絶対城先輩の妖怪学講座 九 (メディアワークス文庫)

【絶対城先輩の妖怪学講座 九】 峰守ひろかず/水口十 メディアワークス文庫

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絶対城を頼り四十四番資料室を訪れた、「狐憑き」に悩む女子学生、葛木葉子。こっくりさんの儀式でお祓いを行う絶対城に対し、葛木は「笑わせないでよね!」と言い放ち、真怪秘録覚書『狐』の資料と共に姿を消してしまう。突然の事態に動揺する一同。しかし、何故か礼音は葉子の声に聞き覚えがあった。声を頼りにして、お祓いと同じ日に礼音が巻き込まれた事件を調べ始めると、海辺のリゾートホテルで開催されるマジックショーに辿り付く。そこで待ち受けていたのは―。
おう、絶対城先輩がこれだけ見事にしてやられたのって初めてじゃないだろうか。クラウス教授にも散々っぱら誂われたけどもうちょい予防線は張れたと思うし。
しかし、ヤラレっぱなしでは済まさないのが絶対城先輩である。やられたらやり返す、と安易じゃないところも絶対城先輩である。相手の土俵で勝負するにはまず相手の土俵って何なのよ、というところから地道に調べ始めるあたりが、フィールドワーク主体、調査主体の妖怪学の徒なんですよねえ。奇術師のフィールドに、ちゃんと妖怪学で勝負しに行ってるのだから面白い。あくまで自分は妖怪学士であるという自負と挟持がなす業なんだけれど、だからといって違うルールで殴り掛かるのではなく、あくまで相手の土俵で挑むあたりは意地っ張りではあるんですよねえ。
まあ、普段から詐欺師紛いのネタを仕込んだだまくらかしをやってるもんだから、似た者同士なのかもしれないけれど、だからこそ余計にしてやられたのが悔しかったんだろうなあ。
しかし、それで感情任せに振る舞わずに礼を失わないのがこの先輩のカッコイイところなんですよねえ。傍若無人に見えてその実、この人礼儀正しさや他者への敬意は事欠かないですからねえ。礼音に対してあれだけぞんざいなのは、まあ甘えであるし肝心な場面になるとすげえ気を使いまくってるしなあ。肝心の礼音には残念ながらあんまり伝わっていないのだけれど、一番根幹の大事にしているという部分についてはちゃんと伝わっているのであんまり問題ないのだけれど。
そう、問題ないことが問題だったんですよね。今の関係で上手く行っちゃってたもんだから、両者ともに踏み込むに踏み込めなかった、とも言えるわけで。お互い、自分の評価というか、相手からどう思われているかについては全く自信持ててなかったですからねえ。傍から見るともうあからさまに好きすぎでしょう、という反応してるのに、肝心の相手がそれにさっぱり気づいていないという鈍感カップルでしたからねえ。さすがに、織口先生も杵松さんも黙って見ていられなくなって、よちよち歩きの幼児の手を引っ張ってあげるような感覚で誘導してくれましたけれど、よっぽど焦れったかったんだろうなあと微苦笑が浮かんできてしまいました。だって、二人ともいちいちそういうお節介するようなタイプじゃないんだもの。その二人が背中押しに来るまでに我慢できなくなったんだから、よっぽどだったんだなあと。

さて、今回の主題は『狐』。妖怪譚としては定番かつ大物でありながら、実在の動物でもあり、また伝承にある狐の話はどれも実際の病気や自然現象などで説明できるものも多く、ネタの豊富さのわりに今回は当初は絶対城先輩も乗り気じゃない感じであんまりテンションあがってなかったんですけれど、本物の「狐」の登場によって、というか見事に狐に騙されたことで俄然やる気を漲らせてたわけですが。
これまでのシリーズだと、その正体は古代の巨大生物だった! みたいな突拍子もないネタが待ってたりしたんだけれど、狐に関しては狐なんだから真怪としての超生物は存在しないんだろうなあ、と思ったら思わぬどんでん返しが。
いやいやいや、うん。クラウス教授の蝉に比べると愛嬌もあってもうマスコットでいいんじゃないか、と思うくらいの代物だったんで良いんですけれど、良いんですけれど。やっぱり狐はイメージ通りの「狐」がいいなあ。

んでもって、ラストでは随分と不穏な展開になってたんですが、幾らなんでも狐舐めすぎてないですかね、それって。あれだけの海千山千がそうそう簡単に脱落するとは思えないのだけれど。
あと、例の人物、身近の誰かって話みたいだけれど普通に考えたらあの人以外考えられないんだが、いやそれにしても、今まで怪しい素振り見られなかったんだが。まあ存在自体当初からずっと微妙に胡散臭い人ではあったけれど。なかなか謎が深まってきた。

にしても、絶対城先輩と一緒でなくても、目を離すと一人で勝手に詐欺師集団と激闘を繰り広げてたりする礼音さん、根っからのヒーローだなあw

シリーズ感想