異世界拷問姫2 (MF文庫J)

【異世界拷問姫 2】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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「ヒナ―――俺のために死んでくれるか?」
破滅に向かう反英雄譚、第二弾!

最上位の悪魔『皇帝』とその契約者ヴラドを討ち果たすも残る敵は多い。今後の戦いに備え、櫂人は魔術を習い始める。その後『総裁』をも倒すが――それは罠だった。ヴラドの旧友にして『大王』フィオーレが同胞悪魔の心臓を生贄にし、エリザベートの悪魔の力は封じられてしまう。
「遊びは終わり、お姫様―――さぁ、大人の時間を始めましょう」
拷問姫が倒れし好機に悪魔たちの攻勢が始まり――?
「さぁ、お相手しよう、『悪魔』達! 我が名はヒナ! 愛しき櫂人様の永遠の恋人であり、伴侶であり、兵士であり、武器であり、愛玩具であり、性具であり――――花嫁だ!」
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る異世界ダークファンタジーの最高峰、白姫血染の第二弾。

もう表紙からして花嫁無双。無垢なる純白を血と臓物の赤に染めて乱舞する花嫁人形。ほんと、この物語で描かれる絵面と来たら、なんて悪趣味で……美しい。
作者の綾里けいしという人は、本当に何というか「愚者」の愚かの描き方に毎度胸をかきむしらされる。愚か愚か愚かとしかこぼせないのに、その愚かな有り様が、愚直な在り方が愛おしくて仕方ない。慈しまざるを得ない。自ら選んで、地獄を征くものたち。もっとささやかで幸せな人生を得られただろうに、それに背を向けて悪夢と寄り添うものたち。それが破滅へと行き着く道だと理解しながら、蕭々と進んでいくモノたち。
そんな子たちだからこそ、破滅へと至るまでの僅かな平穏、笑い合う時間が涙が出そうなほど愛おしいのだ。
カイトもまた、ただ拷問姫の末路を見届けるだけでは気がすまず、同じ煉獄へと身を落とすことを選んでしまった。その最期の道連れとなることを選んでしまった。その破滅の選択は、だけれどあまりにも純真な思いから発露していて、同じく人形として無垢なる想いを結晶のように昇華させていくヒナと並んで、穢れない眩しさに塗れているのだ。
あれほどの地獄を体験して、呪われし人生を歩んで、絶望と苦痛の粋を魂に刻まれながら、この少年はどうして邪悪に堕ちずにいられたのだろう。それもまた、拷問姫に魂を救われたからなのか。
大罪人として贖罪たる悪魔たちの討伐を終えれば、火刑に処せられることが決まっている拷問姫。彼女は正しく邪悪と世界に認知されている。その罪の是非はこの物語では問われていないんですよね。どんな理由があろうと、彼女が犯した虐殺は事実であり、そこから生まれた罪と怨嗟は決して否定も覆されるものでもない。彼女に向けられる憎悪も憤怒も正しいものであり、その贖罪たる悪魔の討伐もまた、彼女に何一つ報いをもたらさない。
彼女は悪しき、それは間違いないんですよね。それは前提として、でもそれを個々人の心の中まで強制される謂れはないのである。彼女に殺されたものたちにとって、その縁者たちにとって、世間にとって拷問姫エリザベートが邪悪で呪わしくおぞましい殺人狂であっても、カイトとヒナにとってはエリザベートはまた違う存在なのである。事実は事実として受け止めながら、その上で彼らがエリザベートをどんな風に想うか、その心の中は犯すべからざる領域なのだ。
想うことは、何者にも束縛も強制も受けざる、自由であるべきなのだ。
それこそが、魂の自由なのである。
その大悟へと至ったカイトの飛躍は、見ていて震えるものがありました。ブラドの残影と、そして皇帝と五分に渡り合えるようになったのも、彼の中にその指針が根を張り芯を得たからではないでしょうか。その瞬間、彼はブラドの意図とはまた全く違う方向に向かって、ブラドの後継としての在り様を手に入れたのである。
そうすることによって、ヒナとカイトの花嫁と花婿という関係の中にあったモヤモヤとした霧も晴れ、エリザベートという主と連れ添うカイトとヒナ、この三人の不動の関係も完成したようにすら思うのです。
自分、こういう破滅という結末を受け入れた上でその最期の瞬間まで堂々と共に歩むことを選んだ関係って、たまらなく好きなんですよねえ。
そして、あの、将校姿のカイトのシーン、震えるほどかっこよかった。
人形であるヒナとの関係、一巻ではいきなり起動からあんな感じだったんで、ヒナの想いに嘘くさいと言わないまでも人工の与えられたモノとしての気配を感じてしまっていたんだけれど、それも今回うまく解消されてましたしねえ。人工的に植え付けられたものではない、ヒナという存在の生の想い。それを実感させられたからこそ、あの花嫁無双のシーンも映えるわけで。
そんで、力を使い果たしたヒナに、エリザベートとカイトがもうなりふり構わず駆け寄ってくシーンがたまらなく好きなんですよね、あれ。カイト命のヤンデレ入ってるようなヒナだけれど、実は同じくらいエリザベートのことも大好きで、エリザベートの方もあんな風に慌てふためくくらいにヒナのことが大好きで、と悪魔討伐の地獄行の途中という余計な事情やら何やらを全部取っ払ったこの三人の関係を、あのシーンは全部表していたように思えたので。
俄然、盛り上がってきたなあ。
シリーズとしては次が最終巻っぽいけれど、この三人には救いは無くても、せめて幸いなる破滅が訪れんことを願うばかりである。

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