僕と彼女のゲーム戦争10 (電撃文庫)

【僕と彼女のゲーム戦争 10】 師走トオル/八宝備仁 電撃文庫

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周囲の同級生の間では進路という話題が出始め、どうせなら将来はゲーム関係の仕事に就けないかと、なんとなく考えていた岸嶺。そんなとき、権田原から人が足りないので練習試合に参加してくれないかと誘いを受ける。それと引き替えに、岸嶺は権田原に進路について相談を持ちかける。権田原はチームメンバーを招集して、悩める岸嶺にいくつかの進路を提示してくれるのだった。一方、現代遊戯部ではJGBCで上位に食い込むため、自分達の得意なゲームの大会に照準を絞っていた。そして迎えた大会の日、奮闘する岸嶺たちの前に強大なライバルたちが立ち塞がり―。
第一巻が11年6月。そしてこの最終巻が16年12月刊行ですので、五年半も続いてたんですなあ。それで10巻まで行ったのだから、順調な展開だったのではないでしょうか。でも、肝心の中の人間関係の進展の方は結局さっぱり進まなかったのですが。
主人公の岸嶺の物語としては、ゲームと出会い、ゲームに興味を持ち、将来ゲームに関わる仕事ができればいいな、と考えるようになった、というところに集約されてしまうんですよね。たまにプロのゲーマーに授業料払ってゲームを教えてもらったり、仲良くなったプロのゲーマーに将来の相談をしたり、というイベントがあったものの……実は一緒にゲームで遊んでいる以外で、天道・杉鹿との個人イベントも殆どなくって、権田原さんと何かしていることの方が多かったんじゃなかろうか。杉鹿とは一度デート行ったくらいで、天道部長の方とは本格的に何もなかったもんなあ。一緒に遊ぶことで、ヒロインたちは岸嶺のことを徐々に意識し始める様子は見受けられただけに、まあ勿体なかったと言えば勿体なかったのだけれど、作品のコンセプトからしてなかなかゲームそっちのけで個々の話を展開していく、というわけには行かなかったですからね、仕方ないのかなあ。
むしろ、宵闇の魔術師こと権田原さんの方が作中で紆余曲折の人生を送っていて、もうひとりの主人公みたいになってたんですよね。もともとサラリーマンをやりながら、ついに決意し脱サラしてプロゲーマーになったものの、なかなか潰しの利かない業界であるだけに苦労しまくって、と岸嶺よりもよほど波乱万丈な日々を送っていたわけで。ゲームの大会にしてもほぼレギュラー出演で、プロゲーマーとしてのスキル、凄みを大いに見せてくれましたし。存在感としても一級でありました。彼を通じて語られるプロゲーマー界隈の話も興味深かったですし。
さて、肝心のゲームの方ですが、今回の題材となったゲームはどれもプレイしたことがないどころか、プレイ画面も見たことがないものばかりで、やっぱり実際のゲーム画面とかがないとさっぱり知らないゲームに関してはイメージ湧きにくいのがなかなか辛いですね。それでも、ゲーム内での緊迫感ある盛り上がりの描写など知らなくても手に汗握る面白さを感じさせてくれるあたりはさすが、というところだったのですが、それでも知ってると知らないとでは感じる面白さが違ったんだろうな、と残念に思うところでもあり、せめてゲーム画面の写真や使用しているキャラをイラストでなくても写真かなにかで見せてくれたら、もっと没入できたんじゃないか、なんて思ったりもします。
エピローグだと、数年後の話になってて若干杉鹿がリードみたいな形になってましたけれど、いやもうそこは岸嶺の甲斐性なんか期待していないで彼女たちの方から積極的に押さないと埒が明かないでしょうに。というか、杉鹿が大学時代ずっと大人しくしていた、というのが少々信じがたいです。彼女の性格からして、大学まで行けばもうここぞというときは自分から押し切るふうに思っていたので。まあ、今後時間の問題のようですけれど。

ともかく、実際のゲームを題材にしてプレイして遊んでいる様子を話にしていく、というコンセプトはゲーム会社に許可をとったりと色々と面倒もあったでしょうけれど、二桁巻数まで行くだけ続いたのですから成功の部類だったんでしょうね。新旧様々なゲームがとりあげられて、昔やったゲームの話なんかはやっぱり懐かしいし読んでいて面白かったです。挑戦的な作品でしたが、楽しかった。最後までお疲れ様でした。

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