ロクでなし魔術講師と禁忌教典7 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)7】 羊太郎/三嶋くろね 富士見ファンタジア文庫

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「久しぶりね、グレン。会えて嬉しいわ」「はっ…俺はテメェにだけは会いたくなかったがな…ッ!」
迫る『社交舞踏会』に学院が沸く中、グレンの前に因縁浅からぬかつての上司―宮廷魔導士団特務分室の室長、イヴ=イグナイトが現れる。『社交舞踏会』に乗じた天の智慧研究会による『ルミア暗殺計画』を聞かされたグレンは、舞踏会を中止しようとするのだが…。イヴは逆にルミアを餌にした非道な作戦を提案してきて―。ルミア護衛のため、グレンは半強制的にダンス・コンペでルミアのパートナーとして優勝を目指すことに!特務分室VS天の智慧研究会、最後に微笑むのは―。

うへえ……いや、新登場のヒロインがこんなやたらヘイト高いキャラで大丈夫なんだろうか。どうせ、あとで好感度の低さは挽回してくるんだろうけれど、元値がこれだけマイナスだとそう簡単にはあがるもんもあがらんですよ。
それに、幾ら強キャラで能力は高いと言っても、今回の一連のやらかし具合を見せられるとポンコツとかじゃなくて純粋に「無能」が極まってるんですよね。ちょっと目が当てられないレベルで。
部下からも好かれてないし、上に対してもかなり強引な振る舞いや脅しまがいのことをしているようなので、敵ばっかり作ってるようにしか見えず、利益目当ての味方ですら集めてないんじゃないだろうか。信用的にも信頼的にも損得的にも権力的にも政治的にも、えらい叩き潰されやすそうな孤立状態にしか見えない。普通、嫌われ者なら嫌われ者らしくきっちり身の安全をはかる保身能力については高いはずなんだけれど、この娘の脇の甘さみると、その手のことちゃんと考えてるような節見えないし。
配下の身からするといつ利用されて使い捨てられるかわかったもんじゃないから、後ろから銃弾飛ばすことは常に頭よぎるだろうし、もし自分が女王陛下だったら有能だろうとこんな危ない制御できない駒は何としてでも潰すだろうなあ。

ともあれ、相手が用意した暗殺の舞台にわざわざ乗っかって、同じ土俵で勝負して手柄をたてようという元上司のわけのわからん策に無理やり噛まされ、可愛い生徒たちを人質に取られて守る羽目になったグレン。
今回ばかりは同情を禁じえなかったです。敵と戦う前に味方であるはずの上司に雁字搦めに縛られた挙句に邪魔され続けたようなもんですもんねえ。イヴさん、見事なくらい最初から最後まで役立たずでしたし。まったく挽回の機会ないまま終わったし。失敗しまくったけれど、最後にちょっと活躍して取り戻した、という程度のこともできなかったし……。
一方で、ガンガンと才能を開花させていっているのが白猫ことシスティーナの方で、覚悟も能力も未熟という以前に、どれほど優秀であっても一般人の女の子に過ぎなくて、本物の実戦や死の恐怖に怯えて泣いて勇気も奮えない臆病な子が、それでも挫けずに努力を続け、なけなしの勇気をかき集めていつしか心の芯に剣を宿し、弱さを克服していた様子は、ただ能力的に優れているだけのイヴと対象的なんですよね。
彼女を未熟と断じながら、もしかしたらグレンよりもシスティーナを評価しているのかもしれないアルベルトの言葉が今回は非常にしびれました。
「信頼に対する真の応えとは、責任という重圧に耐えて、行動を起こす事だ。己の為すべき事を見据え、逃げず、それに立ち向かうことだ」

自分に投げかけられたこの言葉を噛み締めて、受け止めて、胸に宿して体現しようとするシスティーナ。成長の物語としては、本作において彼女こそが主役なんだよなあ。
でも、最近なんとなくシスティーナはアルベルトとの絡みの方が重たくなってきている節があるんですよね。一方で、ルミアの方は天の智慧研究会の陰謀の核心を担うキーキャラクターとして、物語の謎を一身に背負う存在として、そして悲劇と悲恋を抱えるヒロインとして、メインヒロインの潮流に乗った感もあり、あれ? マジでルミアの方がメインヒロインとしての比重を増してきた? って感じなんですよね。
ルミアの健気さって、むしろ身を引こうとすればするほどスポットがあたる属性みたいなもんですし、やっぱり華があるんだよなあ。

シリーズ感想