魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>16 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫<ヴァナディース> 16】 川口士/片桐雛太 MF文庫J

Amazon
Kindle B☆W

ルスラン王子の復活と、国王ヴィクトールの死によって不穏な空気に覆われているジスタート。王子の側近として隠然たる権力を持ち始めたヴァレンティナは自らの野望を果たすため、ついに動きだし、その大鎌をソフィーへと向けた。他方でフィグネリアの双刃がリーザを追い詰めるなど、戦姫同士の対立は決定的なものになる。混沌たる情勢の中で、ティグルは自らの立場を鮮明にし、大切なものたちを守るべく、激しい争いの渦中に身を投じる。争乱の陰では、魔物たちに代わって地上にあの女神を降臨させようとするガヌロンの姿があった…。未曾有の危機のなか、英雄となった若者を待ち受ける運命とは。大ヒットの最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第16弾!
ヴァレンティナさんが行き当たりばったりすぎてたまんねー! しかし、本人それで楽しそうなんですよねえ。あれこれと張り巡らせた策や奸計が上手く行かなくてポシャっても、あんまり気にしてなくてむしろ臨機応変な対応を楽しんでるっぽいのが謀略家として質が悪いんでしょうなあ。いや、深慮遠謀に欠けるっちゃ欠けるんだけれど、精神的に停滞しないしあの拙速さは自身の失敗に限らず状況の変化への対応速度としては大したもんなんですよねえ。何気にこういうタイプの謀士はあんまり見たこと無いなあ。
でも、ヴァレンティナさんのこの性格からして大昔から長期的なスパンで謀略の網を仕掛けていた、とは思えないのでルスラン王子のかつての人事不省が彼女の手によるもの、ということはやっぱりなさそうなんですよねえ。まあ、年齢的にもあり得ないのだけれど。あのタイミングでのルスラン王子の復帰はマッチポンプじゃないか、と疑いたくなるところだったんだけれど。少なくとも、ルスラン王子には傀儡の糸をつけてるのかとおもってたんだけれど……ルスラン王子、普通に優秀で真っ当で結構気持ちのよい人だー!! あかん、この人かなりの逸材だ! ヴァレンティナの紐付きかと思ったら、精神支配とかその手のものも受けてないようだし、亡きイルダー公といい、ユージェン伯といい、ルスラン王子といい、もしかしてジスタートって何事もなく世代交代していたら、ルスラン王の時代は黄金期突入してただろうこれ、と確信できるくらいには逸材揃いだったんだなあ。しかも、ルスラン王子、良い人なんだよー。むしろ、その良い人なところがヴァレンティナに付け込まれているとも言えるのだけれど。でも、ヴァレンティナを重用しすぎず、かなり公正に扱っているのを見ると、普通にやってたらとてもじゃないけれど、ヴァレンティナが権力握れるとは思えないんですよねえ。
ということは、最初からあの地雷を仕込んでいた、というよりも復活自体が時限式にならざるをえないような手段を用いていたわけか。
やっぱりやり口が陰険で好かないなあ、ヴァレンティナのそれは。
それでも、誰が影で暗躍しているかわかっていても、このあとに何が起こるかわかっていてもヴァレンティナの意図したとおりに動くしか無い、という謀略の張り巡らせ方は突貫で仕上げたわりには本当に凄まじいの一言。謀略の粋というのは、何が起こっているのか最初から最後までわからないような代物か、何が起こっているのかこれから何が起こるのか全部わかっていたとしても、どうすることも出来ない状況を仕立てるか、の二極なんですよねえ。ヴァレンティナはそれに近しい辣腕を奮っているわけで、いやもう行き当たりばったりなのに凄いなあ、と。とにかく手が早く、手が多くて、それが見えないし、見えた段階では終わってる。恐らく不発に終わってるものも多々あるんだろうけれど、早さと多さがぜんぶ補ってるんでしょうねえ。一つの案件に複数の意味付けも与えているようですし、ある側面から見ると失敗してても、別の側面から見るとそれでOKみたいな多重構造になってるから、意図を挫くのが非常に難しい。これはどうやったって先手が取れないから後手に回らざるをえない。これを防げば全部の陰謀が瓦解する、というような芯も見当たらないのが本当に質が悪い。
ソフィは情報戦優秀なんだろうけれど、これはイニシアティブ取りようがないよなあ。
むしろ、フラフラと歩き回って要所要所で大事な場面に遭遇して、色々とヴァレンティナの策を潰してまわってるティグルさんが反則だわなあ、あれ。
ヒロインの絶体絶命のピンチに絶対に助けに現れるマンである、この主人公。とはいえ、戦姫の方々はガチで強い人たちなので、どれだけ絶体絶命になってもまず自力で突破してしまえるので、ティグルも軽々には助けに現れないのだけれど、だからこそ本気でマジヤバな時を絶対に見逃さないんですよねえ。エレンが捕まったとき然り、今回のリーザのとき然り。そりゃもう陥落するわさー。とっくに陥落しているとは言え。
しかし、ティグルさん、どんどんアーチャーとして化物になってくなあ。フィグネリアさん、がちで魂消てたじゃないですか。まああれ、人間業じゃねえし。ってか、弓矢でやれる技じゃねえ。あんなんやられたら普通死ぬw
ってか、四百メートルまで当てられるようになってたのかー。四百ってパねえっすよ。実際遮蔽物ない広い場所で四百メートルという距離を見てみなさいな。ちょっと笑っちゃうほど遠いよ!?

戦姫たちとのロマンスの方は、ミラがついに勇気を振り絞って告白したことで、ソフィが有頂天にw
このお姉さん、マジでティグルを正々堂々と戦姫たちの旦那にするつもりだ。ってか、政治的に誰にも文句言わせねえ形を整えようとしている。怖い。
でも、政略として言い訳させず、ミラにちゃんと女の子としてティグルと気持ちを通じ合わせるのをずっと待っててくれたとか、配慮が行き届いてるんですよねえ。逆に言うと、女性陣にもティグルにも建前とか政治的に仕方ない、とか言い訳絶対許さん、という恐ろしい配慮なのですけれどw
やっとこ、エレンとリーザが本当に和解……、というかついにリーザが過去にエレンに出会っていたことを告白して、リーザがエレンに憧れ焦がれていたことも伝わって、わだかまりも解けて良い仲なったし、五人の戦姫の間にはもう問題なくなったんですよねえ。ティッタとオルガがなんかちびっ子コンビで仲良くなってるし。
あとはリムですなあ。はじめて戦姫以外で、しかもこのクライマックスで表紙絵を飾るという抜擢となりましたし、エレンはもうリムも嫁にする気満々だし、本人すげえまんざらじゃなさそうだし、まあどこにも問題ありませんな。
問題は、あとシリーズ一冊で完結するのか、というところくらいか。いやね、あと三冊くらい使ってもいいんですよ?

シリーズ感想