異世界迷宮の最深部を目指そう 6 (オーバーラップ文庫)

【異世界迷宮の最深部を目指そう 6】 割内タリサ/鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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パリンクロンにつけられた腕輪を破壊し、記憶を取り戻したカナミ。全ての決着をつけるため、『ある人物』に狙いを悟られないよう、カナミはラスティアラたちと共に行動を開始する。スノウを説得し、マリアを虚偽の記憶から解放する―全ては孤独な親友であるローウェンを救うため。一方、未練を果たせると武闘大会に臨んでいたローウェンは、『最強』の『英雄』としての在り方に疑問を抱いていて…?「さあ―『第三十の試練』を始めよう」夢のような日々が結実した今ここに、一ノ月連合国総合騎士団種舞踏会は終幕する。

見ろ、この光景を。往く者と、受け取った者。一振りの剣を間に挟み、この表紙絵には物語が込められている。この6巻に語られたメッセージのすべてが描かれている。
時に、想いは表情以上に手に結実する。ローウェンの左手と、カナミの右手。背を向け合い視線が交わることのない二人の言葉は、その手にすべて込められている。語り終えた余韻が、残っている。

親友との約束を果たしに……。
そう、これは決着をつけるための戦いじゃあなかった。伝えるため、惑うローウェンを導くため、運よく先にたどり着いた答えを、一緒に受け取るための、会話でありコミュニケーション。いや、それ以上の……ローウェンとカナミという親友同士の関係の結実、その出会いの価値を満たすための結晶のような時間だったのだ。
貴方に出会えて良かった。貴方と友達になれて良かった。貴方と一緒の時間を過ごせて良かった。貴方とともに歩めて、良かった。
そんな幸福を、噛みしめる時間。実感する一時。確かめるための、大切な大切な積み重ね。
その貴重な宝石のような時間は、たとえもう二度と会えなくても、これが生涯の別れとなったとしても、その心はこれからも共に在るのだ、という事実を二人に与えてくれた。二人で、作ったのだ。それを、みんなが支えて助けてくれた。
その証が「剣」である。その剣こそが、ジークと名乗った冒険者と、カナミという虚像の英雄が交わった、相川渦波という少年の存在を、証明してくれる。ローウェンの親友として、彼のすべてである「剣」を継いだ者として、この世の証としてくれた。
ジークフリートでもカナミでもない、相川渦波の門出を祝ってくれるモノとして、これ以上のものはないだろう。これ以上に、結実したものはないだろう。
実に、カッコいい戦いだった。とてもとても爽やかで、全身全霊を尽くしきれた、何の邪魔も入らない、思う通り、願うとおりにやり切った戦いだった。
ずっと笑顔で、満ち足りた笑顔で戦えた、素敵な眩しい試合だった。
未練を残して死んだ、何を未練に思い、何を本当は望んでいたのかもわかっていなかった英雄の、最期の戦い。親友たちとの、心ゆくまでの語らい。それが叶ったローウェンに送るべき言葉は、きっとこういうものなんだろう。

おめでとう、良かったね。


誰も信じず、目的を果たすために手段を選ぶまいとしながら手の内に入った少女たちを突き放せずに迷い続けたジークフリート。
人を信じて助けることを厭わずに、しかし真実から逃げ続けて直視しないまま惑い続けたカナミ・アイカワ。
どちらも歪で、中途半端で、それゆえに守りたいと思ったものを取りこぼし、相手の想いを掬い取れず、ボロボロにしてしまう生き方だった。
間違い続けた選択肢。
でも、記憶を取り戻し、ジークに戻るのではなく、ジークと混ざり合ったカナミは、人を信じて人に請いて心の中を率直に語り、しかし冷静に図り、判断し、甘さを排して合理的に計算し、虚実を手玉に取ることを覚えた相川渦波は、ようやく此処に至り間違えずに進めたのだ。
何一つ間違えず、正解を選び続けることが出来た。最初から最後まで、スノウもマリアもリーパーすらもローウェンさえも、誰一人取りこぼさず、その願いを掬い上げて見せてくれた。これまで、本当に苦労して失敗してダメでダメで痛い想いを、辛い思いをし続けていただけに、それが運命の理不尽さ故だったり他者の悪意だったり、カナミ自身の不徳の致すところだったりと理由は様々だけれど、破綻させ取りこぼし、失って、踏みにじられた結末を経験してきただけに、それだけに万事が上手くいったこの結末には、万感の思いである。
よくやった、よくやったよ渦波。頑張った、苦しんで苦しんで、よくぞやり遂げた。それでこそ、それこそが主人公だ。

まさか、ラスティアラにセラにディアにスノウにマリアにリーパーまで加わった七人パーティーが結成されるとは、思わなかったですけどね! カナミの甲斐性がまさかそこまでパワーアップするとは思ってなかったから、まさか全員パーティー入りするとは想像もしてなかったからね!
ちょっと待ってください、このパーティーヤンデレ率が高すぎるんですけれどw ってか、全員多かれ少なかれ、油断すると脇腹をナイフでぐさッと刺してきてもおかしくないというか、何人かは既に前科と実績がありそうな感じのやばい人たちなんですけれど。一人でも命の危機なのに、セラはまあいいとして、それ以外の危険性が有頂天!?
いやうん、スノウが変な感じにヘタレ切ったというか、ゲージがダメな方向にいい具合に振り切って逆に安定したのでダメな感じに大丈夫そうだし、リーパーは実のところ今回がピークで今後は一番落ち着いてそうだし、ラスティアラは今のところ一番安定しているというか表面上は抑え役のパートナーなんで、彼女メインの事件のあかん事態にならなければ大丈夫……って全然大丈夫じゃない気もするけれど大丈夫大丈夫。
つまり、ディアとマリアの呉越同舟が一番弾薬庫の中でロケット花火の打ち合いっ子をしてるようなものなんですね。実質、終わってますね、ご愁傷様ですw
多かれ少なかれ、とりあえず今は火がついていないにしても全員導火線持ち、というのが今の正しく開花した渦波にとっても難易度高すぎるんじゃないでしょうか。ある意味、これからこそが選択肢を一つも間違えられないような……。ちょっと間違えると、ボン! ですね♪ ボン♪

いずれにしても、涙腺を刺激しまくってくれる、実に熱い戦いでした。これだよ、この熱量だよ。この熱こそが、面白いというモノの結実なのだ。

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