ばいおれんす・まじかる!―恋の呪文は修羅の道 (角川スニーカー文庫)

【ばいおれんす・まじかる! 恋の呪文は修羅の道】 林トモアキ/愛姫みかん 角川スニーカー文庫

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「しょうこりもなくあらわれたな、ジジィ!」
魔族の力を持つ悪の科学者・ミスターB。緋奈の指輪の力を狙って、毎晩襲来するBのおかげで緋奈はすっかり寝不足に。元々凶暴な性格に機嫌の悪さも加わって、緋奈の周囲は死屍累々。一方、ぼけ天使ミウルスは、ただひたすら池の鯉と連日死闘を繰り広げていた…。暴力娘と落第天使の爆笑必至の第2弾。
【レイセン】や【お・り・が・み】、【ミスマルカ興国物語】の林トモアキデビュー作シリーズの第二弾。発売が2002年2月ですから、もう十五年前の作になるんですなあ。正直、一作目はあんまり特徴なかったと思うんですよね、殆ど記憶に残ってないですし。しかし、この二作目からは随所に林トモアキワールドらしいドギツい切れ味がキャラにも出てきて、非常にらしくなってきてるんですなあ。
同時に、今こうして旧作を読むと一番新しい【ヒマワリ】シリーズに凄く雰囲気似てるんですよ、これ。雰囲気だけではなく、主題に対するアプローチも原点回帰という考えがあったのかもしれない、と思うほどに緋奈とユキの語らいから生じる「世界」に対する向き合い方や、ユキが選ぼうとしていた生き方、そのあたりをもう一度【ヒマワリ】で改めてアプローチしてるんじゃないかと、ユキや緋奈の不器用ながら真剣すぎるほどに本気でやりあっている姿を見ると、そう思ったわけだ。
ユキのやろうとしていた事って、ヒマワリが失敗したやり方にも似てる気がしますしね。一方で緋奈の方はもう気持ちいいくらいに個人主義。世界平和なんぞ屁とも思っていないのだけれど、人と人という至近の向き合い方については往々にして本気で、ぞんざいな割に妥協しないですよね、この娘。だから、ユキにも本気で怒ったわけですし、彼のあまりにもぎこちなく不器用で、しかし真摯な疑問に対しても常に同じくらい真剣に受け答えしていたわけですし。それでいて、あの人間に対する理解の未熟さは恋愛方面だけじゃなくて対人全般なんだろうなあ。だからこそ、同じ匂いのしたユキとあれだけ意気投合したとも言えるのかもしれないけれど。
だいたい、実家がヤクザなのが悪いんでしょうけれど。そりゃ、まともな人間関係幼少時から構築できんわなあ。
ただ、この娘の場合、普通のフィクションのヤクザの組長の子供みたく、自分の立場に悩んだりせずに真面目にインテリヤクザ目指しているあたり普通でないのですが。それに、ヤクザの暴力振るうにまったく躊躇ないあたり、さすがは林トモアキキャラ、という感じで。
「てめえら、目の前で仲間が殺されてもかかってくる度胸はあるんだろうな。変身したあたしなら、確実にお前らの半分は道連れにするぞ」
「今までは余裕があったからふざけてたけどな。そこまでやられたらあたしも悠長なこと言ってられねえんだよ」
「それと……やりあう前に一つ言っておくけどな。生き残ったやつらも気を抜くなよ」
「ど……どういう意味だ……?」
「てめえらは関東与謝野会の組員五百と、関東与謝野連合会傘下八千七百を敵に回すって言ってんだよ。じいちゃんはあたしのことすごく可愛がってくれててな。ひょっとしたら飼い殺しにしてる香港マフィア使って、てめえらの家族まで皆殺しにするかもな」
「ヤクザってぇのはそういう生き物だ。てめえらみてぇに正義だの、良心だの、これっぽっちも持ち合わせちゃいねえんだよ」
「さあて……わかったやつからかかってこい」

行けるかいっ!!
数の暴力で攻めてきた敵組織の仮面軍団に対して、主人公の魔法少女がニコリともせず真顔で切ってみせた啖呵である。というか、完全に脅迫である。ガチヤクザ系魔法少女じゃぁw
毎日ダンプカー、会社の玄関突っ込ますぞこらっ、と脅しかけてくる女主人公がいずれ出てくるわけですが、すでにデビュー作の時点でこれだったんだなあ、となんだか遠い目に……。
そういえば、ヒマワリの方にも与謝野会ちらっと登場してるとかなんとか。ミウルスの上司、マリアクレセルですし出てきても不思議ではないのですけれど。

林トモアキ作品感想