パラミリタリ・カンパニー 萌える侵略者 1 (講談社ラノベ文庫)


【パラミリタリ・カンパニー 萌える侵略者 1】 榊一郎/足立慎吾 講談社ラノベ文庫

Amazon
Kindle B☆W

『地球は、狙われている』
遙かなる太古より地球は数々の生命体に狙われていた。その地球を守るための組織“サキモリ”は、今、司令官不在という未曾有の危機に陥っていた…。主人公・阿倍野晴克は何のへんてつもない高校生。いや強いて挙げれば貧乏なことだろうか。
「普通」というものに憧れている極貧高校生だった。しかし突如現れた自称・姉によって晴克は拉致されてしまう。しかもその上、謎の組織までが彼を拉致して驚天動地の拉致合戦。どうやら地球を守る運命は、この極貧高校生に託されたようなのだ!宇宙怪獣、ナントカ星人にetc.…。とんでもない侵略者たちから地球を守れ!
あれ? 萌える侵略者ってタイトルがついているから【アウトブレイク・カンパニー】と同じ世界観の作品なんだと思ってたら全然関係ないの!? タイトルもカンパニー繋がりで似せてあるし、凄い紛らわしいんですけれど。どこで関連してるんだろう、と気にしながら読んでいたのだけれど、全然それっぽい話や設定が出てこないので「???」と頭の片隅でモヤモヤさせながら最後まで読んでしまいました。こういうのは止めてほしいなあ。
しかし、単体の作品として見るとしても、本作は面白かった。こういうポンコツなノリの作品は榊さんの著作では案外珍しい。【まかでみ】なんかはそれ系統なんだけれど、あちらは主人公が真面目で性格に遊びがなく面白味がないタイプだったんで、作品のテンションとキャラのノリが自分には微妙に合わなかったんですよね。
その点、こっちの晴克くんは貧乏・貧困をややブレイク・スルーしてちょっとヤバい領域の沼にハマりかけていたこともあってか、普通に対する執着がそんじょそこらの普通愛好家とは比べ物にならない偏執的なもので、その拘り方がなかなかに素っ頓狂なところもあってか、実に作品のノリに波長が合ってる主人公なんですよね。
概ね、大人だけれど無気力系と、真面目で堅い少年という二系統に別れる榊作品の主人公のキャラクターに当てはまらない新鮮味のある主人公でした。
いやもう色んな特撮系とかのパロディが仕込んであるモザイク感も楽しいのですが、何より一番輝いているのが「悪の組織」の面々のポンコツ具合なんですよね。本人たちは至極真面目に侵略活動に勤しんでいるわけですが、どうしても所帯じみているのと庶民感覚あふれる言動と見事に毎回やらかしてしまうあれやこれやで、むしろ頑張れ悪の組織! な雰囲気になってしまう。切実に貧乏そうなのも含めて。サキモリ側はなんだかんだと公務員(?)なのか微妙にわかんない組織なのですが、資金に関しては潤沢なようでしてお給料から福利厚生に至るまで充実しているようですし、ナニかと爪に火を灯すようなやりくりをしているであろう悪の組織と比べると……うん、比べちゃダメですね。
一方で防衛側であるサキモリの方も、多々問題を抱えており、それは組織の問題のみならずヒロインの天王寺ミオのような個人で抱えているものもあり、腰掛けというか血筋によるものから司令官に押し込められてしまった晴克はそういうのも背負わなくちゃいけなくなってしまったんですよね。
とにもかくにも、なにかやらせるなら説明はちゃんとしましょう。リスクに関しても状況説明についてもまったくせずに、切迫しているからと行ってやってちょーよ、と迫るのはなかなかに卑怯である。いきなり包帯ぐるぐる巻きのストレッチャーで運ばれてくる綾波ネタをやってる時点で意図的なんだろうけれど。晴克にまったくネタが通じてなかったのって、あれジェネレーションギャップなんだろうか。それとも家庭環境から来る知識の欠落なんだろうか。
しかし、細かいことは抜きにして、普通を命がけで志しながらも、普通を逸脱しているであろう地球防衛隊の司令官なんて仕事を引き受けるに至る決断を、いや一人の女の子の一生懸命頑張る姿を、守り応援してやるために、色んな責任を背負い込む勇気と覚悟を決める心意気は、ちゃんと「普通」に格好良かったですよ、主人公。幸せ家族計画的にも十分当たりの人材なんじゃないかなあ、これ。決してミオがチョロいだけではないと思われ。

榊一郎作品感想