転生従者の悪政改革録 (3) (角川スニーカー文庫)

【転生従者の悪政改革録(ブラッククロニクル) 3】 語部マサユキ/遠坂あさぎ 角川スニーカー文庫

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愛しの七海先輩と共に異世界転生した勇利。水泳部仕込みのアスリートスキルによって、魔法頼みの異世界を変えつつあった二人だが、獣が無差別に人を襲う“ビースト・ウェイブ”が突如発生し、国中が大混乱に!七海と共に獣を迎え撃とうとする勇利だが、何故か彼女に避けられてしまい!?王国崩壊&最強コンビ解消の危機!鍵を握る魔力至上主義の頂点・「冷酷」王女マーブルに、勇利の神魔眼(※ただの観察眼)が冴え渡る!
これは酷い。“ビースト・ウェイブ”って自然現象にしては変な災害だなあ、と違和感みたいなものはありましたけれど、人の手が加わっているにしても古代文明の遺産とか事故的なものによる現象かと思ってたら、ろくでもないにも程があるじゃないですか。建国の成り立ちからこんな有様だとしたら、むしろよくここまで国の形を作れたなあ、とすら思うところで、むしろ昨今の国の崩壊の様相は順当といえるものだったのかもしれない。国家を成立させるための基盤からして、こんなしっちゃかめっちゃかだったんだから。
むしろ、これでなんで優秀な人材が王族や大貴族にそろっていたのかが不思議に思えてくる。いやだって、勇利たちの活躍によって若い世代が「目覚めた」にしても、国の形としてその変化を馴染ませるには下地が必要なんですよね。それを、現国王や王族、大公爵といった要ドコロの人たちがちゃんと下地を整えてくれてたから保ったわけで。むしろ褒めるべきは、本格的に魔法至上主義が蔓延っていた先代国王の世代から現実主義路線に舵を切った現国王の世代だよなあ。一つの価値観が真理として罷り通り、現実にも力を持ち、それ以外が顧みられない状況で本当に何もないところに楔を打ち込んだのですから。
現在のように、実態を直視すると国の崩壊が明らかになっていたわけでもないでしょうに。
まあ、勇利や七海たちのおかげで国の価値観がひっくり返ったのは、大人の世代が下地を整えてくれていたのと、あとはそれだけ国が若かったからなんでしょうね。成り立ちが虚飾で出来上がっていても、年月が積み重なればそれが伝統となり、揺るがぬ歴史となっていく。そうなれば、容易にひっくり返せはしなかったでしょうし。まあ、それ以前に歴史になる前に国が持たずに潰れてしまいそうな流れでもあったのですが。

と、ビーストウェイブ発生という国家の大事とはまた別に、勇利と七海の関係の方にも楔が打たれる展開に。ってか、ようやくか、というくらいイマサラナガラ、七海が勇利の気持ちと彼に対する自分の気持ちに気がついて平静で居られなくなる、といういやもう本当に今さらながらの遅まきながらの、周りからするとはいはいごちそうさま、なお話に。しかも、気がつくにしてもバカップル魔法が発動してしまっていた、という揺るがぬ証拠が目の前に突きつけられてようやくですからねえ。バカップルでないと発動しない魔法が、自分と勇利との間でポンポン発動してしまってたら、そりゃあ認めざるをえないわけですけれど、気がついた途端恥ずかしくって逃げまわるこの女ww
無邪気と無自覚でさんざん無防備にスキンシップしまくって男心を弄んだ挙句に、自分が気づいたらこれである。徹底的に面倒見ないとドツボにはまっていくタイプなんだなあ、と呆れ半分苦笑半分。
これで現代地球の方の状況を見ると、ユリウスとナーミィが勇利と七海の姿でイチャコラしているのを見る周りの反応がねえ……もう家族公認というか、もっと早くくっつけよ、遅いんだよ、という半ギレ混じりですらあるのが笑えてくる。というか、両方の家族とも既にほぼ嫁扱いなのよねえ。知らぬは本人たちばかりなり。ってか、家族の前でもそんなにイチャコラしてたのか、この二人。
お互いの正体を知らないままとはいえ、わりと実直に普通の恋人っぽくお付き合いしているユリウスとナーミィ
に拍手を送りたいくらいである。
結局、最後にユリウスたちもお互いの中身が入れ替わっている、ということに気づいたんだけれど……あれ? 二組にカップルが結ばれたら、それで元の世界に帰る、という展開じゃないんだ。
国の問題もカップルの話も一応の決着がついたんだけれど、なんか消化不良というか盛り上がりに掛けたまま鎮火してしまった風情で、ちょっと拍子抜けでありました。これで終わりなんだろうか、うむむ。

シリーズ感想