異世界迷宮の最深部を目指そう 5 (オーバーラップ文庫)

【異世界迷宮の最深部を目指そう 5】 割内タリサ/鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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「三十層の守護者を打ち破ったら、真実を教えてやる」
パリンクロンにそう告げられ、舞闘大会に出場することになったカナミ。その後、スノウの提案により竜退治に旅立ったカナミは、リーパーと話すうち、自身の置かれた状況に疑念を抱く。記憶喪失の元凶が腕輪だと考えたカナミはローウェンに腕輪の破壊を相談するが、なぜかその依頼を拒否されてしまい……。
方法を探すカナミに手を差し伸べたのは、かつての彼を知るラスティアラで――!?
因縁渦巻く舞闘大会が幕を開け、自身の誓いを違わなかったとき――少年は《全て》を思い出す。
おおう、面白かった、面白かったぞーー!!
頑張れば頑張るほど媚び媚びで気持ち悪くなっていくスノウが、これ思いっきり当人の望みとは逆効果で空回りだったんだよなあ。ここまでスノウがカナミをドン引きさせなかったら、カナミももうちょっと現状に甘じてしまったのかもしれない。スノウがあんまりにも、このままじゃ駄目だ早く何とかしないと、状態になってしまったからこそ、カナミもリーパーの言葉に含まれる「自分の意思」により真剣に意識を傾けた素振りもあるし。彼女が招いた虚飾こそが、彼に自分を取り巻く嘘を強く意識させてしまったわけですしねえ。やだもう逃げたい、とカナミに思わせてしまったスノウが全部悪いw
でも、この段階でカナミが腕輪を壊して記憶を取り戻す決意をするとは思わなかったなあ。もっと悪い意味で決断が出来ないのが、今のカナミだと考えていたから。それだけ、スノウやばかったのかー。スノウだけではなく、ローウェンも明らかにおかしくなってたし、カナミとしてもこのまま記憶を取り戻さないでいたほうが幸せだ、とはとても思えぬ状況でしたからねえ、そりゃある意味当然の選択か。
そして、この段階であっさりとラスティアラとディアにコンタクトが取れて、状況と選択を説明した上で協力を取り付けられたのも、意外といえば意外。いや、目的が一致している以上協力してくれるのは間違いなかっただけれど、まず余計な介入があって拗れるか、コンタクトが取れないところに追い込まれると思っていたからなあ。
それでも、腕輪の呪いが強力であったから、舞踏大会で真っ向から戦って腕輪を壊してもらうことになったけれど……非常にまっとうな展開であったのも確か。いや、大丈夫なのか、とまっとうすぎて不安に思ってしまったくらい。カナミの記憶を封じたパリンクロンが、こんな簡単にカナミの記憶が戻るのを、ひいてはカナミが今の環境から脱出することを許すのかなあ、と。
でも、そもそもからして、パリンクロンが本当な何を考えているのか、からまだ良くわからないから、カナミが記憶を取り戻すことまで織り込み済みなのかもしれないし、と構えているのですが。
ともあれ、やっぱり味方となるとラスティアラは頼もしい。むしろ、立場やら余計な思惑が介在していた以前よりも、純粋にカナミを取り戻すためという目的が定まっている今のほうが信頼感は高いとすら言える。
こうして振り返ると、ジーク出会った頃は他者に対して常に「不信」が介在していた分、仲間に対しても絶対的な信頼なんておけなくて、結構胃が痛くなる関係性だったんですよねえ。今のカナミはあらゆる意味で「甘ちゃん」であるのは避けて通れない事実なんですけれど、他者を信じられる、というのは悪く無い。元々、それはカナミの資質でもあったわけですし。ジークの頃は随分無理してたもんなあ。
でも慎重さや思慮深さ、必死さという点においてはジークであった頃の方が遥かに彼に高いサバイバリティがあったのを思うと、ジークフリートって相当にピーキーではあっても頼みにするに足る強さがあった。カナミの甘ちゃんさは、良いところもあれば悪い部分は本当にヌルくて雑で適当で、極限状況においてはやはり信頼に欠けるところがある。
カナミのヌルさには、随分やきもきさせられましたからね。一方でジークの尖り具合にも、いい加減もうちょっとなんとかならないか、と焦れるものがあった。
だからこそ、記憶を取り戻して、ジークとカナミの両方の性質を混合させた新しい「カナミ」には正直ビリビリくるものがあったんですよね。新しい彼には、甘さに甘んじずに貫ける強さがある。優しさを弱さと断ぜずに罷り通る覚悟がある。靭やかな強さ、とでも言うのか。いいね、これこそ主人公だ。ちょいとこれは、テンションあがりましたよ。盛り上がってきた。

あと、舞闘大会の司会さんは名前ないのにキャラ立ち過ぎだw 大好きだけれど。

シリーズ感想