戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉5 (HJ文庫)

【戦うパン屋と機械じかけの看板娘〈オートマタンウェイトレス〉5】 SOW/ザザ HJ文庫

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ついに正体を現した宿敵、ワイルティア親衛隊中将・ゲーニッツにスヴェンを奪われてしまったルート。王都ベルンではソフィアまでも捕らえられ、兵器開発局は親衛隊の手に落ちてしまう。かつてない窮地に追い込まれたルートは己の忌まわしき過去を乗り越えて、愛すべき看板娘と共に再びパン屋『トッカーブロート』を開くことが出来るのか!?

レベッカって登場当時はスヴェンと対比する形でより機械人形らしい感情を排した同型機というスタンスに見えて、そんな無機質の中にもスヴェンと同様に自分のマスターだった人への思いやその息子への情を滲ませる、という奥ゆかしさを感じさせるキャラクターだった気もするんですよね。
そう思ってた時期もありました。
いやいやいや、レベッカさん、あんた完全にスヴェンと同類じゃねえか。そのあからさまな変態入ったマスターへの偏愛っぷり、スヴェンと殆ど変わらんじゃん!! 人型兵器のAIはみんなこんなんなんか!!
暴走乙女回路を実装していないと、スヴェンやレベッカみたいな魂魄実装型にはならないんだろうか。博士の場合、仕方なくではなく好んで彼女たちの豊かな情緒をそのままにしているようにも見えるんですよね。もっと機械人形らしい機械人形も作れていたようなのに、それは失敗作として放棄していたみたいですし。
博士ってマッドサイエンティストとして、序盤は黒幕なのかなーと思ってましたし実際、黒い行動も多いのですけれどスヴェンやレベッカに対しては邪魔もせずむしろ積極的に支援してくれるサポート役になってるのは面白い立ち位置だなあ、と。
そして、なんだかんだとソフィア姉さんへのアプローチが成功しかけている件について。博士、いつの間にかソフィア姉さんにガチでマジになってしまってるじゃないですか。最初の頃は博士本人もからかうと面白いから程度の玩具的な扱いだったと思うのだけれど、いつごろからマジになってたんだろう。まあおちょくられているのを除けば、博士のソフィア姉さんへの対応って基本献身的だったのを考えると姉さんがグラっと来てしまったのも無理ないかなあ、と。何だかんだと大事にされてしまっている、という感覚あったでしょうし。
まあ、囚われのところを助けに来てくれた王子様なルートがおもいっきり自分は上官兼姉であって女性としては眼中になかった、というのを思い知らされてしまった、という理由もあるんでしょうが。

肝心の記憶を消されてしまったスヴェンがルートとの絆を取り戻すシーン。ルートの覚悟、というかスヴェン=アーヴェイを大事に思うがゆえに、彼女をあらゆる頸木から解き放つリセットを行う決断は良かったんですけれど、もうちっと盛り上がりには欠けたかなあ、という印象。実のところ、今回の事件に関してはルートはスヴェンに対して一心不乱というわけでもなく、むしろルートとゲーニッツ、二人の物語という感が強かったせいもあるんじゃないかなあ、と思うんですよね。
兵器としてのルートを求め続けたゲーニッツですけれど、当人は最後まで気づいてなかったようですけれど、あのルートへの執心は優秀な兵器を得るためではないのでしょう。むしろ、たった一人の友人としてのルートに、自分の歩む道についてきて欲しかった、という理由であった方がゲーニッツの言動には筋が通るんですよね。
人と交わらぬが故に、友を得るという意味を最後まで理解できなかったゲーニッツ。しかし、一方でルートに対して残していた誠実さや執心は、ゲーニッツが自覚なくルートを友として扱っていた、とも言えるわけで、そのアンバランスさが哀しく、ゲーニッツの死にこの世でたった一人涙を流して悲しんだルートの姿に、切なさを感じると共に一人でも泣いてくれる人が居たんだなあ、とゲーニッツという黒幕にして最大の悪役のキャラに感じ入るものがあったのでした。
ただの野心家の悪人では醸し出せない雰囲気があったと思います。惜しむらくは、だからこそもっとルートとゲーニッツの間の因縁をもっと以前から前に押し出していたら、このクライマックスも盛り上がっただろうに、というところですか。

あと、一時勘違いしていた伍長の正体が、まわりまわって本当にあの人になった、というのは上手い試みだと思いましたねえ。想像していた通りのキャラクターで、いい意味で裏で暗躍してくれるキャラが増えたなあ。
さて、シリーズ通じての大事件が一段落したわけですが、これで仕舞いではなくまだ続くのですね。ここからパン屋のままどう展開していくんだろう。

シリーズ感想