ホテル ギガントキャッスルへようこそ (ダッシュエックス文庫)

【ホテル ギガントキャッスルへようこそ】 SOW/桜木蓮 ダッシュエックス文庫

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幼き日に命を救ってくれた皇国の騎士に憧れた少女・コロナは自分も騎士になるべく修行に励み、ついに騎士見習いとなる。だが、それが認められた翌日に大軍縮令が施行。いともあっさり職を失うも、気がつけばかつて最強とされた巨人砦で働くことになった。しかし、そこは大商業都市のシンボルとなるホテル・ギガントキャッスルへと様変わりしていて―。そこには、オークだとかオーガだとかドラゴンだとか、ありとあらゆる種族のお客様が訪れ、膨大な数で、そして時に厄介なリクエストがあった。それを一切拒まず応じる「最強のホテルマン」レイアとの出会いがコロナを変えることになる!!すべてのお客様へ最高のおもてなしをするホテルの物語へようこそ!!
ホテルコンシェルジュものかー。ホテル鬼岩城へようこそ、ってなもんなんですね、これ。かつての機動要塞が平和な時代にホテルになって、というのは時代の変化を象徴していてわかりやすく、物語の舞台としても面白い。ヒロインのコロナが、騎士見習いになった途端に軍縮で首切られ、という身の上というのも相まって、大戦期から平和な時代への過渡期という空気をダイレクトに感じられるわけですしね。
自然と、飛び込んでくるトラブルも戦争時の遺産関係のものが増えてくる、はずなんだけれど……。むむむ、ちょっとコンシェルジュのレイアが超人無敵すぎて、全部レイアがやってくれました、となっているのが勿体無い。未熟で経験も足りていないコロナが、もともとなるつもりがなかったホテルマンに成り行きでなってしまった、という絶好の展開を得ていただけに、自分のホテルマンとしての適正、騎士魂との共通項を見出した上で、ホテルマンとして本気でやっていく新たな目的、新たな志を得ていく、という流れをもっとスポットを当ててやってあげればよかったのになあ、と思っていまう。これは、コロナが主人公ではない、という部分に阻害されてしまったんだろうなあ。コロナの良い部分は折々に触れて垣間見えていたのだけれど、持ち込まれるトラブルのハードルが高すぎて、コロナの頑張りはあくまでアクセントに過ぎず、解決はほぼレイア任せ、になってしまってる。これはこれで痛快であり面白くはあるのですが、あまりに一点突破すぎて「ホテルモノ」として折角多種多様に広げられる面白い舞台設定があんまり活かしきれていなかった感はある。
ホテルのスタッフも、コロナとレイアを除けば本当に限られた数人、しかも責任者クラスしか出てこなかったですからね。お仕事モノ、というのは一緒に困難を乗り越えていく仲間・同僚との人間関係の構築から、アンサンブルが始まるようなものですから。
その点を鑑みると、あくまで一巻は導入編であって、本格的にホテルものとして面白くなるには舞台設定の説明が終わって、レギュラーメンバーが揃ってくる続刊以降から、という事になってしまうんじゃないでしょうか。
それにしても、レイアが万能すぎるのでむしろそうなると彼が物語を動かす上で便利すぎて逆に邪魔になってしまいそうなキライもあるのですが。お仕事モノとオレツエーは案外相性悪いのかもなあ。その場その場の盛り上げには効果的であっても、長期的に見ると……という感じで。今回に限っても、起こるトラブルを解決「させない」ために、度々レイアを不在にしないといけなかったですしね。居たら問題がどうにかなってしまわないと存在意義が崩壊してしまうキャラになってますし。
キャラクターの魅せ方や、登場人物それぞれの持つ過去や現在の関係、立場、秘めた信念。各話各話の話の転がり方、語り口など個別に見るととても魅力的で面白い要素がタップリなだけに、難しいものだなあとしみじみ吐息を落とすのでした。

しかし、巨人砦って自力で動けるのなら迂回戦術取られた時、帝国軍の動きを早期に察知していたら自分で皇都の方に迎撃に迎えてたりも出来たかもしれないのね。ある範囲以上からは動けないという制約とかあるのかもしれないけど。それでも自分で動ける要塞とか反則だよなー。しかし浪漫でもある。

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