かくりよの宿飯 四 あやかしお宿から攫われました。 (富士見L文庫)

【かくりよの宿飯 四 あやかしお宿から攫われました。】 友麻碧/Laruha 富士見L文庫

Amazon
Kindle B☆W

あやかしの棲まう“隠世”の老舗宿「天神屋」で食事処を切り盛りする女子大生の葵。突然やって来て銀次を連れて行こうとするライバル宿「折尾屋」の旦那頭・乱丸に楯突いた結果、彼女は南の地に攫われてしまう。こそっとついてきたチビの力を借り、地下牢から脱走しようとする葵だったが、その前に乱丸はじめ「折尾屋」のあやかしたちが立ちはだかり―。銀次と一緒に「天神屋」に帰るため、四面楚歌の状況を打破すべく葵が考えた秘策とは…ゴーヤチャンプルー!?

くあぁぁぁ! なんという飯テロ!!

いやもうこれヤバイでしょう。出てくる料理がどれもこれも美味しそうで美味しそうで、お腹すきますわー! 読んだの夕食を食べたあとだったというのに、なんだか食い足りない気分になってしまってお茶漬け作って食っちゃいましたわいな。巻を重ねるごとに、料理の描写が鮮やかになってきてるんですよね。これに関しては【ベン・トー】シリーズのアサウラさんに匹敵してきたかも。あちらと違うのは、葵が作る料理がちょっとレベルの高い家庭料理というところでしょうか。なかなか気楽に食べられそうにないんですよね。小料理屋とか行かないと難しいんじゃないだろうか。いや、ちゃんと家でも作れるくらいの品なんだろうけれど、素材の新鮮さとか料理の手際なんか見てるとねえ。
それにしても、思い返しただけでもよだれが垂れてくる。あのプリプリっとしたイカしゅうまい。タコのゴーヤーチャンプルとか、ガーリック風味とふんわりと絡ませたとき卵がまたいいんだ、美味しそうなんだ。エビ頭の出汁でとったお味噌汁までついて、これが朝ごはんなんだぜ。
そして、タルタルソースがたっぷり掛かった、これまた新鮮な牡蠣をふんだんに使ったカキフライ! カキフライ! いや、実のところ自分牡蠣系は苦手なんだけれど……苦手なんだけれど、これは食べたい。レモンがたっぷり掛かってるんですよ。たまらん。
子供の頃は苦手だった茄子も、この歳になるとすっかり大好物になってしまって、揚浸しなんかすごい好きなのですけれど、この串焼きにした焼きナスも素晴らしい香味で、うんうん。なにより、鶏ですよ。手羽先を、おおこんなに大胆に使っちゃって。煮るんですよ。お酢と醤油と砂糖で煮込んで、茹で卵と大根も仕込んで。あのホロホロと肉が崩れ落ちるまで柔らかくなった手羽先の美味しそうなこと。卵と大根だってしっかり味が染みこんでて、ごはん、白いごはんをよこせーー!!!
あと、ブリの漬け丼とか、ニラ玉みぞれスープとか、そしてがめ煮と九州北部では呼ばれるらしい筑前煮。どれもこれも、もうたまらんくらい美味しそうで、どうしよう、どうしてくれる!!

大旦那様、あんたとんでもないのを嫁に捕まえてきましたね。うん、これはね、これなら餌付けもされるよ。飯で色々問題も解決できるよ。真心の篭った美味しい料理ほど、魂にドスンと来るものはない。舌から脳髄に魅了の電撃が流れ、頑なになっていたものもこわばって元の形に戻れなくなっていたものも、自然と解きほぐれてしまう。
美味しいごはんの偉大さよ。でも、ただ美味しいだけじゃあ足りないのだ。食べる人のことを一身に考えて、心を配り、考えに考え、その人が一番おいしく食べれるように作られたからこその美味しさであり、だからこそその美味しさの前に人は素直になってしまう。
大天狗の松葉さまがずっと抱え込んでいた後悔。息子である葉鳥さんとの不和も、お互い歩み寄ろうとしてこれまでの時間の蓄積とわだかまりがそれを妨げていたのを、二人の共通の思い出の料理が葵の手によって供され、思い出の中で定まらなかった真実が解き明かされるのですが、やっぱりこういう親子の情を沸き立たせる良い話は染み入るくらい好きなんだなあ。
個人的には乱丸や秀吉の乱暴な態度は幾らなんでも理不尽すぎて、どんな理由があり、儀式を成功させるためにどれほどの思いを重ねてきたのかが理解できてもなお、怒りは収まらず納得も出来ないのだけれど、不屈の思いで逃げず負けず、自分のできることに全力を注ぎ続ける葵のことは素直に応援してあげたい。本当に大した娘さんである。
しかし、今回は理不尽な扱いもありかなり精神的にも弱っていたっぽいのだけれど、ここぞというときにひょいっと現れてくれる大旦那様は、うんカッコ良かったよ。むしろ、天神屋に居る時はトップとしての立場が邪魔して気安く接してこれなかった分、魚屋に扮してひょいひょいと葵に会いに来た大旦那さまは、えらい親しみやすくて、それでいて弱っていた葵を自然と支えて勇気を与えてくれたせいか、好感度ガンガンあがってましたねえ。むしろ、天神屋に居た時よりも一緒に居る時間の密度も濃かったんじゃないでしょうか。あれで大旦那様、マメだし甲斐甲斐しいし手伝い上手だし、こうしてこっそり会いに来てる時のほうが距離感近いんだよなあ。
銀次さんを連れ戻すために折尾屋から逃げ出さずに踏ん張っている展開なだけに、銀次さんと急接近か、と思ったけれどむしろ忙しくて顔をなかなか見せられない銀次さんより、大旦那さまの方との距離が縮まるとはなかなかに予想外でした。花嫁呼ばわりから新妻呼びにまで発展していたにも関わらず、葵ももう否定しないどころかなんか満更でもなさそうな感じになってましたし。
いやあ、でも銀次さんも大旦那さまも、二人とも甲斐甲斐しいからどっちも旦那としては好物件なのよねえw

銀時が折尾屋に戻る原因となったある儀式。これにまつわる話の決着は次回に引き継がれたのだけれど、これまでの過程見ても殆ど全部葵が必要なものとか集めてしまっているんですよね。乱丸、偉そうにしているわりに何もできてないぞ。これは葵を連れてきた黄金童子さまの慧眼、というべきか。
ああ、記事書くのにちらちら読み返してるだけでまたお腹すいてきた。サバ、サバに煮付けとか食いたい。

シリーズ感想