黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

【黒豚姫の神隠し】 カミツキレイニー/Minoru ハヤカワ文庫JA

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沖縄本島の遥か南に位置する宇嘉見島には、人間を拐かす黒豚の悪神ウヮーガナシーの伝説がある。島育ちで映画好きの中学生ヨナは、古臭い慣習も閉鎖的な環境も大嫌い、いつか島から脱け出したいと願っていた。そんな彼のクラスに、東京から転校してきた波多野清子。『オズの魔法使い』をきっかけに接近する二人だが、清子は「私は黒い豚に呪われているの」と告白をする―。離島に棲まう神々と悪童たち、ひと夏の異界譚。
伝奇モノというよりもこれは児童文学寄りのお話だったなあ。子どもたちの冒険譚であるのだけれど……子どもたちのお話って、同時に親の話でもあるんですよね。子は親の鏡というけれど、親ってのはまだまだ子供にゃ計り知れない部分がある。それは悪い方にも良い方にも、ツマラナイ方にも想像を絶する方にも。それでも子供は親の計り知れない部分も含めて見えてるもの見えてないもの全部ひっくるめて把握しようとして、ちょっとずつそれを投影して大きくなっていく。
あくまでも子供たちのお話なんだけれど、ヨナの親にしても清子の母親にしても、なんかこう……凄かった。特に清子の母である。この人、いったいどれほどの苦悩と葛藤を抱えて生きてきたのか、それこそ想像を絶するものがあるんだけれど、それを踏まえての生き様にはもう敬服を抱くしか無いんですよね。清子の回想の断片から伺える彼女の行動だけでもすげえ母親だというのはわかるんだけれど、あとになってわかる彼女の抱えていた真実を思うと、そのすげえ生き方の中に内包していた「想い」の凄まじさには圧倒すらされてしまうんですよね。
その結実は、神をも仰け反らしてしまったのですから。
これをシンプルに「母の愛」なんて一言で片付けてしまうのはあまりにも不遜で、しかし果たしていかなる言葉で表現できようものか……。
いやあもう、なんかあのシーンに意識が全部乗っかってしまって、なんか諸々と吹っ飛んでしまってある意味清子の母ちゃんに全部持ってかれた感じなんですよね。
清子だって、彼女の抱えていた秘密の重さからして、尋常ならざる頑張りをこれまでずっと続けていたわけだし、ヨナは馬鹿丸出しで東京への憧れ方なんて足元ついてないふわふわっぷりで、こいつ考えなしだよなあ、という小僧だったんだけれど、だからこそなりふり構わず清子につきまとい、彼女が焦がれ続けていたものをまるっとあげられたことを思えば、子どもたちもまた大したもので、この子らの純粋で拙くも聡く、不器用な生き方は実に良きものだったんですけれど、神様たちや大人たちの狭い世界の中での身勝手さに負けない強い霊を感じさせるものだったんですけれど、そんな子どもたちだからこそ彼らに注がれただろう家族の愛情の確かさ、強さへの印象が焼き付けられるんですよねえ。

本作は、沖縄諸島の更に南の人口1000人くらいの島を舞台にしているので、これがもう沖縄方言を駆使した非常に沖縄色が強い雰囲気になってるんですけれど……、沖縄本島のそれとはまた全然違うんですよねえ、空気感が。本島と離れた島々とはまた違う文化や特色があるといいますけれど、なるほどなあ、と。
あと、主人公、名前ヨナって外国人風にカッコよく名乗ってるけど、本名米蔵なのな。よねぞうてw

カミツキレイニー作品感想