インスタント・ビジョン 3分間の未来視宣告 (角川スニーカー文庫)

【インスタント・ビジョン 3分間の未来視宣告】 永菜葉一/まごまご 角川スニーカー文庫

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西暦2021年に発見された病“夢現譜症候群”。感染した人間は必ず“2029年12月31日”に3分間だけ意識が飛ばされる=“未来が視える”というその現象。14歳のレオはロンドン市内で無差別に人を斬り裂く未来を体験する。「どうして俺が殺人鬼なんだよ!?」絶望と共に未来視から戻ってきた彼にはある異能が目覚めていた―。3年後、Xデーが迫る中、ある少女がレオのもとに現れる。「あなたを殺しにきた」と告げながら。近未来SFバトル開幕!
これっ、めちゃくちゃ面白いな!!
そうか、無数の人が同じ時間の未来を「観測」することで多角的な視点から未来が確定しちゃっているのか。これだと「未来を誤魔化すことが出来ない」。おまけに、未来を視た人物がその未来が実現しないように自殺したり殺されてしまったケースではより酷い惨劇が確定的に発生してしまって、事実上その選択肢を選べない状態になっている。極めて未来改変が難しい状況に置かれてしまっている世界なのか。
面白いのが、この三分間の未来が見えることが「病気」というところなんですよね。しかも、感染症。どうやら発生の原因となるものがあるようで、各国の政府機関などは国家間、組織間のパワーゲームを繰り広げながらもそれを最優先で追いかけている。主人公は、そんな暗闘の最前線で戦うエージェントみたいなもので、物語のノリはどちらかというと海外ドラマっぽいんだよなあ。
未来に関しての話なので、現在については逼迫したものがないのかというとそうでもなくて、この“夢現譜症候群(ディー・スコア・シンドローム)”が人口密度の高い都市部で発生した場合、感染拡大してしまいパンデミックが起こってしまう。いきなり数千、数万、数十万規模の人間が意識消失するのだから、交通機関では大事故が多発し、危険物を扱っている所などでも事故や災害が発生してしまうわけだ。それに、人間は固いアスファルトの道路に倒れるだけでも死にかねない。ましてや階段や密集地帯で将棋倒しになればそれだけで大事故の発生だ。実際、酷いケースでは万単位の死者が度々は生まれる事件が起こっているわけで、原因究明に躍起になっている各国関係機関の緊迫感はヒリヒリと焼け付くほどのものなんですよね。
これ、舞台設定だけで素晴らしく読み応えのあるものになっているわけで、ここに躍動感あるキャラクターと先の読めないストーリーを乗せれば、そりゃめちゃくちゃ面白いものが出来るに決まっている。
そんな中で、本作がぶっ飛んでいるのは中盤に登場する悪役のラビットの凄まじいまでの存在感だろう。最初は頭の中身がイッちゃってるただの危ないオッサンかと思ったら、これが後半本性を表したところからもう存在感を喰うわ喰うわ、殆ど全部このラビットが持ってっちゃったんじゃないだろうか。頭がオカシイ危険人物にはっ変わりないのだけれど、イカレているなりの信念があり生き様があり悲哀があり、悪役としての底なしの魅力を爆散させているのである。それでいながら、主人公のレオくんの絶対的な支持者であり理解者であり友人でもあるのですよ。そして、だからこそ完膚無きまでの敵対者でもある。己を、悪と課している、言うなれば対比としての絶対悪。自分、こういうキャラには特にメタメタに弱いんだぁ。
いやあ、相変わらずポンコツヒロインのポンコツっぷりを描かせたら並々ならぬ作者らしく、自称エリートのティアのポンコツっぷりは実に素晴らしく、いきなりレオくんに素っ裸にひん剥かれてアソコに剣(比喩でなくマジ剣)ぶっ刺されそうになるなど、活き活きと酷い目にあっているあたり、メインヒロインとして七転八倒の働き(?)を示しているのですが、何しろラビットの兄さんが諸々インパクト持ってっちゃったからなあ。
しかし、直腸検査されてしまった前作ヒロインといい、この作者のメインヒロインは主人公にぶっ刺されないと気がしまないんだろうか。ってか、主人公がみんな鬼畜すぎる(笑
殺人鬼(予定)なのはともかくとしても、仮にも自称英国紳士なのに、女の子を拷問する時なんでそんな活き活きしてるんだ、こいつわ。
ナゼ、未来においてレオは多くの市民を殺戮することになるのか。このパンデミックを引き起こしているスクルドとは何者なのか、この未来視病がもたらそうとしているものは一体何なのか。謎が謎を呼ぶ展開にはワクワクが止まりません。これは期待のシリーズ開幕だわ。

永菜葉一作品感想