異世界迷宮の最深部を目指そう 8 (オーバーラップ文庫)

【異世界迷宮の最深部を目指そう 8】 割内タリサ/鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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―それは千年前の契約。使徒の力を受け継ぐという使命。『英雄』と『化け物』たちの戦いを続ける遊び。『境界戦争』の中で誰もが『運命』や『生まれ』に振り回され、契約を果たすパリンクロンの計画をもはや誰も止められない。戦場でついにパリンクロンを捉えたカナミは、千年前の再来を止めるべく仇敵に戦いを挑んでいく。『世界奉還陣』の発動する戦場が紫水晶の魔力に満たされ、再び始まる第二十の試練―。
「―『ああ、我こそが死罪人』『闇の理を盗むもの』―」
心に宿る運命に『誓約』を果たしたその時―少年は『最深部』を暴く者となる。
激動! 激動! まさに急転直下の激動の展開。いやいやいや、ここまで引っ張ってきた様々な謎や秘密が閉店セール大盤振る舞いの如く、一気に開陳されていくその怒涛の勢いたるや、正直泡を吹く勢いでありました。
パリンクロン、そこまで核心に近いところにいたのか。あまりに核心すぎて、当事者であるカナミがついていけないほどの急展開なんですよね。本来ならこれもう少しじっくり一つ一つ明らかにしていくような真実の数々であろうに、駆け抜けるようにぶちまけられてしまいましたからね。それだけ、パリンクロンの土俵の上だった、とも言えるのでしょうけれど。カナミから、そのじっくりの余地を徹底して奪って自身のところで集約していたわけですから。
もし、ワイスさんが居なかったら、まず詰んでたんじゃないだろうか。あれほど苦労した結果集った凄まじい戦力である仲間たちも、見事なくらいにほぼ無力化されてしまいましたし。みんな、おおよそ「千年前」というキーワードに深く関わる人達だっただけに、そこに絡める形で根こそぎやられたもんなあ。スノウも、トラウマ込みで仕込まれていたわけだし。
この「千年前」という鍵に関しては当事者のカナミですら該当するわけで、あれほど強くなったはずのカナミが、メンタルの方も苦難と試練を山と乗り越えて随分鍛えられたはずなのに、パリンクロンの手口を嫌というほどわかっていながら、わかっていてなお、クシャっとやられてしまったわけですから。
だからこそ、「千年前」というキーワードと全く関係ない位置に居たマリアが、もう戦力的にも精神的支えとしても獅子奮迅の活躍だったんですよね。これもうマリアに頭あがんないでしょう。
そして、再誕してなおカナミに力を貸し続けてくれたワイスさん。彼女の意識がどうなっていたか、というのを探るのはもう無粋というものでしょう。彼と彼女の意志は、確かに弟であるライナーへと受け継がれたのですから。
もうライナーがカナミにとってあらゆる意味で癒やしと救済になりそうでなんともはや。ライナー、兄の遺志を継いでカナミを守ることを思いっきり決意しちゃっているけれど、その場合敵からだけでなく、パーティーメンバーからも守ってあげないといけないことになりそうで、今からご愁傷様である。絶対カナミ、ライナーに逃げそうだもんなあ。
と、そう悠長なことを言っていられない大どんでん返しが、最後にも待っていたのだけれど。
パインクロン戦は、この詐術士の真意と本心と苦しい胸の内を理解した上で相容れぬ敵として、許せない相手として、ローウェン戦のあの奇跡的な噛み合い方とはまったく別の、逆方向のベクトルで噛み合った、お互いに絶対に負けられない、負けたくない、激情をぶつけ合う激闘でした。わかっていてなお騙される、意識をそらされる、死角を作られるというもう二度と会いたくないような敵だったなあ。わりとカナミめためたにやられてしまいましたけれど、それでもなおこれまでの試練でメンタル鍛えてなかったらそのメタメタにされるまでの僅かな抵抗すら叶わなかった、どころか敵対すら許してもらえなかっただろうことを思えば、十分カナミ強くなってたのよねえ。マリアやワイスたちの助力が合ったとはいえ、よくまあ倒せた、と思うばかりです。

そして、明かされてしまった千年前の真実、迷宮最深部の真実、カナミという男の真実。この巻だけでもかなり大胆なミスリードが用意されていたり、あれの出現には度肝を抜かれたり。
表紙絵のカナミが抱きかかえている娘、誰だろうと思ったらそういうことだったのか。そう言えば、面影もある。
しかし、事態はそう簡単には落ち着かず、まだまだ千年前に端を発する因縁は幾つも残ってるんだなあ。各階層の守護者たち、ともかく彼らとの決着が必要で、そうでないとほんとうの意味の最深部には到達しないのか。
まだまだ、これは続くよ!!

シリーズ感想