救世の背信者2 (講談社ラノベ文庫)

【救世の背信者 2】 望月唯一/蒼咲ゆきな 講談社ラノベ文庫

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人類の天敵である星喰いが湯水のごとく湧き出る災害―大湧出。それが芽深市を襲ってから、既に二ヵ月ばかりが経った。傷は深かったものの、復興は順調に進んでおり、芽深市は以前にもまして多くの錬金術師が集まる錬金術の最前線になっていた。そして、夏へと移り変わりつつある季節の中。かつて人類最高峰の錬金術師―達人として活躍していた三森慧は、今は相変わらず、教師として弟子の悠里や同僚のましろ達と騒がしい日常を送っていた。だがある日、慧とましろは何者かによる襲撃を受ける。彼らの前で形を成していく黒い泥。それがとった姿は、ましろと寸分違わぬ顔立ちで―。凸凹師弟が綴る学園異能バトルアクション第二弾!

こうしてみると、弟子であり後継者となった悠里と、戦友の娘であり志を同じくするましろの二人、ヒロインとして結構立ち位置違ったんですねえ。
悠里がかつて自分が持っていたものを託す相手だとすると、ましろは慧が負った負債を一人で肩代わりしてたんですよね。これは、ましろが背負ってしまっていた負債を清算する話だったとも言える。
世界を救うために戦友を救えず汚名を一人で引っ被った慧だけれど、それによって一番傷ついたのは父親を喪い大切な人を失う羽目になったましろだったのである。せめても慧を喪わないために、ましろはただの少女でしかなかった自分を消し去るしかなかった。父親の代わりに慧の戦友になる他なかった。それは彼女が望んで選んだ道だったけれど、選択肢がそれしか残されていない中で無自覚に選ばざるを得なかった唯一の道だったのである。そして、慧はそんなましろの選択に込められていた意味を疑いすらせず、戦友ましろを受け入れてしまった。
人類の裏切り者という汚名を背負って世界を救った救世主たる自分、に慧が酔っていた、とは全く思わないけれど、そこにヒーローとしての生き様の自負がなかったとは言わないだろう。でも、その正しさがましろをずっと押さえつけ圧迫していた、とは露ほども考えていなかったんだな、この青年は。
だからこそ、今回の事件は彼自身の自覚なき本当の罪を彼に突きつけることになる。
その意味では、前回においてすでに「後継者」を見つけることができていたのは幸いだったんでしょうね。あとを継いでくれる人が居たからこそ、世界を救うヒーローが居てくれたからこそ、慧はヒーローとしての残骸としての自分を真実、置くことができたのだから。世界のためではなく、たったひとりの大切な人を守るために生きる選択を、選ぶことができたのだから。
これ、明言はしていないけれどましろエンドだよなあ。何気に二人にあげたプレゼントの中身の違いが、如実に結果を示してしまっていたんじゃなかろうか。購入した時は、誰もそんなこと考えてなかったんだろうけれど。

相変わらず、凄惨な過去を持っているとは思えない脳天気なセクハラトークを息をするようにポンポンと吐き出す主人公と、打てば響くように時にツッコみ、時に軽快な返しで応酬し、と色んな意味で相方の貫禄を見せてくれたましろとの掛け合いは、読み進める推進力となってくれて楽しかった。悠里の初々しかったりバッサリ切り捨てる切り返しも好きだったんだけれど、やっぱり息ピッタリなましろとの方が好きだったんで、ましろ寄りのエンドは個人的には嬉しかったかも。出来ればもっと続いてほしかったけれど、あとがきからするとこれで締めなんだろうなあ。
もう一回、作者の作品では掛け合いが映えるであろう真っ向勝負のラブコメが読んでみたいところですけれど。

望月唯一作品感想