悪逆騎士団 そのエルフ、凶暴につき (電撃文庫)

【悪逆騎士団 そのエルフ、凶暴につき】 水瀬葉月/ももこ 電撃文庫

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代々の紋章王が統治するゼルティバッソ紋章国の東端、ニルイースト。そこは脛に傷持つ犯罪者たちや、一攫千金を夢見る荒くれ者たちが集い、暴力と欲望が支配する街。そんな蛮都の風紀を守るべき王国直下の常駐治安騎士団だったが、しかし彼らこそが一番危険で邪悪な存在であった。―人呼んで、悪逆騎士団。誰もが目を奪われる美貌と、誰もが畏れる暴威を振りまく女エルフの団長アリシア。彼女に捕らわれて、新たな団員として暮らすことになった元暗殺者の少年コルナルド。そして拷問騎士、淫蕩騎士、醜悪騎士という出鱈目な団員たちによって繰り広げられる狂乱の事件とは―。「まったく私達はとんでもない悪党だな」悪によって悪を裁く、退廃のダークファンタジー登場!
それ悪なれど邪まにあらず、か。いや、でも邪悪とかあらすじに書かれちゃってるからなあ。邪悪じゃあないと思いますよ、邪悪じゃあ。
ファンタジー界のロアナプラというべき悪徳都市ニルイースト。ファンタジー世界というと、この手の退廃と欲望によって支配された都市というのが登場するものだけれど、往々にしてその手の都市というのは既存の権力機構から半ば独立していて、犯罪組織や邪教集団が跋扈してたりするのだけれど、本作はその悪徳都市に常駐する権力による治安維持機関が主人公、というのだからこれこそとびっきりに珍しい。まあ、普通ならこの手の都市の治安維持組織は、見事に腐敗しきって街で起こるあらゆる犯罪を賄賂の及ぶ範囲で徹底して見逃していたり、犯罪組織の下部組織に収まってしまっているものなんだけれど、この悪逆騎士団ときたら実情、街を牛耳る様々な組織と肩を並べる顔役みたいなのに収まっていて、警察機構でありながらさながらマフィアの一角なんですよねえ。治安守るどころか、率先してイキッてるやつらシメてまわるわ、金儲けのネタがあれば片っ端から首突っ込むわ、少なくとも善良な一般市民が困ったからと頼りにするには危なすぎて、とてもじゃないけれど近づきたくねえ。きっちり権力も傘にきてますしねえ。
でも、権力や暴力でもって弱者を虐げたり、自分たちの利益のために他者を陥れたり、という悪ではないんですよね。騎士団のメンバー、拷問騎士だの淫蕩騎士だの醜悪騎士だの、ろくでもない肩書背負ってますけれど、全員脛に傷持ってたり人間として欠落を抱えている者ではあっても悪人とは程遠い人たちですしねえ。
個性的な面々にも関わらず、案外と仲間内の関係良好ですし。
特に団長のアリシアは、邪悪と言われても仕方ないほどあれ性格悪いですし享楽主義者のけもあるのですが、コルやヒオといった年少組に向ける慈愛の視線を思うに、本質的に母性の人なんじゃないかとすら思えるんですよね。そもそも、この悪逆騎士団なんて趣味の悪い騎士団作ってやってることの実情を見ると、彼女の素性と絡めてみても、何もそこまでせんでももう表舞台から降りたのなら放っておけばよかろうに、こうやって悪の代紋背負って他のやつが出来ない領分をわざわざ担ってるんですから、世話好きと言われてもいいんじゃなかろうか。せっせとコルやヒオの情緒育成に心砕いているのを見るとねえ。やり方自体は全くもって傍若無人で大変迷惑な御仁なのですが。
現役世代からすると、目の上のたんこぶなのかもしれないけれど。コルの背景を見ても、それらしき影が伺えますし。
そのコルなんですが、思いの外サクッとあれ、やっちゃいましたよねえ。一期一会でしかない関係とするには非常に勿体無いと思わせるものがあったのですが、下手にもっと繋げてしまうとまだ白紙に近いコルの内面に対して、後々の衝撃が強すぎることになってしまいますか。読んでるこっちも立ち直れないダメージ喰らってたかもしれないですし。
にしても、淫蕩騎士さまは戦闘中になにしてるんですか、ってかナニにどうやって持ち込んでるんですか、あれw ガチエロだ、この女。

水瀬葉月作品感想