創神と喪神のマギウス (2) (ファンタジア文庫)

【創神と喪神のマギウス 2】 三田誠/曽我誠 富士見ファンタジア文庫

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創神。それは神を顕現し、人の限界を超える新世代の魔術。万能の力を得るが、16歳を過ぎれば失われる限定の契約。ある日、斑鳩学園の生徒・初瀬恭真から、創神使いとしての訓練を依頼された破城蒼士郎。恭真には創神の力で成し遂げたい想い、ひとりぼっちの少女・阿頼耶を助けたいという想いがあった。一方、蒼士郎は創神使いの才能の片鱗を見せる恭真に、才気あふれたかつての教え子・鷹羽蛟を重ね合わせる。だが、蒼士郎の日常を『戦争』の因縁が蝕もうとしていた。「俺がこの街に来た目的、それは“黒絶公”だ」蒼士郎は自らの因縁を断ち切るために戦場へと赴く―
これ、元々2巻完結構成で作ってたのかー。世知辛い世の中だなあ、と言いたい所なのだけれど、どうも続きも出せるっぽいので是非是非シリーズ化して欲しい。
ただ、長期シリーズは難しい設定なのかなあ。なにしろ、主人公がロートルである。本来なら失われているはずの力を17歳を越えても維持しているものの、能力自体は全盛期には程遠く、ポンコツもいいところ。ヒロインのひいろは言わば絶頂期だけれど、そろそろリミットも近づいているわけで。
いや、そういう個々人の能力的なものではなく、気構えというか蒼士郎にしてもひいろにしても、過去の戦争とは決別して新しい人生を歩んでるんですよね。最前線でガチガチ武器を振るう話ではなく、これってすでに終わった話のまだ燻っている残滓にロートルが後始末を、ケリをつける話なのである。終わった話をちゃんと終わらせて、新しく始めようとしている次の世代に引き継ぐお話なのである。
面白いのは、その古い世代のロートルである主人公がまだ十代ってところか。この創神使いとしては終わった老人でありながら、人間としてはまだ大人になりきっていない若造、という乖離が蒼士郎という青年を非常に魅力的に作り上げている。
創神使いとしては、四王の一角として名を馳せ、多くの優秀な創神使いを育てた名教官として、今は若き高校教師、先生として老成し人生の酸いも甘いも噛み分けて、多くの若者の人生を背負い、担い、見守ってきた先達としての雰囲気を纏いながら、ひいろとの関係ではもろに初々しい異性を意識する初な若者の顔を見せる。
うん、特に一巻から見違えたのがひいろとの関係なんですよね。お互いに正体を知り、戦後の世界でどう生きるかについてわだかまりや心残りに決着をつけ、黒絶公と剣帝としてではなく、ただの教師と生徒として、それ以前にお互いにただの初めての友達として、何の柵もない一個の人間として寄り添い合う関係なんである。
戦争も、創神使いも過去の一切が関係ない、ただの破城蒼士郎と朱桐ひいろの日常が始まっているのである。過去の因縁など関係ない、引きずらない、新しい日々がもうこの二人の間でははじまっているのである。
はじめてみると、これがまた甘酸っぱくて面映ゆくて。
実のところ、この二人の青春模様はもうちょっとじっくり堪能したかった。きゅんきゅんときめきたかった。
しかし、この第二巻の本筋は蒼士郎の師としての、教師としての、教官としての、かつての弟子と今の弟子と向き合う話なんですよね。
蒼士郎の、先生としての在り方が問われ、その教えがどれだけ弟子たちに届いているか、という話であり、すでにロートルになってしまった人間が、それでもかつての、そして今の弟子たちの信に応えようとし、弟子たちもまた師の教えに忠実たらんとする話なのである。
初瀬恭真が示してくれた、新しい時代の創神使いの、強さや破壊の力だけが肝心ではない、新しい力の使い方、それは蒼士郎が、ロートルが胸を張って後を託すに足る証明だったんじゃなかろうか。わりと、師弟愛というか男の話だわなあ。
誰も何も間違っていなくて、だからこそその正しさが悲劇をガツンと蹴っ飛ばしてくれる話でもあるわけだ。そして、熱くなってる男共の背中をそっと支えて押してくれる、とびっきりに良い女達。
三田さんの作品は、こういうすこぶるカッコいい男女が佇んでいてくれると、本当に面白い。だからこそ、これはまだまだ続きが読みたいのであります。

1巻感想