ナベリウス封印美術館の蒐集士<コレクター> (GAノベル)

【ナベリウス封印美術館の蒐集士<コレクター>】 手島史詞/一色 GAノベル

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「関わった者は破滅します。例外なくです。あれはそういったものなのです」
―アーティファクト―それは超常の力を秘め、様々な異能を発動する「魔術師が作った美術品」。この危険な美術品を専門に展示するという『ナベリウス封印美術館』。導かれるようにこの館の蒐集士となった青年ヴォルフと少女ジブリルは、アーティファクトを回収するため、不思議な騒動や怪事件に挑んでゆく。「天使を閉じ込めた鳥篭」「生者を虜にする棺」「観る者を溺死させる絵画」「死者を操る仮面」「殺人鬼の妖刀」「茨の棘」様々なアーティファクトが二人を待ちうける―。
あれ? そこまで例外なく破滅しているわけでもなさそうだけれど。一応、アーティファクトが途中で回収されなかったら破滅していた可能性はあるかもしれないけれど、どちらかというと所有者を唆したり勝手に起動させたり、と暗躍している輩が居ただけに、道具にそうした魔性の魅力があるとか呪われている、という感じはあんまりしなかったかなあ。あくまで道具は道具であって、使う人次第なんじゃないか、と。まあ実際は使用すればするほど進行する呪いがあったりするわけなんだけれど、ジブリルのようにアーティファクトを魔術師の最後の魂の作品という扱いで壊してほしくない、と思っている子もいるだけに尚更に道具が悪い、という感じでもないんですよねえ。あと、それほどアーティファクト自体にインパクトというか印象が残らなかったからかも。あくまでそれを使ったり巻き込まれたりする人間の方が主体で、この手の道具や本を回収して回る作品にしては道具の方が添え物なんですよねえ。というか、殆どヴォルフとジブリルの二人の話であって、使用者たちもあんまり印象残ってないなあ。
しかし、ジブリルが受けてる道具の呪いがかなりヒドイんですけれど。他人から姿は見えず声は聞こえず存在は認識されず、ジブリルの方から人や物に触る事ができない、という幽霊状態。そのくせ、壁やドアを透過したりは出来ないし、勿論幽霊みたいにふわふわと飛ぶことも出来ない。挙句に意図的でない接触ならぶつかってこられると衝突してしまうし、刃物なんかでも刺さってしまう、という一方的にリスクばっかり高いという状態で……これ、普通に外出歩いてたら事故で死ぬんじゃないだろうか。現代のような乗用車が行き交う時代じゃないにしても、誰にも認識されないのに無意識の接触はあるって向こうからどんどんぶつかってくるし、下手に転んだら容赦なく踏みつけられるし、部屋に閉じ込められたら鍵が閉まっていなくても出られなくなってしまうわけだし。
よくヴォルフと出会うまで生きてたなあ、というレベルの危険な有様である。まあ彼と会うまではあの特殊な包帯を使ってたわけだけれど、包帯だけ巻いてとかどんなエロエロな格好で外出歩いてたんだろうw
物語の構成はヴォルフとジブリルが二人でアーティファクトを回収しに行く話を先に持ってきて、そこからジブリルとの出会いの話。さらに遡ってヴォルフがこの封印美術館で働くことになった復讐譚の始まりの話。そして、それらの因果が集約された最終話。
概ねこの物語自体がヴォルフの復讐譚であることからも、やはり悲劇の始まりであるヴォルフの過去話が一番気合入ってる。もっとも大切な存在を奪われることになったヴォルフだけれど、幸いなのは彼にはまだ最愛の妹や両親に最高の親友が残っていた、というところか。すべてを奪われた悪鬼羅刹、となるには心残る相手がまだ居てくれたわけで、だからこそ彼の中にジブリルという存在が滑り込む余地があったと言えるのではないだろうか。
その意味では最終話は象徴的で、すべての事件の黒幕となる人物がついに表舞台に出る話ではあるんだけれど、同時にヴォルフが過去の呪縛から解き放たれる、というか自力で停滞から踏み出す話なんですよねえ。ジブリルという少女の存在が要となっているとはいえ、自分でちゃんと彼女の大切さを認めて、彼女に背中を押されたり導かれたり促されたりというわけではなく、ちゃんと自分で復讐の念にケリをつけてみせたあたりは非常に立派だと思うし、彼女を迎えにいけたのは偉いと思うのである。
館長代理はすごい慈愛の人でヴォルフに対しても手厚く手配りしてるけれど、決して子供扱いしているのではなく、ちゃんと青年として扱ってるんですよね。まあ、どれだけ成長しても息子は息子、みたいな感覚みたいな年長者の包容力をひしひしと感じさせてくれる態度ですけれど。幼女にもかかわらず。

ところで、やはりあの親友は童女趣味疑惑を超えて妹さんと結ばれてしまうのだろうか。ヴォルフ的にはOKっぽいがw
手島史詞作品感想