終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか?#03 (角川スニーカー文庫)

【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 3】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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「だからね、わたし、やっと決めたよ。──きみの、邪魔をしてやる」

あれから10日が経った。妖精の存在と特性についてはまだ極秘事項のままで、〈重く留まる十一番目の獣〉(クロワイヤンス)を仕留めたのは、フェオドール四位武官が極秘で預かっていた、最新の試作爆弾であるとされた。
常識を超えた強さで魔力(ヴェネノム)を熾した黄金妖精(レプラカーン)ラキシュはいまだ目覚めず、リンゴはもういない。
――フェオドールは結論した。
きっともう始めてしまうべきなのだろう。世界に敵対する、最初で最後の戦いを。
急転直下! 新シリーズ第3弾。
「おとうさん」はだからダメだって。威力強すぎる。オーバーキルだよ。
ある意味、その言葉を聞いただけで色んな人が心をずたずたにされる。読んでるこっちも、言われた人も、言った子も。
しかし、ラキシュはもう手遅れなのか。正直、彼女に関してはまだリカバー出来る段階で押しとどめた、と思っていただけに地味にショックで。アイセアの説明からすると、クトリが陥っていた最終段階に近い状態なのかしら。クトリの場合は奇跡的に何とかバランス取れていたのだけれど、結局踏み切っちゃったからなあ。
ラキシュはラキシュでこれ、もうどうにもならない状態にさらに進行しちゃったわけだし。なまじ動いて喋って考えて、ちゃんと一つの人格となっちゃってるっぽいのが余計に別人感が出てて、それがもうフェオドールの背中をグイグイ押し込んでいくんですよね。
ぶっちゃけ、フェオドールは一人ではとても彼自身の野望を実行に移すことなんてなんだかんだとできなかったんじゃないか、と思っているんだけれど、ラキシュとリンゴの結末がどうしようもなく彼を覗き込んでいた深淵へと突き飛ばしてしまったわけだ。
それにしても、焦りすぎだったと思うけどね。フェオドールにしてはあまりに行動にしても判断にしても拙速がすぎて慎重さに欠けていた。この嘘の下手な嘘つきのことは理解している人はもう見ればわかるほどにわかりやすいだけに、もろに態度に出てたものねえ。それがラキシュとリンゴの件に関してのショックだと受け止められている間は良かったけれど……何気にこの護翼軍の一位武官たちはみんな将官として優秀なだけでなく人間的にも深みがある「人物」ばかりですなあ。この人たちはみんな道を指し示してくれている。理解し肯定し導いて、しかし過てば抜かりなく容赦しない。こういう人らでないと妖精兵なんて扱えないのかもしれませんが、こういう人たち、妖精兵をまともに扱う人たちだからこそ、どれほど辛さを抱えているか。そういう立場だからこそ、フェオドールを後継にと真剣に考えていたのかもしれません。まさに、彼ら一位武官たちの在り方はフェオドールのそれと変わらぬものでしたから。しかし、フェオドールの正しさの発露は彼らとはどうしようもなく違っていたわけだ。それはもしかしたら、じわりじわりと修正されて同じところに落ち着く未来もあったのかもしれないけれど、フェオドールは踏み越えてしまった。
でも、そこであらすじにもあるティアットのセリフが効いてくるんだなあ。ラキシュ相手にフェオドールが似たようなこと言ってたけれど、この子たちってもう少し素直に……というのも違うか、彼らは本心からそう思って言ってるわけだし。この邪魔してやるって、単なる否定じゃないんですよね。相手のこうありたいという意思を認めた上で、しかし自分はそういう考え方嫌なんで立ちふさがる、という構えなんですよね。それって素直じゃないというよりもむしろ健気の領域なんじゃないだろうか。
でも、ティアット。アイセアにクトリに良く似てきたと言われちゃったけれど、振り切るところまで似ちゃわないようにしてくれよ。ぶっちゃけ、ティアットの側も心配なんだけれど、そこに芽生えつつある恋心、クトリみたいに決め込まれてしまったときその対象であるフェオドールが持たないから。この点に関してヴィレムはほんと超人だと思う。あの男はあり得ないほど受け止めきってたもんなあ。クトリだけじゃなくて、その他もろもろあり得ない規模と深度と年月で。
で、フェオドールが見つけてしまった件の「死せる黒瑪瑙」って間違いなくアレなんですよね。まさかここで出て来るのかー。いつ蓋が開けられるかドキドキしていたのだけれど、まだそう簡単には行かないか。
正直、早く出てこないとそろそろナイアグラードがいい加減限界振り切りそうなんですけど。

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