おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん (富士見L文庫)

【おいしいベランダ。 午前1時のお隣ごはん】 竹岡葉月/おかざきおか 富士見L文庫

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進学を機に一人暮らしを始めた大学生の栗坂まもりは、お隣住まいのスーツの似合うイケメンデザイナー亜潟葉二に憧れていた。ある時ひょんな事からまもりは葉二に危機を救ってもらうのだが、それは憧れとはほど遠い、彼の真の姿を知る始まりで…!?
普段着は黒縁眼鏡にジャージ。ベランダは鉢植えとプランターにあふれ、あげくに草をむしって食いながら「会社辞めてきた」って大丈夫このヒト!?ベランダ菜園男子&野菜クッキングで繋がる、園芸ライフラブストーリー、スタート!
料理のハードルの高さって、実のところ「調理」じゃなくて「食材の確保」だったりするんですよね。あるものを調理してなんか作るのって、まあどれだけ美味しくなるかはともかくとして、出来るっちゃ出来るのですよ。ところが、その食材をどうするか、の部分で買い物から冷蔵庫内の管理というのが案外ハードルが高い。まあこれは、一人暮らしと家族で暮らしている人とはまた違う難しさがあるんでしょうけれど。家族が居ると、勝手に買ってきて勝手に作って、というのは簡単じゃないですし。
そんなこんなで、亜潟さんのベランダ菜園をやってる理由。冷蔵庫だと野菜って腐らせちゃうし、一人分だけ買ってくると高いし、何気にベランダで作ってるのが一番楽なんだよ、という話には眼から鱗でありました。
いやいやいや……簡単じゃないよー、そんな簡単にはなかなかできんよー。と思ってしまうんですけれど、案外簡単なんだろうか。自分でやったことがないだけに、こればっかりは何とも言えんのですが。家庭菜園的なことは母がやっていて、ものによってはあまり手間を掛けずにポコポコできまくって、しばらくそればっかり食べさせられたり、とかいうのがあるだけに否定はしきれない。
ともあれ、亜潟さんのそれは生活のためじゃなくてもう完全に趣味ですけどね。どう見てもハマってしまってますけどね。まもりのベランダまで侵食しだしている時点で言い訳できんでしょうに。
というわけで、ひょんなことから時々すれ違うだけの隣人から部屋にお邪魔する関係になった元社畜のデザイナーと新米女子大生。社会人と女子大生って、高校生からすると両方大人に見えるわけだけれど、女子大生ったって実際はただの十代女子。社会人相手だと、幾らデリカシーが若干かけてる私生活もあれなところのある男だろうと、やっぱり大人に見えるし亜潟さん実際中身も大人なんだよなあ。同級生の男の子たちは、あれで相応に大人びていると思うんだけれど、特にあの法学部の子。それでも、まもりからすると「年上」というのは威力が違う、というのが傍から見ててもわかってしまうわけで、むしろ完璧超人ではなくてあの私生活の隙こそが、大人である亜潟さんに対するまもりの「入っていける」入り口なんだろうなあ。まもりが抱いていた幻想の憧れ通りの人なら、きっとお近づきになるのは難しいところだったんでしょう。
それでも、現実としてこれまで見てきた社会の経験値の違い、というのは年頃の少女脱皮未満としては大きく見えるわけで、そこで自力で勇気出したのはやはり偉いですよ。そこは女の強さであり勢いだわなあ。
って、意外とベランダ菜園って物語の要素としては比重大きくないような気がする。いや、亜潟さんの過去や、まもりとの関係を繋ぐ「ご飯」の話の根幹ではあるんだけれど、あくまで物語の材料であってベランダ菜園や園芸という観点で掘り下げる話はあんまりなかったかなあ。フリーマケットなんか、興味深かったですけどね。
しかし、なんというか大人相手に恋愛踏み出すのって、やっぱり最低限大学生にまではならないと「アウト」になっちゃうんですよね。実際問題としても、関係の雰囲気としても。言うまでもない事なのかもしれませんが。


竹岡葉月作品感想