ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.10 (電撃文庫)

【ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.10】 聴猫芝居/ Hisasi 電撃文庫

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新学年に無事レベルアップできたと思った?
――残念!! 新学年はいきなり廃部危機でした!?

ついに新学年にレベルアップ! みえないちからに導かれてクラス替えを乗り越え、さあネトゲを……というところで、重大事実が発覚!
新入部員を獲得しないと、廃部だよ……えっ。
お前たちは安泰だと約束したな、あれは嘘だ――とばかり、いきなり(アカン)な状況に叩きこまれた残念美少女・アコたちネトゲ部員は、それぞれ自分の理想の部員を探すことに。
「玉置、先輩…… !? もう一回! もう一回先輩って言ってください! 」
先輩という甘美な響きの奴隷状態なアコをはじめ、連れてこられた入部希望者は来る人来る人クセモノばかり。ほっとくと私が入部しちゃうよ! という秋山さんのリアル生活を守るためにも、まともな部員を探さねば……そんな苦労の一方、ネトゲ内ではアレイキャッツの新規ギルメンが増え続けてえらいことに――!?
学年が変わってもアニメが放送しても通常営業な残念で楽しい日常≒ネトゲライフ、ついに大台突破、出会いの季節の第10弾!
セッテの時もそうだったけれど、あからさまにババーンと新キャラ加入というゴリ押しをせずに、いつの間にかさり気なく空気の中に混ざってる、というキャラの加え方が本当に上手いなあ、と感心させられる。特にこの作品の子らは仲間内の居心地の良さに浸りきっていて、外から新たな風を吹き込ませることに消極的も良いところだから、新しいキャラを馴染ませるのってよっぽど難しいはずなんですよね。
ってかさ、もう巻数二桁になるにも関わらず、ネトゲ嫁って新キャラどころか新ヒロインも増やさずにほぼ初期メンバーだけでやってんだから凄いですよね。セッテこと秋山さんも何だかんだと最初から登場はしてましたし。
敢えて言うなら、英騎の妹の瑞姫くらいでその彼女も準レギュラーくらいの大人しい出番なのを鑑みると、これだけ初期メンバーだけで長期シリーズやってる作品というのも極めて珍しいんじゃなかろうか。
同じメンバーで特に大事件があるわけでもない日常のドタバタ劇をこれだけ長期に渡って続けてるって……どんだけの安定感なんだ。これで文句無しに面白いんだから、たまらんよなあ。
ともあれ、それでも一年が過ぎて新学期ともなればある種の変化も要求されるわけで、敢えて新学期に入って新入生を一人でも入部させなくては廃部、というルールを持ち出すことでほっといたら永遠に動きそうもないネトゲ部の面々の尻を無理矢理にでも叩いて動かしたわけだけれど、みんなが急にやる気になったのには驚いた……って、これには仕掛け人もいたわけだけれど、思わず積極的に新メンバーを探そうと言う意欲を持つに至るあれこれは、みんな持ってたってことなんですよね。
それが、みんながこの部活に抱いているささやかな不満が、無意識にそれぞれがどんな新入部員を探すのかの根拠になっていたのは、面白い着眼点だった。不満を埋め合わせるために、それを満たしてくれる要素を持った新入部員を、おのおのが勧誘してきてたのね。
まあこれ、新入部員を出汁にして、お互いが自分たち自身も気づいていなかった、もしくは言い出せなかったというよりも言い出す程でもなかったささやかな不服を洗い出して、腹を割って話すことで元々仲良いのにも関わらず、さらに仲良くなってしまったぜ、という身も蓋もないお話だったのですが、新キャラ加えるどころかさらに友好度あげあげにしてどうするんだ、とw
ただ、裏で動いていた秋山さんの気持ちもよくわかるんですよね。どれだけ仲良くっても、ふとしたことで疎遠になってしまうことは珍しいことではなくて、だからこそちょっとやそっとでは離れない根拠となる確かな繋がりがほしい、というのはうなずける理屈なんだなあ。
別に、仲の良さやキズナの深さを信じていないわけじゃないんだけれど、どうしようもないことってあるものね。
でも、そんな風に思い悩んでリア充スキルを駆使して暗躍していた、というあたりに、秋山さんがこのネトゲ部の子らとの付き合いを本当に大事にしていて、みんなと遊ぶの本気で好きなんだなあ、というのが伝わってきてしまって、ちょいと感動ですよ。一歩距離を開けるような適切な距離感で、秋山さんはこのコアなメンバーとかなり上手いこと付き合ってきたわけですけれど、その適切な距離感じゃ我慢出来なくなったんかー。
まあこの件に関してはむしろセッテさんよりも、リア充に拒絶感露わにしていたアコがすっげーデレたのがもうニマニマしっぱなしでしたけれどね。アコのセッテに対しての態度は最初期はともかくとして、最近のはそういう芸風とかネタフリだとは思ってたんだけれど、まさかセッテのほうが冷たい態度取られたほうが喜ぶから敢えてやってた、という発言にはひっくり返ったさ。そうかー、そうだったかーー(笑
そういうコミュニケーションの機微とか理解した上でこうして本音を伝え合ってしまうと、もうアコとセッテどれだけ仲良しなんだ、というデレっぷりになってしまって、参った参った。
最近だと身内以外でも、なんとかかんとかクラスメイトとも交流出来るようになってきて、人として完全にもうあかんレベルだった最初期と比べたら見違えたよなあ、と感慨深くなる。クラスの馴染み方に関しては秋山さんが全部やってくれましたレベルなんですけど。色んな意味で頼もしすぎるよ。

肝心の廃部の危機に関しては、まさかそれでええんかい、というちゃぶ台返しで、これ完全にルールの穴をつくズルいやり口だよなあ、とは思うものの、その点においてはリアル先生の猫姫様が味方なのが大きいんですよね。もっとも、こういう猫姫先生頼りのやり方をするのは本当に珍しくて、会長も無茶苦茶するわりに先生に迷惑をかけるような、負担を強いるような真似はまずやろうとしなかったのを思うと、猫姫さんとしても先生として頼ってくれる、ワガママを言って甘えてくれる、というのは思いの外嬉しかったのかも。
いやもう、新キャラ加入か、という話だったはずなのに、蓋を開けてみると既存のメンバーが今までよりもっと親密で打ち解け合って仲良くなりました、という話になったのには思わず微苦笑してしまうのでした。

と、話がまとまった素振りをしておいてからに、さらっと新入部員候補をこの親密すぎる空気の中に滑りこませて、なじませ始めているあたりソツがないというか上手いというか、冒頭の話しに戻りますがキャラの配置と動かし方が絶妙この上ないんだよなあ、感嘆させられたのでした。
ってか、みかんちゃんレギュラー入りですよね、勿論!?

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