家電彼氏 (ビーズログ文庫アリス)

【家電彼氏】 雪乃下ナチ/釜田みさと ビーズログ文庫アリス

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大学入学を機に、一人暮らしを始めた塔子。家具や家電を揃えて、ほんの少し寂しさも感じつつ。だが、そんな感傷を吹き飛ばしたのは―やたらと怒鳴りつけてくる体重計!?しかも続々と、テレビやブルーレイ、電子レンジ、スマホに掃除機まで喋りだして…これ、音声機能とかそういうのじゃない!!電器屋さんは「最近の家電は進化してるんです」って言うけれど、うちの家電たち、喋りすぎですっ!!!!
【となりの魔王】の雪乃下ナチさんの新作は乙女ゲームさながらに沢山の彼氏に囲まれて暮らす女子大生の日常生活モノ。ってか、彼氏つーても家電系彼氏じゃありません、家電そのものです。そもそも彼氏じゃないよねえ。当の家電たちの幾台かは彼氏のつもりで自惚れてるみたいだけれど、塔子は全然そのつもりもなさそうですし。ってか、家電だしなあ。
本では家電それぞれに男の子のイラストがついてますけれど、あくまでイメージであって実際は実体化したり人間化したり人間の姿が投影されたり、ということは一切ありません。徹頭徹尾家電のままです、喋るけど。うるさいくらい喋るけど。
何気にさっさとこの環境に適応してしまった塔子が凄すぎる。とまあ、【となりの魔王】でもあれだけ隣に魔王が引っ越してきてパニクってた主人公、ほぼ一瞬で馴染んでたけれど。
適応力が高いというよりもこれは細かい所を気にしないおおらかさ、と言ってしまうと褒め言葉になってしまうので、面倒くさいことはすぐに気にしなくなる鈍さなんじゃなかろうか。大学生活で友達が出来たときや男の人から粉かけられたときも、わたわたとはしゃいでいる割に状況をほったらかしにしたままなし崩しだったしなあ。高校の時の彼氏の話なんか、自然消滅系の逸話にしてもなかなかに酷すぎるw そんでもって、塔子って自分が受動系すごることを自覚してへこんでも、すぐにまあいいかで気にしなくなってるし……色々酷すぎるぞ。
いきなり家電たちがやたらと喋りかけてくるようになっても、最初は驚いてもそのうち気にしなくなるし。いや、原因とか気にしないのかよ。最初こそメーカーにヘルプ求めても、そのうちまあいいかで放置して生活に順応しちゃってるしなあ。いやいや、あの家電が喋るという異常事態を受け入れるのはともかくとして、この家電たちみんな性格に難ありすぎて、一緒に生活するのかなりキツイ難しかったり面倒くさかったり鬱陶しかったりする連中ばかりなのに、平然とあしらっているこの女子大生が凄すぎるw
ある程度まともなのって、外を知ってるスマホだけだもんなあ。体重計なんて、鬱陶しすぎて普通踏み潰したくなりそうなものなんだけれど。あんな偉そうなくせにやたら彼氏ヅラするやつって、殴りたくなりません?w
いや、体重計相手に憤ってもしゃあないのだけれど。それをはいはいで流している塔子が大人物、じゃなくてやっぱり鈍いんだよw あと、掃除機のツンデレっぷり。女の子のツンデレは可愛いけれど、イイ年下男のツンデレ(病み気味)はガチでうざい! いや、良い年下男って掃除機なんだけれど。充電式紙パック掃除機なんだけれど!
家電彼氏たち、一応人格は男なんだけれど見てくれだけじゃなくて中身もちゃんと家電であって人間じゃないんですよね。会話の内容が家電! 何言ってるか自分でもわかんなくなってきたけれど、あくまで家電的価値観で物を喋ってるので、人間の男の子相手のようにはどうやってもときめけないんですよね。まあ、塔子がそもそもときめくような女子かというとかなり深刻に疑問なのですが。人間の男相手には、ちょっと声掛けられたくらいで調子乗るくらいだからチョロいのかもしらんけれど、まあ駄系だからなあこの女子も。
家電的価値観ってなんだ、って話なんですけれど。なので、あくまでラブコメじゃなくて日常コメディだわなあ、
これ。あの深刻な人間と家電の価値観ギャップと、キレキレの塔子のツッコミが炸裂する日常コメディなのである。
相変わらず作者の描く主人公の女の子のツッコミの切れ味はキレキレもいいところで、ほんとツッコミの内容にしても言葉選びのセンスがめっちゃ面白いんですよねえ。
とりあえず、この娘は彼氏できんだろうなあ、というのはひしひしと伝わってくるものの哀れ。でも、一人暮らしにもかかわらず、姦しいくらいの賑やかさを満喫しているようなので、これはこれでいいんでしょう。いやあでも、これだけ無神経にうるさいと鬱陶しいと思うがなあ。実際、デスマ状態に陥った時はプッチンキレちゃったわけですし。手に負えないにしろ、塔子はもうちょっと頑張って家電調教した方がいいんじゃなかろうか。……あの家電連中じゃあナシのつぶてかぁ。


雪乃下ナチ作品感想