底に落ちるタイミングと方法を取ったようにしか見えないんだよなあ。あとで、自分が救い上げるために。一度貼られたレッテルは、そう簡単には剥がせないよ? 場合によっては、ジョーロくんは人生そのものを破綻させていたかもしれない。パンジーはジョーロくんの心根に寄りかかりすぎていて、自分が好きになった彼のあり方を信じすぎていて、彼を楽にさせてはくれなさそうなんですよね。甘やかしてくれはしなさそうなんですよね。
多分、しんどいよ、彼女の相手は。これほどの状況に追い込まれながら、ブレなかった強いジョーロには不要な心配かもしれないけれど。
個人的には、むしろ軽蔑に値するクズさを露呈してしまったひまわりとコスモスに期待したいところなんですよね。まだ謝りもしていない彼女たちには思う所あるのですけれど、あれだけはっきりと自分たちがやったことを指摘されて、自覚できないほど彼女たちが愚かとも思えない。正直、自覚してもジョーロくんに対して強烈な負い目を追ってしまった彼女たちが積極的にどうこう行動できるとは思えないのだけれど、一度徹底的に自分の醜さを認識してしまったキャラが、そこから這い上がって成長し魅力的になることをこそ期待したくなるんですよねえ、自分は。全部お見通し、のパンジーよりも、私は愚かで自分勝手でろくでもないひまわりとコスモスの方に、なんだか頑張って欲しい気分なのである。

……ただ、ジョーロとくっつくのはぶっちゃけ、サンちゃんでいいと思うよ。もういいから腐ってしまえ、という気分でもあるのですw