天空監獄の魔術画廊 V (角川スニーカー文庫)

【天空監獄の魔術画廊 5】 永菜葉一/八坂ミナト 角川スニーカー文庫

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奇跡の島『天空の大監獄』―そこには魔王の血肉と、恐るべき魔術が込められた600枚以上の『魔王の絵画』が封じられている。脱獄に失敗し、監獄内での自由すら奪われて監禁されてしまった看守のリオンと、囚人のキリカ、レオナ、アネット、フィーネの4人。しかし、リオンの師匠・イングラムが率いる革命軍の手助けにより、再びリオンは脱獄を決行する―。このままでは世界が滅亡!?天空の大監獄の謎がついに解き明かされる!!
脱獄話が、いつの間にか世界滅亡のピンチになってたーー!! 詳しく話を聞いてみると、おおむねキリカさんが原因じゃないか! たった一人で危うく保たれていた均衡をぶち壊し、何十年も掛けていた計画を破綻させ、世界の趨勢を決める戦いを引き起こしてしまったキリカさんのポンコツっぷりはもうワールドレベルじゃないかw
キリカが罪人としてこの大監獄に放り込まれた過程って、何気に雑というか大雑把というか、なんでわざわざこの娘を罪人に仕立てあげなきゃいけなかったのか、という理由から妙な違和感があったんですよね。なにしろ、キリカさんって知れば知るほどポンコツで、わざわざ排除しなきゃいけないほどのキレ者でもないんですよね。そりゃ、あの戦闘力はもう尋常じゃないことこの上なしなんだが、そこまで邪魔かというとわりとどうとでもなりそうというか、騙しやすそうというか、利用されやすそうというか。
まあそういうもんか、と気にはしてなかったんだけれど、まさか師匠筋からリオンの護衛として送り込まれていたとは……むしろ、色々計画を台無しにされて過労死寸前のどんちゃん騒ぎになってしまった副官殿の腹いせが理由の大半だったような気がしないでもないけれどw
でもまあ、キリカさんがやらかしてリオン捕まえちゃったからこそ、レオナやアネット、フィーネの三人と出会うことが出来たのだから、運命は運命だよなあ。キリカさん的には自爆かもしれないけれど、まあ一緒に大監獄に来なければキリカさんもリオンと結ばれなかったのだから、悪くはない差し引きだったんじゃないかと。
それにしても、一気に魔王を含めてこの世界を構成する様々な設定や謎が明らかになったんだけれど、大監獄内でわさわさやってたのもそれはそれで面白かったんだけれど、わりと外に出て世界中駆け巡って冒険して、というのも面白かったかもしれない、と思う程度には世界設定面白かったんですよねえ。
それ以上に、やっぱりこの主人公のリオンの自分ルールを譲らない「魔王」なキャラクターこそがはっちゃけた展開に燃料ぶちまけて火を焚べるファクターだったので、大監獄内だろうが外の世界だろうがリオンが大暴れしてる文には、楽しさは変わんなかったのかもしれないけれど。
いや、この主人公の自分で定めたルールは厳守するけれど、一方で欲望に忠実、というキャラは面白かったなあ。その彼の欲望というのが基本的に画狂としてまず何よりも良い絵を描きたい、というところで埋め尽くされてたのも、このリオンを頭のオカシイ一般論が通じない「魔王」にしてたわけだけれど、前巻あたりで「愛」とはなんぞや、女性を愛するとはなんぞや、という人間のそれを理解して以降は、鈍感じゃない主人公として……やりたい放題になってましたからねえ、うんうん。一途なようで、どっか踏み外してたからなあ。彼が誰か一人しか選ばない、という結論にはどうもしっくり行くものを感じていなかったので、レオナが粘り勝ちしたのも納得なんですよね。
てか、実のところ自分はリオンは、キリカさんルートじゃなくてレオナを選ぶんだと思ってたんですよ。だから、キリカさんのウェデングドレス姿の最終巻の表紙絵には、キリカさん可哀想に的なことを考えてて、正直すまんカッたw
キリカさん、ぽんこつ可愛いんだけれど、レオナのガチヒロイン力がちょっと揺るぎないものがあったんですよね。レオナだけは、ちゃんと受け入れてあげないと幸せになれそうにない薄幸な感じが付き纏って離れなくってねえ。
結局、キリカさんのポンコツさはラブコメ面でも最後の最後まで暴れっぱなしでしたし。せめて、一番最初に結婚式やってあげるくらいでないと、レオナもアネットも、フィーネですら男の子をドキッとさせる女子力がありすぎて、キリカさん弄られるしかないのよw まあキリカさんのあのイジられれば弄られるほど輝くポンコツかわいいキャラはいい意味でぶっちぎりなんですけどねえ。
後日談は、大監獄脱出後の彼らの激動の人生が伺い知れて、これはこれで読後感に痛快さがあって実に良かった。ほんとにリオンとこの四人の嫁たち、やりたい放題人生楽しみ、肉欲に溺れ、世界を股に掛けて大暴れして、生きることを満喫しきったことが伝わってきてる。本物の魔王なんかになって、世界を支配して、苦労も多かったんだろうけれど、しんどいとか辛いとかが全然感じられない、ヒャッハーな空気が満ち満ちてるんですよね。これだけ楽しそうな様子が伝わってきたら、もう見送る方としては苦笑しながら満腹のお腹を擦るしかないじゃないですか。
ああ、面白かったっ! 

あと、最後に。もう一人の脱獄王ヴァレリア。ついにはこの世界からも脱出して異世界を征服に行ってしまった彼女。アイシャルリターン、とばかりにあっち征服したら今度はこっち征服しに戻ってくるから首洗って待ってるが良い、とばかりに肩で風を切って行ってしまった彼女。後日宣言通りに、異世界からこっちの世界に侵略戦争を仕掛けてきたようなのですが……。
あのね、あの宣言見たら、今度会う時は乾坤一擲の決戦だ、という気分になるじゃないですか。今度こそ、決着を着けるぞ、みたいな雰囲気だったじゃないですか。
なんだよ、その侵略戦争の回数わ!!(爆笑
ヴァレリアさん、あんた、ちょっと侵略して来過ぎ!! その回数だと一年に2回以上の季間行事みたくなってるよ!? 人生楽しそうという意味合いにおいては、ヴァレリアも負けず劣らず、どころか吹っ切ったリオンたちをすら圧勝してるよなあ、この人。

シリーズ感想