アルティメット・アンチヒーロー4 究極の個 (講談社ラノベ文庫)

【アルティメット・アンチヒーロー 4.究極の個】 海空りく/Nardack 講談社ラノベ文庫

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東京生存圏を飲み込んだ漆黒の霧。ミカエルに敗れた焔が最期の力を振り絞って行った魔術により、人類はその霧の迷宮最深部に転移していた。だが、天使たちの行軍は止まらない。その数実に十四万の軍勢は、着々と人類のもとに足を進める。“邪神使い”神代焔という最高戦力無しに、いかにして天使の軍勢と相対するのか―絶望に沈みかける人類。だがそれでも、純華は守るべき人々のために立ち上がる。そして、妖精族たちの協力も受け、人類は再び戦うことを決意した。生きるために。守るために。最期まで絶望に立ち向かい、未来を手に入れるために―。いずれ救世主と全ての人間に讃えられる少年が紡ぐ常勝無敵ファンタジー、最終決戦の第四弾!

焔、実は生きてましたパターンかと思ったらガチで死んでたんか!!
圧倒的な力を持った神代焔の存在は、どれほど制約に縛られていようと最終的には全部やっつけて助けてくれる、という安心感。悪く言えば緩みや甘えがあったわけだけれど、その彼が消え、残されたのは僅かな戦力。そして、相手は強大な力を持った天使の軍団14万。
人類滅亡待ったなし、の状況下でそれでも挫けず絶望せず、最期の最期まで抗ってやる、という不屈の闘志を純華たち僅かな戦士たちだけではなく、一人ひとりの兵士までが滾らせて戦いぬく展開にはやはり燃えるものがある。結局焔が助けてくれるんだろう? という読んでるこっちの姿勢を裏切るように、魔王に匹敵する上位階梯の存在である大天使たちを次々と劣る戦力、低い存在階梯、僅かな力を束ねて撃破していく、この弱き者たちが死に物狂いで強大な敵を打ち破っていくジャイアント・キリングは、この作品の魅力であった圧倒的な力で敵を蹂躙していく、というそれを見事にひっくり返して突き破ってみせたのだから、面白いなあ。
だいたい、クトゥルー神話の邪神たちを主人公サイドが使役する、というのはまあ珍しくはないんだけれど、あくまで道具として使役するとか、わりと人類に好意的な良い邪神さんたちと協力して、という流れであって、東京の市民全員を邪神の信者に見立てて、何万人もの信者で行った儀式で大召喚、邪神降臨! ってそれ、どう見ても敵の邪悪な組織がクライマックスにやらかす惨劇ラストバトルのはじまり、みたいなノリだから! 間違っても、味方がやるもんじゃないから!
うんまあ、東京が邪教の巣窟で人類の敵と言われても、これは反論しづらいぞ(笑

主である神代焔を失って戦いから背を向けた法の書(リベル・レギス)を、純華が新たな主として認めさせる展開といい、妖精女王と人類の共同戦線を橋渡しし、絶望して一度は膝を折った仲間たちを奮い立たせ、諦めた大人たちの心に火をともし、と振り返ってみると星河純華の今回の活躍たるは八面六臂の大活躍で、焔不在のなか完全に主人公を担ったんですよね。
だからこそここまで盛り上げておいて、最後にやっぱり神代焔が……となると、結局彼頼みか、となるところを、焔が本当に死んでいた、という事実を交えてこの設定に持ってきたのは、なかなかに上手い使い方だったんじゃないだろうか。
あまりにもスケールが大きすぎる一方で、神代焔があまりにも強すぎるために制約もまた強すぎて、なかなかフットワークが軽く、と行かず痛快さにもどかしさがつきまとうシリーズでしたけれど、純華が頑張ったんでそこは目一杯ほめてあげたい。

シリーズ感想