EXMOD: 思春期ノ能力者 (ガガガ文庫)

【EXMOD: 思春期ノ能力者】 神野オキナ/こぞう ガガガ文庫

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高校一年生の真之斗は、ある朝、姉弟同然に育ってきた双子の姉妹・世衣と亜世砂とともに凄惨な電車事故に巻き込まれた―。三か月後、補助器具なしでは歩けなかった亜世砂は脚力を、姉の世衣は失われていた絶対音感を取り戻す。人間が持ち得る能力の限界を遙かに超えたものとして。同じころ、北海道・国道337号線で、原因不明の大事故が発生。そこには真之斗たちの事故現場でも目撃された「白いコートの少年」の姿があった…。超能力に目覚めた少年少女たちの戸惑いと葛藤、そして戦いを描く青春SF長編!

おお、これはちょっと構成が今までのものと趣が違うのかもしれないなあ。
これまで作者が描いてきたものもそうなんだけれど、異能に目覚める少年少女を描く時、そのきっかけとなる事故や事件の発生から、異能が目覚めてそれにまつわる事件に関わり始めるまでの過程というのは案外とんとん拍子で進むんですよね。というのも、物語の主体というのが異能バトルであると同時に、目覚めた異能の扱いに悩み苦しむ、或いは暴走する少年少女たちの苦悩であり、人と異なる存在になった事に対するトラブルや問題であるのが多くあるパターンだからだ。
しかし、本作はその物語の主体をそちらではなく、もう少し引き戻して事故によってこれまで歩んできた道を閉ざされ、前途を塞がれてしまった時の戸惑いと苦しみへとベースを置いてるように見えるんですね。そこに、家庭の事情からただの幼なじみよりもディープな関係になってしまっている双子の姉妹と少年との特殊な関係を絡めることで、高校生になって徐々に変わり始めていた三人の関係が、事故によって突然変わってしまった状況による変化、という波によって改めて再構成されていく過程を、思春期という繊細な時期にある子供たちの心の有り様という化学変化もツッコんで、丁寧に描いているのが本作なんですよねえ。
タイトルにわざわざ「思春期ノ能力者」という言葉を入れたのも大いに納得。
輝かしい未来を失った双子の姉妹が、英雄的な行為で自分を救ってくれた上で自分たちよりも大怪我を負ってしまった幼なじみの少年への傾倒を深めていく、この少女たちの薄っすらと巻き付いた絶望という陰の気配が、事故をきっかけに自信のなさを払拭して毅然とした姿勢を見せるようになった少年へと徐々にすがりついていくような、危うくも妖しい関係の深化は見てみてもなんかハラハラさせるものだったのですが、そこにEXMODという超常的な存在による連続発生する大事故という外からの要素が徐々に彼らに忍び寄っていく、という不穏さも相まって、バタバタと転がらずにじっくりと腰を据えて見ていられる作品として成立したような気がします。
むしろ、もっと非日常へと放り込まれるまでの、あの前に進みにくくなってしまった停滞した日常の描写を堪能したかった気もしますが。だって、あのまま行くともっと感情がドロドロしたアンモラルな雰囲気が醸成されていきそうな感じでしたし。
ある意味、暴走するEXMODという存在の出現が、メイン三人の覚醒とともにドロッとしたものを拭い去ってしまった気がして、若干もったいなかった感もありますし。
一応、この一巻で完結してもいいような作りで終わってましたけれど、このままだと亜世砂の方がヤバイ感じもするんですよねえ。というか、ここで終われば「切ない」想いが残る物語として終われるのかもしれないですけれど、続いてしまうと三人共がもっと生々しい感情と直面して向き合わなくてはならなくなるんじゃないだろうか、と心配……じゃなくて、むしろもっとそれを見たいような。

しかし、あの鮫のような笑顔の室長といい、結局名前の出なかった「彼」の担当医師といい、大人がきっちり……という以上に責任を果たそうとしている姿が良かったなあ。特にお医者さんの方はあれ、もう職掌や責務を遥かに超える段階に入っていると思うのだけれど、命がけで医師としての責任を果たそうとする姿には何とも言えない思いをいだきました。頑張りすぎですよぉ、先生。

神野オキナ作品感想