永き聖戦の後に2 スケイプ・ゴート (角川スニーカー文庫)

【永き聖戦の後に 2.スケイプ・ゴート】 榊一郎/ 猫缶まっしぐら(ニトロプラス)  角川スニーカー文庫

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魔族との大戦争が終わって七年。魔物は人類に飼われ、魔力源として利用されていた―。魔王を討伐した英雄の生き残りであるジンゴと、都市の議会からも魔族からも追われる少女・メイベル。魔王の亡霊に頼まれて、メイベルを匿うジンゴの前に現れたのは、歌姫にして訓練された強力な勇者、“ミスリル・チップス”の少女3人だった!囚われの身となったメイベルを待ち受けるものとは―!?本格マジックパンク・ファンタジー第2弾!
アイドル三人組がなあ、登場からいきなり特殊部隊というか、新型勇者として出てきてしまったので、せっかくのアイドル要素が殆ど感じられなくてそれがちと残念。もっと、アイドルしている活動描写があったら、アイドルの時との違いの意外性とギャップがあったんだろうけれど、読者としては殺伐としてる「ミスリル・チップス」たちしか知らないわけで、魅力としてはどうしても限定的になってしまったかも。
そもそも、メインヒロインのメイベルがどうしても動性の低い受け身の立ち位置であったがゆえに、ヒロインの側から燃料を焚べることができないので物語としての馬力に欠けるきらいがあったんですよね。メイベル自身、自分が何者であるか、これからどうするのか、何に対してどう思うのか、という点が彼女自身何も知らず知らされておらず把握しておらず、振り回されるしかない状態であったので、指針というものをどうしても持ち難い状況だったんですよね。こればっかりは彼女のせいじゃないだけに、実際どうしようもなく……。
なので、ジンゴ側の動機が燃料にならざるをえないのだけれど、彼自身抜け殻状態になっていたところからどうにかこうにか「約束を守る」という理由と呪いを解くため、という消極的な動機からはじまっているので、動き出してからもなかなか「ビシッ」とした芯が形成されるまで時間がかかってたんですよね。
それがどうしても、物語自体の熱量が終盤まで溜まらなかった感があるんですよね。ある意味、この二巻までがプロローグ的なもの、目的を定めた旅が始まるまでの準備が整うまで、という体でしたので、なかなかねえ。
ミスリル・チップスも、今回は顔見世的な出方でしたし、彼女たちがはじまるのもこれからなわけですから、敵キャラとしてもヒロインとしても、魅力的に掘り下げられていくのはこれからなんですよねえ。
メリンダ議員に関しても、黒幕という立場上あれこれ策謀をめぐらしているのだけれど、その根源に在るのは徹底した人類の利益への正しさなのである。それは倫理的には間違っていても、実益として、そしてそれによって助かる人が、弱者の救済が絶対の中に含まれているので、どうしても反論しにくいところがあるのがなんともはや。そもそも、メリンダ自身が人類のために自爆することを最初から定められていたタイプの自爆型勇者だったために、「必要な犠牲」という定義はアイデンティティに関わってくるだけに、妥協の余地が一切ないのである。ただの狂信者や正義狂いとも違うだけに余計にたちが悪い。ジンゴが仲間と自分の復讐に走ることすら出来ずに腐っていくしかなかったのも、無理からぬところがあるんですよね。
彼女を納得させる、得心させる、解放させることのできる言葉が果たしてあったのだろうか、と俯かざるを得ないのである。難しいね。

1巻感想