モンスター娘のお医者さん (ダッシュエックス文庫)

【モンスター娘のお医者さん】 折口良乃/Zトン ダッシュエックス文庫

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医師グレンは魔族と人間が共存する街「リンド・ヴルム」で助手であるラミア族のサーフェとともに診療所を営んでいる。モンスター娘たちから連日さまざまな診察依頼が舞いこみ、その評判は上々だ。あるときは闘技場のケンタウロスの不調を見抜いて求婚されたり、またあるときはマーメイドのエラに手を突っ込んで触診したり、フレッシュゴーレムの体のキワドイ部分を縫合したり…。グレンとしてはただただ真剣に治療にあたっているだけである。そんな日常の中に、突如としてハーピーの卵を狙う賊が現れて…?モンスター娘をこの上なく愛する小説家と絵師が満を持して放つ“モン娘”診察奮闘記!!

これは予想以上に良作だなあ。単に医療だけ、モン娘だけにスポットを当てて描くんじゃなくて、モンスター娘たちが住んでいるこの「リンド・ヴルム」という街について、とても丁寧に描き出してるんですよね。リンド・ヴルムという街がどのような環境で、どのような文化・風俗によって成り立っているのかをじっくり作り上げてるのである。
何も背景が感じられない白紙の土地ではなく、各種の魔族たちが様々な形で日々を送っている生活の呼吸が感じられる背景あってこそ、そこで健康を抉らせる患者たちの問題が浮かび上がってくるというものである。
中でも特筆すべきは、マーメイドの歌い手が患者となる水路街の描写で、これがまた細やかなところまで行き届いてるんですよね。目の裏に鮮やかに浮かび上がる町並みの光景があり、観光街としてのコンセプトや売りとなるポイント、そこで働く人たちのさりげない立ち回り方なんかの描写も細部に描かれていて、思わずホーっとなってしまったところでありました。
僻地医療、とはまた全然違うのでありますけれど、「医者と患者」のみならず「医者とその土地」、「医者とその街」、というところに主眼を置いているのは面白いなあ、と思うと同時に物語としての特徴を引き立たせているように思います。
その上で、人間相手の医療とも、動物相手の獣医的な医療ともちと異なる、人間同様の知性と心がある人間と異なる生態、身体機能を有するモンスター相手の医療、というのをケンタウロス、マーメイド、フレッシュゴーレムにハーピー、そしてラミアという患者たちそれぞれ全く異なる特徴を秘めたモンスター娘たち相手に診察と治療を施していく、これもまた色々と趣向が凝らされていて面白かったですねえ。
メインヒロインのサーフェがラミアということで、臆せず「卵生」という生態。しかも「無精卵」なんかも持ち出してくるあたり、結構グイグイ突っ込みにくいところにもツッコんでいくなあという意欲も感じましたし、読んでて先へ先へと引っ張られる感のある良い作品でした。
個人的には変に戦闘シーンに絡まずとも、落ち着いた環境で治療する展開ばかりでも十分面白かったと思うんですけれど、これは相応の安定したシリーズ化が約束されないとなかなか踏ん切れないか。
あと、別に患者さん年頃の女の子ばかりでなくても、男でもおっさんでもいいんじゃないか、とも思ったんだけれども、これも需要と供給、あとタイトルがはっきりモン娘としてる以上はやっぱり無理なのかw
とりあえず、ラミアみたいな蛇系ヒロインは巻き付き抱擁はデフォなのね、うんうん。