ワールドエネミー 不死者の少女と不死殺しの王 (Novel 0)

【ワールドエネミー 不死者の少女と不死殺しの王】 細音啓/ふゆの春秋 Novel 0

Amazon
Kindle B☆W

世界中に吸血鬼や屍鬼、魔獣などの強大な怪物がはびこる時代―人類は世界の敵たる12体のアークエネミーとの全面衝突を繰り広げ、その命運は一人の男に託された。ノア・イースヴェルト―史上最凶の「世界の敵」吸血鬼エルザに育てられた史上最強の怪異ハンター。人類の切り札にして、不死たる世界の敵を討ち滅ぼす「不死殺しの王」。これはそんな無敵のハンターと、歴史上で屈指の狡猾なる大敵=吸血鬼・ゼルネッツァAとの死闘の物語。とある町の教会で起きた事件はやがて王家を揺るがす騒乱となり、人と不死者の激闘が幕を開ける。世界最強のハンター・アクション、登場!

吸血鬼モノと言っても昨今いろいろなジャンルがありますけれど、これは吸血鬼ハンターDの系譜だなあ。或いはトリニティ・ブラッドの系統か。荒廃した近未来的な異世界にて、人類を脅かす吸血鬼との闘争を繰り広げる吸血鬼ハンターの物語。現代の伝奇モノとしての吸血鬼も好きなのだけれど、こっちもやっぱり好きだなあ。
最強のハンターというと、どうしても非人間的な超人を連想してしまうのだけれど、ある意味このノアはそんな超人幻想と対極の存在として描かれているのかもしれない。クールで無愛想で人情を読み取りにくいタイプの主人公か、と最初の登場時の辛辣な姿勢でそんな風に思ったんだけれど、よくよく見ていると愛嬌こそあんまりないんだけれど、性格マメだし一緒に旅することになった元シスターのシルヴィに対しても結構親切であれこれと説明や教授を欠かさないですし、対吸血鬼戦闘シークエンスに入ってもシルヴィ放ったらかしで勝手に作戦進めたりという無責任なこともせずに、結構ちゃんと事前にホウレンソウはやってくれるんですよね。その上で、シルヴィにも仕事を振った上で責任を追わせて、大事な部分を任せてくれる。きっちり気持ちを奮い立たせてくれるわけですよ。同じハンター仲間も蔑ろにせず、マメにコミュニケーション取って協力体制を築いているし、信頼できる相手には信頼を寄せてあれこれ任すを厭わない。最強のハンターというわりに孤高を気取らず、人間関係もあれこれしっかり築いてるんですよね。少なくとも、最初に感じたようなコミュニケーションに難のある人物、どころかむしろ社交性かなり高いよ、この主人公!!
……いや、本作の主人公ってこれノアじゃないですよね。むしろ、彼を追っかけてくっついてくることになったシルヴィの視点で物語が描かれているので、彼女が中心となって物事が進みますし、切り札かつ仕込み担当なノアの方は最後の決戦以外は忙しく仕込みと準備に勤しんでいて、周りの人たちとの人間関係の構築や、困難の克服、獅子奮迅の頑張りや見せ場の確保、人間的な成長なんていう重要なイベントをせっせと来なしているのはシルヴィの方ですからねえ。
そして何より、この娘ってばノアのハンターとしての辣腕っぷりに瞠目して勉強している一方で男女関係のあれこれ、というか個人的な情の交換はあんまりないんですよね。まだまだ追っかけ、学ぶばかりでその内面に踏み込む段階までは辿り着いていないのである。ノアの方もマメにシルヴィにあれこれ教えているので、蔑ろにしているわけでは全然ないのだけれど。
むしろ、ずっとイチャイチャしているのはシルヴィとエルザなんですよね。このツンデレアークエネミーを、元シスターが餌付けしてしまったものだから、シルヴィに対してエルザがずっとツンツンデレデレの繰り返しで、せっせと働くノアを横目に、二人の女の子がキャッキャウフフしてるような感じに見えてしまって、にまにまーでありますよ。シルヴィの絶体絶命のピンチに颯爽と助けに現れるのだって、ノアじゃなくてエルザですし。しかも、ちゃんとシルヴィに見せ場は譲ってあげるという完全見守り態勢ですし。
一方で、肝心なところで大チョンボをかましてノアを鍛える契約を交わさざるを得なくなったという初っ端の時点で凄まじいポンコツ臭を漂わせているエルザさま、シルヴィに対しても偉そうに反り返りながら思いっきりお菓子に釣られて完全に餌付けされてしまっているように、頼もしいポンコツ姫になってるんでシルヴィから見てもノアから見てもこの娘がヒロイン的な立ち位置なんですよねえ……可愛いなあ、もう。
あくまで自分は中立と言うか自分が一番偉いので、人間もアークエネミーにも味方しない、と嘯いているくせに、率先して助けて回ってますしねえ、この姫さんw
一見か弱い女性で性格もお淑やかなシスターのシルヴィが、何気に作中で一番のパワーファイターで鉄拳上等の物理で殴る系というあたりも、ミスマッチ感が絶妙で良かったなあ。戦闘シーンも彼女が一番パワフルでカッコよかったですし。
非常に面白かったので、是非ともシリーズ化してほしい新作でありました。


細音啓作品感想