デート・ア・ライブ16 狂三リフレイン (ファンタジア文庫)

【デート・ア・ライブ 16.狂三リフレイン】 橘公司/つなこ 富士見ファンタジア文庫

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「―わたくしと士道さん、相手をデレさせた方の勝ち…というのはいかがでして?」
来禅高校に復学し、五河士道の前に再び現れた最悪の精霊、時崎狂三。狂三の霊力を封印したい士道。士道が封印してきた精霊の霊力を欲する狂三。二月一四日のバレンタインデーに向けて互いのすべてを懸けた二度目の戦争が始まる!
「今度は…俺がおまえを、救う番だ…ッ」
少女はなぜ最悪の精霊と呼ばれるようになったのか―。世界の運命をひとりで背負い、かつてデレさせられなかった精霊を今度こそ、デートして、デレさせろ!?

真・ヒロイン爆誕!! いやもうね、極初期に登場して以来、最初からその存在感は他の精霊たちとは一線を画するものがあったわけだけれど、これはもうヒロインですわー。ヒロイン以外のナニモノでもないですわー。
ついに明らかになった狂三の目的。彼女なりの強い意志、を通り越した凄まじい覚悟があることは理解してたんですよね。折紙の歴史改変時間旅行の一件でかなり手放しで折紙に手を貸していたことからも、彼女の目的がこのときの折紙と似たようなものであり、自分のケースのための実験の要素があったっぽいのはわかってたんですけれど、狂三の真実を知ってしまうとこの時折紙に力を貸したのって純粋な同情と共感でもあったんだろうなあ。
そして、彼女の真実を知ってしまうと狂三がどれほどの凄惨な覚悟を以ってこの五年間歩き続けたのかを思い知ってしまって、もう戦慄を抑えきれない。
救えなかった世界を救うために、世界の敵となりすべてを破壊し打ち壊す。愛する人たちを救うために、その愛する人たちを殺して殺して殺し尽くす。助けるために殺さなければならないという苦悶、救うために破壊しなければならないという苦痛。それにずっと耐えて耐えて、壊れたような笑いを貼り付け、殺戮の悪魔として、最悪の精霊として戦ってきた時崎狂三のその覚悟は、いつか自らが地獄へ堕ちることだけを縁にして這い進む、あまりにも悲愴で哀れで健気で美しい、狂気のような願いの産物なのだ。
かつての折紙が背負っていた運命も、あまりにも重くて救いがないと思っていたけれど、狂三のそれは折紙の運命をも上回る絶望であり、しかも彼女はそれを自分の選択として自ら選び取り、受け入れ、成し遂げようとしている。そこに、自らの救いがないと最初から知りながら、だ。
そんな彼女が初めて巡り合った恋。いつしか紡がれていた愛。でも、その相手をこそ彼女は殺さなくてはならない。最後の鍵として必要な精霊たちの莫大な霊力を、士道から奪うためには彼を殺さなくてはならない。
お互いにそれを承知しながら、デートで相手をデレさせた方が勝ち、というデート勝負を選んだ時の狂三の想いたるや一体如何許であったか。いや、最初の段階では彼女は自分の思いにはまだ無自覚であったんだろうけれど……。
その後の、デートの間に裏で進行していた、狂三によって時間の向こう側に消し飛ばされていた真実、彼女の屍山血河の激闘を知ってしまうと、このデートの最中における狂三の幸せそうな姿がもう、胸痛いどころじゃないんですよね。
これだけ、これだけ血まみれになって、何度も自らを殺しながら、何度も何度も目の前で大切な人の死を目の当たりにしながら、頑張って頑張って、ただ世界と、好きな人たちを救うために戦う少女に与えられる報いが、この一時の逢瀬だけ、というのはあまりにも、あまりにも救われないじゃないですか。
今まで何度も精霊たちとデートを繰り返してきた士道だけれど、今回は誰の介入も許さず、選択肢も妹たちから指示されたものではなく、全部自分で考えて五河士道そのままでぶつかっていってるんですよね。そして狂三の方も全力でデートを楽しもうとしていて、だからか今までで一番真っ当なデートで、お互い楽しそうで、幸せそうな噛み合ったデートでした。こんなラブラブでイチャイチャした普通のデートって初めてだったんじゃないだろうか。
お互いに、相手のために全力で、全身全霊で。

「今度は…俺がおまえを、救う番だ…ッ」

士道のこの決意に、もう涙が出そうなほどすがりたい。そうだ、救ってやってくれ、助けてやってくれ。この自ら孤独へと突き進む、自分だけは救われまいとする少女を、助けてやってくれ。
どうして、狂三の回が精霊たちの中でも最後の最後に回されたのか。彼女が物語の謎の核心に居るというだけではない、五河士道という主人公が狂三というヒロインを救うことが出来るだけの器を育てるまでに、ここまで掛かったということなのだろう。とてもじゃないけれど、最初の頃の狂三と出会った当初の士道では無理だった。手も足も出なかっただろう。折紙のケースを経て、ようやく資格を得て、そしてその激闘を経てやっとやっと、手を差し伸べられる高さまで登ってこれた、ということなのだろう。
まだ狂三が救われるための手段も何もかもが闇の中である上に、ついにファントムと呼ばれたゼロ番目の精霊の正体が明らかになる、という怒涛のクライマックス。
ファントムについては、おおよそ想定通りではあったんだけれど、まだ幾つか違和感はあるんですよね。狂三が体験した崇宮澪という少女の所業と、あの人の人となりは重ならないものが多すぎるし。もう幾つか、錯誤か狂三が抱えていた真実のようなものが潜んでいるんじゃなかろうか。

いずれにしても、物語はもうノンストップでクライマックス突入。ここが山場と言わずしてどこが山場だ、って盛り上がりだわなあ。

あと、七罪は相変わらず精霊の中での唯一のセーフティネットで、安定の癒やしでありました。だいたい、シッチャカメッチャカになっても七罪がなんとかしてくれる、というこの絶大な安心感!w

シリーズ感想