我が驍勇にふるえよ天地4 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

【我が驍勇にふるえよ天地 4 ~アレクシス帝国興隆記~】 あわむら赤光/卵の黄身 GA文庫

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ベルエンス平原にて宿敵アドモフ帝国の軍勢を退けたレオナート達。だが、恐るべき智将レイヴァーンの悪魔的な計略は、彼らに少なからぬ代償を支払わせた。時はクロード暦二一二年。新年の風はレオナートの城下へと新たなる傑物を運ぶ。吸血皇子の“伝説伝承”に魅せられた頼もしき仲間を得て、機は遂に熟す―約束の故郷・アレクシス州リント奪還作戦、始動!「―征くぞ」言葉は要らない。恐れよ、我らは取り戻す―。魔法がなくても胸が躍る!痛快にして本格なるファンタジー戦記、権謀術数飛び交う怒濤の第4弾!!
綺羅星の如く集まる将星たち。戦記ものかくあれど、ここまで自陣のメンツを豪華絢爛に揃えるケースは珍しいなあ。銀英伝の帝国陣営とか、アルスラーン戦記の十二翼将かという勢いである。
レオナート軍の中でも将帥としては最上級だったエイナム卿があんな形で脱落してしまったのでどうなるかと思ってたけれど、アランが本隊を預けられるほどの良将に成長しましたからねえ。レオナートを除くと大軍を率いる統率力の持ち主は今のところ彼だけだからなあ。いやでも、その割に敗戦率や損害率けっこう高い気がしますけれど、アラ公。
直接戦う人材もさることながら、後方支援体制の方もしっかりしてるんですよね。このあたりは、ロザリアに薫陶を受けたメイドさんたちが、内閣官房よろしく官僚組織として非常に強固に組織と人材を形成してるんですよね。それが、レオナートの領地の政経を安定、以上のメキメキ経済成長する発展地域に仕立ててる。レオナート自身は武辺寄りで決して内政に関して得手ではないんだろうけれど、彼自身勉強を欠かさないし彼の考えや手が及ばないところも、官僚組織が機能し、レオナートがそれに積極的に承認を与えているために、レオナート個人の能力を上回ったところで、領地が回ってるんだろうなあ、これ。
もうロザリアの人材育成の賜物なんだけれど、メイドさんたちのみならずレオナートはこのロザリアの遺産を、リント奪還作戦含めてとても良く運用してるのが見て取れる。
にしても、ここからさらに軍師枠を増やすとは思わなかったけれど。しかも、またロザリア塾の門弟である。シェーラがロザリア門下の中で「一・二位を争う」軍略家、と唯一無二扱いでなかったのはこのためだったんか。いや、キャラ紹介を見た時咄嗟に新たな敵キャラか、と思ってしまったほどにドギツい彼女。なるほどなるほど、シェーラが諸葛亮だとすると、彼女ジュカは龐統ってところなのか。キャラの極悪っぷりからして法正っぽくもあるけれど。
たった一人の神算鬼謀で、アドモス帝国はレイヴァーン自慢の若手幕僚たちの作戦を尽く潰してみせるジュカ。いや、潰すというよりも彼女の場合、対処療法じゃなくて完全に自分の思惑通りに相手を誘導する、選択肢を対策を打っている範疇でしか与えない、というすべては手のひらの上というやり口なので、これは敵からしたら敵わんよなあ。だからこそ、予想外の一手には脆かったわけなんだけれど、個人的にはレイヴァーンのあの逆転劇にはあんまり納得できなかったり。そんな都合よく毒なんか仕込めないよー。全軍に行き渡るような量の、しかも川に流して薄まらない濃度のものを軍勢が向かい合うタイミングで効果を発揮するように調薬して、しかも相手に気づかれないように無色透明無臭無味のものを準備して、相手が飲料水として汲むタイミングで流す、って言うほど簡単じゃないよ。
歴史上において、経口摂取した毒によって軍勢が戦闘不能に陥って敗走した、なんて合戦の例あるんですかね。病が流行って、というのはよく聞くけれど、往々にしてそういうのは長期の対陣による環境の悪化に寄って蔓延るものだし、こんな毒の一撃によって、というケースは寡聞にして知らないなあ。
レイヴァーンやロザリアの言い分は凄くよく分かるんだけれど、盤上をひっくり返す一手というのはもっと政治的・戦略的な一撃であってほしかった。これだと、軍略においてジュカがシェーラに総合的に敵わない、というロザリアの評価が妥当なのかよーわからんし。シェーラなら、戦争芸術とはかけ離れた汚い手もちゃんと考慮する、ということなんだろうけれど。
結果として凄まじい大敗になってしまったんだけれど、これで幹部クラスの人的被害が出てしまうんだろうか。ほとんど潰走に近い形になってしまったようなので、かなりヤバイっちゃヤバイのだけれどこんな戦いで人材を失うのもちょっと納得行き難いなあ。まあそういう理不尽も戦記の妙味としてありっちゃありなのですけれど。
ところで、女っ気のないアランくんですけれど、何気に今回登場したジュカがそのお相手候補なのか、と穿っていたのですが、あんまりそんな雰囲気なかったですなあ。違うのかなあ。アランくんなら、わりとあの手の悪口雑言系女子にも適正ありそうなんだが。
一方でレオナートは長駆、リントをダイレクトアタックすることに。本来なら兵站の問題とかもあるのでしょうけれどそう言えばレオナートって、リント近郊に既に多くの開拓兵を仕込んで隠し村みたいなのを多数作ってたんだっけ。ある意味それが兵站基地としても機能するから、補給は問題ないのか。
今までかち合わなかったレイヴァーンとイグナートが、お互いの戦場で勝利したことでついに直接相まみえる。今後も、レイヴァーンが好敵手として立ちふさがり続けるかの試金石、でもあるんだろうなあ、次巻。
しかしシェーラさん、そろそろいい加減陥落させないと、横から王子様掻っ攫われますよ。今回けっこう危なかったですし。わりと現状のイチャイチャで満足しちゃってるっぽいけれど、もうちょっと危機感持たないとw

シリーズ感想