ゼロから始める魔法の書 (5) ―楽園の墓守― (電撃文庫)

【ゼロから始める魔法の書 5.―楽園の墓守―】 虎走かける/しずまよしのり 電撃文庫

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“ゼロの書”の拡散を目論む謎の組織“不完全なる数字”の調査のため、海運国家テルゼムを訪れたゼロたち。しかし、そこにはゼロの名を騙り、村々を襲う銀髪の魔女の噂が駆け巡っていた―。ネズミの獣堕ちである少女リーリと出会い、その身をかくまわれつつ偽ゼロの影を追うゼロたち。そんな彼らの前に、“ゼロの討伐”を命じられた教会の裁定官が現れる。“背徳”の罪状を持つ裁定官。彼女は、美しき女性を墓に生き埋めにすることが趣味の“墓堀り人”なる異名を持つ人物で…。くすぶり続ける魔女と教会の不穏な争いが静かに加速する、話題の魔法書ファンタジー第5弾が登場!
傭兵、テオのこと本当にトラウマになってるんだなあ。教会に捕縛されることになったゼロを置いて去ることのできなかった傭兵の叫び、もう二度と誰も置いていかない、という決意には彼の負った傷跡の深さを感じさせる。でも、だからこそまだまだ傭兵がゼロにデレた、という感じが出てこなくもあるんですよね。そこは喪った人への決意に根ざすものだけではなく、そろそろゼロ個人への情愛を感じてみたい頃でもある。ゼロの方が求愛を隠さないだけに尚更に。
傭兵、いつまでたってもグチグチしゃっきりしないですしねえ。まあそれでも、ゼロを見捨てないというスタンスを確立したのはまだマシと考えるべきなのか。
なんか自分でもはっきりしないモヤモヤとしたものを、明確にしようとせずに先送りにしっぱなしの傭兵と比べて、まだ神父の方が自分の中に生じた信仰と正義の齟齬に対して真面目なせいか真剣に悩んでいる分、印象が良かったりするんですよね。この人、信仰の人でありながら同時に理性の人であるだけに、教会の掲げる教義と現実との矛盾に、自分を誤魔化せずにいるのが不器用で仕方ないのだけれど、それこそが敬意を感じる部分でもあり、ゼロが一定以上の信頼を神父に寄せているのもよく分かるのです。
今回の話なんぞは、神父イジメか、というくらいに教会の闇と現状の体制の不具合、世間の教会への不信感を突きつける内容になっているだけに、神父が自分の信仰に基づこうとすればするほどゼロ寄りになっていくのが面白い。
ただ、教会側も一方的に組織破綻してたり腐敗していたりするわけではなく、ちゃんと社会秩序を維持するシステムとして機能しようとする意思があり、自浄作用もあるだけに、むしろ神父は教会から離れるのではなく教会の中の俗世の権力を現実に則して利用する向きを覚えだしているので、これもまた神父穢れだしていると言えるのかもしれない。まあ、ちゃんとルールに則っているので、地に足は着いているので、むしろ色んな意味で手強くなってってるのかもしれないが。

にしても、ここでさらに新メンバー追加になるのか。なんでついてくることになったのか、ちょっとよくわからない流れだったんだが。いや、能力的には不足がないどころかかなり勝手の良いもので助かりそうなんだけれど、家族を置いてついてくる理由付けがちょっと弱く感じたんだけれどなあ。

シリーズ感想