はたらく魔王さま! (16) (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 16】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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魔王さま、義理チョコを貰う!?
異世界で始まった大魔王の遺産捜索の裏で庶民派バレンタインが開幕の、第16弾!

『大魔王サタンの遺産』捜索のため、六畳一間の魔王城からは、生活用品一式が異世界エンテ・イスラへと移されていた。通勤時間の問題により、魔王はそんなからっぽのヴィラ・ローザ笹塚201号室で寝泊まりをすることに。独り身の生活に寂しさを感じながらも、正社員登用研修に参加する魔王。そんな中、研修で一緒になったゆるふわ女子に思いがけず義理チョコを貰ってしまう。アシエスの食い意地によりその情報が知れ渡った時、女性陣に動揺が広がるのだった――!
一方エンテ・イスラでは、大魔王の遺産の一つ『アドラメレキヌスの魔槍』を手に入れるため、鈴乃、ライラ、アルバート、ルーマックが北大陸に旅立っていた。日本のジンギスカン屋そっくりの店では、「囲いの長」と呼ばれる北大陸の代表が待ち受けており……? 庶民派ファンタジー第16弾!

千穂ちゃん、まじすげえ。この娘のくそ度胸と聡明さには何度度肝を抜かれれば済むのか。悪魔大元帥の称号は決して名誉職のそれじゃないのだ。称号にふさわしい働きを、常にこの娘は示している。だからこそ、何の力も持たない女子高生という点は最初から殆ど変わらないのに、彼女の名望はヴィラ・ローザ笹塚の小さなコミュニティに留まらず、魔王軍の幹部たちも人類諸国の名立たる者たちに広がっていくのも当然だろう。
事態がエンテ・イスラを中心に動くことになって、千穂ちゃんが蚊帳の外になってしまうんじゃ、という危惧なんてどこへやら。むしろ、真奥と恵美の方が大っぴらにエンテ・イスラで動くわけにはいかないから蚊帳の外になってるくらいじゃないか。
その清々しいまでの威風堂々とした振る舞いと、意思の強さによって、今は亡き前魔王軍大元帥アドラメレクの遺産、いや彼の魂の後見を得た佐々木千穂。もはや、名実ともに誰もが認める、魔王軍大元帥筆頭である。
今回の一連の話を鑑みると、この16巻の表紙絵は白眉なんじゃなかろうか。千穂ちゃんの凛々しい姿に、奮闘しながらもすっ転ぶベル、そして完全に乙女の表情になってしまっている恵美。三者のヒロインのこの巻における動向を、一発で表してしまっているのだから。
それにしても、真奥さんはもっとしっかりしなさいよねえ。芦屋たちがエンテ・イスラの方に生活の比重を置いてしまったが故に、逆単身赴任みたくなって部屋に一人取り残されてしまった真奥。ベルもエンテ・イスラの方で忙しく、千穂ちゃんは男の一人住まい状態になってしまった201号室には簡単に足を運べなくなってしまったせいで、孤独感に打ち震える真奥のメンタルがマッハで消耗してしまっているんですが、飯事情が寂しくなって、おまけに人恋しくてみるみる元気がなくなっていく魔王さまって、どんだけだよww
まさかここまで真奥が軟弱だとは、そりゃあ芦屋やっつけてたら魔王軍勝手に自壊してたんじゃないか、というベルたちのコメントは的を射すぎてて笑えない。
一方のベルも、エンテ・イスラの政治的なバタバタ騒ぎでも十分大変なのに、そこに真奥のハッキリしなささが原因で千穂や恵美、その他もろもろの女性関係のもやもやした状態に神経をすり減らすことに。自分では傍観者というか中立の立場で居るつもり、でいるのが余計に拍車をかけているような気がするなあ、彼女は。ベルも当事者なんですよね、それを認めていないから余計に真奥の考えが足りない言動に過剰反応して感情を滾らせることになる。この点、ひたすら自分と戦っている恵美がひたすら内圧を高め続けているのとは裏腹に、活火山並みに小規模噴火を繰り返しているのは、まだマシと考えるべきなんだろうか。
ただ、真奥へのイライラが色んな側面でベルに踏ん切りをつかせてしまっているのは何とも面白い状況で、ベルの場合は冷静にさせるよりもむしろ暴走させる方がガンガン閉塞を打開していくんですよねえ。その意味では、彼女も魔王軍大元帥として派手に思い切って振る舞った方がいいんでしょうなあ。でも、人魔共同戦線の陣中でも教会の幹部ではなく、本気で魔王軍の立場で物言いしてるのは笑ってしまいましたけれど。あれは八つ当たりみたいな状態だった、としても。
あと、チビカマはストライクすぎて、もうこれ絶対定着して離れなくなったぞ。
いずれにせよ、今回の一件は魔王も勇者もそっちのけで、悪魔でも天使とのハーフでもなく、ただの人間でありながら魔王軍大元帥の看板背負った二人の少女の活躍で、様々な行き詰まりやらしがらみやらをふっ飛ばしてくれたのは、痛快の一言でした。
梨香さんもここにきて、ベルの企みにも一枚噛んでエンテ・イスラにも出入りしていたように、完全に仲間入りしてきた上に、芦屋に対しても一歩も引かない姿勢を見せてきて、肝を据えた女性陣はほんと気持ちいいですわ。芦屋も、タジタジなんだけれど彼の場合は実のところ既に心中かなり傾いてるからなあ。
そして、完全に内面は乙女とかしてしまっていて、口に出して言っている言葉が本当に建前だけになってしまっている恵美。彼女、マジでどうするんだろう。うちに篭めてる熱量がどんどん凄いことになってるんだけれど。

シリーズ感想